新日本有限責任監査法人
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情報センサー2014年5月号 EY Institute

ソーシャルメディアの今後
-新興ソーシャルメディアの台頭とメッセージングアプリの急拡大-

EY総合研究所(株) 上席主任研究員 廣瀨明倫
総務省情報通信政策局、在シドニー日本国総領事館、情報通信研究機構等での勤務を経て、2013年にEY総合研究所入社。総務省においては情報通信審議会、研究会等にて企画戦略立案を実施した経験を有する。国内外の情報通信の業界動向・政策動向・技術動向調査、情報通信に関連する事業戦略立案・法令対応等を専門とする。

Ⅰ はじめに

ソーシャルメディアは2003〜04年頃から登場し始め、現在では多くの方が利用するメディアとして定着しました。ソーシャルメディアはその特性上、急速にユーザーが増えていく傾向にあり、現在でも次々に新しいソーシャルメディアが生まれています。また、ソーシャルメディアをどのように活用するか、あるいは、どのようにリスク対策を行うかは、企業活動にとって重要な意味を持つようになっています。

Ⅱ ソーシャルメディアの特性

ソーシャルメディアには、経済学で言う「ネットワーク外部性」が働きます。簡単な例で言えば、加入者数の多いソーシャルメディアと少ないソーシャルメディアがある場合、新たに加入しようとする人は、より多くの人とコミュニケートするために、加入者が多い方を選んで参加します。そのため、大きなソーシャルメディアはますます大きくなり、急速にユーザーを増やしていく傾向があります(<図1>参照)。
一度形成されたソーシャルメディア上での「繫(つな)がり」は、それ自体がプラットホームとして機能し始め、他のサービスへの乗り換えを困難にします。例えば何らかの理由により、ユーザーが他のソーシャルメディアに移行したいと考えた場合でも、全く同じ繫がりは他のソーシャルメディア上には存在しません。また、既存のソーシャルメディアが新興のソーシャルメディアを利用するプラットホームとして利用される場合(IV. 1で後述)もあります。
このようにソーシャルメディアは、急速にユーザー数を伸ばす傾向にあること、ユーザーを囲い込み、容易に離脱されないプラットホームとして機能することの二つの特性から、さまざまな情報通信サービスの中でも特に注目を集めています。
<図2>では各国の携帯電話事業者とFacebookの加入者数を比較しています。広い意味では両者とも同じコミュニケーションの手段を提供していますが、国境を越えて簡単にサービスを展開できるFacebookの方が、最大の携帯電話事業者である中国移動より、はるかに多い加入者数を得ていることが分かります。
また、急速にユーザー基盤を確立することができることから、戦略的にソーシャルメディアを事業領域として選ぶベンチャー企業も数多く存在します。

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図1 ソーシャルメディアのネットワーク外部性


Ⅲ ソーシャルメディアの企業利用

企業におけるソーシャルメディアの活用方法は、ブランディング・広報活動など企業の内外でのコミュニケーション等に利用する場合と、企業内でのコミュニケーション促進に利用する場合があります。

1. 企業内外でのコミュニケーション等での利用

ソーシャルメディアは企業の広報活動の他、製品・サービス改善での利用や、人材採用など多面的に利用されています。また、最近では広告宣伝の効果をデータで測定するために利用する例もあります。
なお、ソーシャルメディア上で流れる自社に関する情報については、特に注意が必要です。多くの企業は従業員によるソーシャルメディアの活用に関し、一定のガイドラインを設けて対応をしています。しかし近年は、飲食店や小売店のアルバイト店員が商品や食品を使って悪ふざけをする様子をソーシャルメディア上に流して、批判を浴びる例も多発しており、対応の徹底が必要です。
また、ソーシャルメディア上に企業に対する根拠の無い批判が流れたり、内部情報が漏えいする場合もあります。いずれにしても、ソーシャルメディアに対しては一日の対応の遅れが回復不能なダメージを企業に与える場合もあり、早期の対応が必要です。

2. 内部利用

企業内SNSに代表されますが、特に部署をまたいだコミュニケーション促進のためなどに利用されます。規模の大きな企業では、過去の業務用資料・情報や、特定の業務案件に詳しい人材を探すために、企業内SNSを利用する例もよく見られます。
企業内SNSは便利であり、クリエーティブなコミュニケーションを促進することがある反面、導入の仕方を間違えると誰も情報を書き込まないメディアとなってしまう可能性などもあり、導入・運用方法には十分な配慮が必要です。

Ⅳ ソーシャルメディアの今後

1. メガソーシャルメディアと新興ソーシャルメディア

FacebookやTwitterといった全世界にユーザー基盤を持つメガソーシャルメディアが一定程度成熟期に達してきている一方で、個別の興味対象を共有する新興のソーシャルメディアが数多く誕生しています。これらの新興ソーシャルメディアは既存のメガソーシャルメディアのアカウントを利用して簡易にサービス利用を開始できる場合も多く、利用開始のハードルも下がっています。
新興のソーシャルメディアとしては、画像やモノを中心とするサービス等が米国だけでなく日本でも生まれています(<表1>参照)。これらのソーシャルメディアはメガソーシャルメディアと異なり、特定の領域に特化することで若者や女性といった特定の層に強い支持を得ています。また、ほとんど全てのサービスで、スマートフォンでの利用を想定した画面・サイト構成を取っています。
これらの新興ソーシャルメディアは、メガソーシャルメディアに続く、今後の成長が期待されています。

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2. メッセージングアプリの急拡大

WhatsAppやLINE等のいわゆるメッセージングアプリは、ソーシャルメディアの中でも特にコミュニケーションの機能が強く、その性質から通常のソーシャルメディアよりも更に急激にユーザー基盤が拡大していく傾向にあります。また、通信事業者やOSなどのプラットホームに依存せず、基本的にどのような端末からでも利用可能であることや、海外では通信事業者が提供する有料のショートメッセージサービス(SMS)よりも無料のメッセージングアプリが好まれるなどの背景もあり、近年、全世界的に利用されるようになってきています(<表2>参照)。
14年2月に、FacebookはWhatsAppを約1.6兆円で買収することを発表しました。WhatsAppは欧米を中心に大きなユーザー基盤を有しています。特にスマートフォンでよく利用されるメッセージングアプリについては、利用頻度が高いことや常に携帯していることが多いことなどから、ユーザーの生活や行動に密着した他のサービスを提供するプラットホームとしての役割も期待されています。また、公開が原則のメガソーシャルメディアとは異なり、メッセージングアプリでは自分と親しい人とのみコミュニケーションが可能であるため、公開性に抵抗感のあるユーザー(特に若年層)にも利用されています。このような点から、メッセージングアプリが持つ可能性は高く評価されています。
メッセージングアプリ企業の買収報道は前記以外にもあり、この分野が非常に注目されていることが分かります。また、それら企業の提供する新しいサービスのうち、マネタイズ(収益機会の獲得)に繫がるものや、外部企業による顧客へのアクセス機会を提供するものは利用する企業側にとっても重要であり、今後も、その動向に注目する必要があります。

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Ⅴ おわりに

ソーシャルメディアでは、現在でも継続的に多数のサービス・アプリケーションが生まれています。その中には、日本で生まれて拡大し、世界のコミュニケーションのプラットホームになる企業もあるはずです。
情報通信の世界で、日本企業はプラットホームを獲得できずに国際競争に敗れていく例が多く見られましたが、ソーシャルメディアの世界では今後の日本企業の活躍に期待が持てそうです。