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「社会的課題を整理しないまま、CSRに取り組む例が増えている」と新日本監査法人の大久保和孝CSR推進部長。 本当の意味でのCSRとは何なのか。 日ごろから「精神的な豊かさを実現したい」と語る三菱地所の福澤武相談役との対談に多くの示唆が隠されている。
現代の経済社会は、戦後60年を経て大きな転換期に差しかかっていると思われます。福澤相談役は、現在の状況をどのように見ていらっしゃいますか。
戦後の日本が物質的な豊かさのみを求めすぎてきた、その歪みが出ているのではないでしょうか。戦中から戦後、朝鮮戦争の頃までの日本は本当に貧しく、必然的に物質的な豊かさを追い求めたんですね。欧米にあこがれ、追いつき追い越せと必死になって働いてきた。しかし、精神的な豊かさをどこかに置き去りにしてしまったように思います。 私が携わっている街づくりにしても、ハード面だけの仕事ではありません。利用する一人ひとりが、生き生きと自分の持っている能力をいかんなく発揮でき、生きがいを感じ、充実感を得られるような街づくりを常にめざしています。ある勉強会で、開発という言葉は仏教の「衆生の善根を開発(かいほつ)する」が語源であると知りました。生きとし生けるものが本来備え持っている特性を開いて発揮させるのが開発だと。そのように、人々が生活することができれば、世の中はきっとよくなると思っています。
企業も物質的な豊かさを求めるあまり、利潤追求だけに走ってしまいがちです。現在のCSR推進そのものでさえ物質的な豊かさを追い求めすぎているのではないかと感じます。これからの社会、そしてCSRも精神的豊かさといった観点で考えていかなければなりません。
開発、ということで言えば、戦後の日本は野山を切り開いて新しい街をつくってきました。しかし、少子化傾向にある現在においては、都市再生が重要になるでしょう。そこで大切なのが、それぞれの街で育まれてきた文化や歴史を大事にして、後世に残しながら、時代にマッチしたものに組み替えていくことです。生きとし生けるものの中で、文化を創造し、歴史を築き、伝承するのは人間だけなのですから。
となりますと、一企業だけでは解決できませんから、社会の様々なステークホルダーが協働で一つの目的を目指していくことも重要ではないかと感じます。
その通りです。とても一企業だけでできることではありません。行政の力も必要ですね。都市再生では、行政がいい意味での規制をかけなければ、いい街なんてできません。企業、地域、行政が同じビジョンを共有し、皆で考え、お互いのキャッチボールを繰り返すことが重要です。
「文化的な価値を維持していくことが必要です」
それこそがCSRとしての取組みです。今の日本社会で最も大切なことは、文化的な価値を維持していくことです。それを実現するためには社会全体の枠組みで考えるべき、ということですね。精神的な豊かさを担保するものが文化への造詣であり、深い教養とも言えます。
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現代の経済社会は、戦後60年を経て大きな転換期に差しかかっていると思われます。福澤相談役は、現在の状況をどのように見ていらっしゃいますか。