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設備投資の経済性計算(4)-内部利益率法

2012.07.30

正味現在価値(NPV法)は、海外では設備投資の経済性計算によく使われている方法であることが文献などで紹介されています。しかし、この方法は、資本コストがわかっていることが条件となっていますので、資本コストの計算が困難である場合や非上場企業のように不可能な場合には使用できません。こうした場合に、貨幣の時間価値を考えながらどのくらいの利益率が得られるのかを計算するのが、内部利益率法です。前回までで説明してきた正味現在価値を計算するための要素(設備の購入価額、設備の経済的命数、毎年の営業活動による正味キャッシュ・フロー、法人税の効果、設備売却)を使用して、内部利益率を計算してみましょう。

内部利益率法ではNPV=0となる割引率を計算します。正味現在価値法では、年々のキャッシュ・フローを資本コストで割り引いて合計し、これを投資額と比較して前者が大きければ投資額+資本コストを回収できるキャッシュ・インフローがあるために、望ましい投資案であることを示していました。これに対して内部利益率法は、NPV=0となる、つまり、資本コストを含めた総キャッシュ・アウトフローが総キャッシュ・インフローと等しくなるときには、どれだけの割引率になっているか、という計算を行うのです。仮に資本コストがわかっていれば、ここで計算される内部利益率と比較して、内部利益率が資本コストより大きければ、それは望ましい投資案であるということになります。もし、資本コストがわかっていなくても、目標となる利益率があれば、それを超えるかどうかを知ることができるわけです。

それでは、正味利益率法で使用したデータを使って内部利益率を計算していきましょう。設備の購入価額:10,000万円。経済的命数(ここでは法定耐用年数を使用):5年。減価償却:残存価額を取得原価の10%とした定額法。毎年の売上高-現金支出原価:2,300万円。法人税率40%。5年後の売却価値:500万円。

内部利益率法でも、作成するワークシートは正味現在価値法の場合とほぼ同じです。

(単位:万円)

  現在 1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
設備購入 △10,000          
営業活動による正味CF   1,380 1,380 1,380 1,380 1,380
減価償却費による節税効果   720 720 720 720 720
小計:年々の正味CF   2,100 2,100 2,100 2,100 2,100
売却によるCF           500
売却損による節税効果           200
合  計 △10,000 2,100 2,100 2,100 2,100 2,800

異なるのはここからです。単純に毎年の正味キャッシュ・フローを合計すると、11,200万円になります。今、このキャッシュ・インフローのパターンを、どのような割引率で割引計算して現在価値の合計を出せば、キャッシュ・アウトフローである10,000万円と等しくなるでしょうか。その割引率が、内部利益率と呼ばれるものになります。
内部利益率を計算していくためには、若干手間がかかります。管理会計の問題集などを見ますと、毎年の正味キャッシュ・インフローの値が同じで、そのため年金現価係数を使用して解くようなものが出ておりますが、現実には毎年の正味キャッシュ・インフローが同じになるわけはないので、非現実的です。幸い、エクセルなどの表計算ソフトを使用すれば、これらは簡単に求めることができます。
まず、割引率を5%として計算してみます。

CFの流列 -10,000 2,100 2,100 2,100 2,100 2,800  
割引率   1.050000 1.102500 1.157625 1.215506 1.276282  
現在価値 -10,000 2,000 1,905 1,814 1,728 2,194 -360

この状態だと、正味現在価値は-360万円となっていますので、割引率を少し小さくして4%として計算してみましょう。

CFの流列 -10,000 2,100 2,100 2,100 2,100 2,800  
割引率   1.040000 1.081600 1.124864 1.169859 1.216653  
現在価値 -10,000 2,019 1,942 1,867 1,795 2,301  -76

これでもまだ正味現在価値は-76万円です。そこで、割引率を3.7%としてみます。

CFの流列 -10,000 2,100 2,100 2,100 2,100 2,800  
割引率   1.037000 1.075369 1.115158 1.156418 1.199206  
現在価値 -10,000 2,025 1,953 1,883 1,816 2,335    12

3.7%だと正味現在価値は+12万円になるので、少し割引率を大きくして・・・ということを何回か繰り返していくと、割引率を3.74%としたときに、正味現在価値がほぼ0%となることがわかります。

さて、このようにして内部利益率が3.74%であることがわかりました。基本的には、内部利益率は資本コストと比較されて、資本コストよりも内部利益率が高ければ、投資に適する案件であることになります。他方、資本コストがわからない場合には、投資案件が複数ある場合には内部利益率が高い投資案件を選択すべきです。単独の案件については、資本コストが認識できていない場合はどのように使用すべきなのでしょうか。基本的には、目標とする内部利益率を持っている必要があります。しかし、内部利益率は時間価値を考慮した本当の資本利益率であるとも言われておりますので、目標とする総資本利益率との比較で使用することを考えても良いかもしれません。

なお、考慮される期間の間に、複数回の投資が行われるようなケースでは、内部利益率も複数存在することになるため、そのようなケースでは正味現在価値法を使用することが望ましいとされています。