1.リースに関する公開草案の公表
2010年8月17日、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)は、公開草案「リース」を公表しました(コメントの提出期限は10年12月15日)。
この公開草案は現行のリース会計(IAS17)を抜本的に変更するもので、その主なポイントは以下のとおりです。
(1)借手のリース
- ①リース分類の廃止
現行IAS17のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの分類は廃止されます。
- ②資産・負債の当初認識
リース契約時にリース資産の使用権に係る資産とリース料の支払義務に係る負債を認識します。また、当初認識時の資産・負債は、将来の支払リース料を原則として借手の追加借入利率で割り引いた現在価値で測定します。
- ③資産・負債の当初認識後の測定
当初認識後は、資産・負債の双方について償却原価で測定します。すなわち、資産については、リース期間またはリース資産の耐用年数のいずれか短い期間にわたって償却します。なお、資産については企業の選択により再評価モデルを選択することができます。一方、負債については、期間の経過に応じて金利の積み上げを行う一方、リース料の支払額を控除します。
- ④短期リースに係る簡便法
延長オプション等を考慮した最長リース期間が1年以内の短期リースについては、割引前の金額で資産・負債を測定する簡便法を認めることで暫定合意されています。
(2)貸手のリース
貸手のリースについては、次の二つのアプローチの混合アプローチが提案されています。
- ①リース資産に関連する重要なリスクまたは便益が貸手に帰属したままであるようなリース契約
リース資産を財政状態計算書に計上したままで、リース料の請求権に関する資産とその同額のリースの履行義務に関する負債を認識します(履行義務アプローチ)。このとき、リース料の請求権に関する資産は、将来のリース料収入を貸手の計算利率により割り引いた現在価値にリースの初期直接原価(交渉や契約のための費用)を加えた額として測定します。
また、その後のリース期間においては、貸手は借手の使用のパターンに応じた履行義務の充足に係る収益とリース料の請求権の残高に対する利息収益を認識します。
- ②上記①以外のリース契約
リース資産の帳簿価額のうち借手に移転していると考えられる使用権に相当する額を資産から減額し、リース料の請求権に係る資産を新たに認識します(認識の中止アプローチ)。このとき、リース料の請求権に関する資産は、将来のリース料収入を貸手の計算利率により割り引いた現在価値にリースの初期直接原価(交渉や契約のための費用)を加えた額として測定します。
また、貸手は、認識を中止したリース資産の金額と新たに認識したリース料の請求権に関する資産の差額をリース契約時の損益として認識します。その後のリース期間においては、リース料の請求権の残高に対する利息収益を認識します。
なお、10年7月2日付のIASBの作業計画によれば、11年4~6月にリースに関する最終基準書が公表される予定です。
2.企業会計審議会総会における会長発言骨子の公表
10年8月3日に企業会計審議会総会が開催されましたが、総会における会長発言(骨子:未定稿)が金融庁のウェブサイトに掲載されています。
議事録とは別にこのような形で会長発言の骨子が公表されることは異例のことですが、企業会計基準委員会が包括利益の表示などを含めてわが国における連結アドプションを推進していく上での拠り所としての性格をもつものとの指摘もあります。ここでは、わが国企業会計の今後の方向性を示すいくつかの事項を抜粋しておきますが、関心のある向きは上記ウェブサイトを参照してください。
- ○連結の会計基準は、EUの同等性評価を踏まえ、東京合意に沿い、コンバージェンスを着実に実施。
- ○連結と単体の関係については、中間報告のとおり、連結先行のアプローチ(ダイナミック・アプローチ)。
この連と単の関係についてのアプローチは、今後その是非を判断予定であるIFRSの強制適用が仮に行われた場合についても、基本的にあてはまるもの。
- ○金商法および会社法上、単体へのIFRS適用については、経済界からの要望があり、今後、特に会社法における制度整備等の検討が必要。企業会計審議会としても今後、IFRSの連結への強制適用の是非を判断する際に、次のステップの選択肢として単体への任意適用を認める、という方向性を示すことができれば、と考えている。
3.公認会計士試験においても重要度が高まるIFRS
10年6月16日、公認会計士・監査審査会より平成23年公認会計士試験の出題範囲の趣旨が公表されております。(PDF)
その中で、財務会計論については、従来の「会計基準の国際的コンバージェンス」という項目に加えて、冒頭の枠書きの中に「......現行の会計諸規則及び諸基準に関する知識のみでなく、それらの背景となる会計理論及び国際会計基準等における代替的な考え方も出題の範囲とする。」とはじめて明記されました。
米国の公認会計士試験も、11年からIFRSや国際監査基準(ISA)の問題が出題されることとなり、すでにサンプル問題が公表されています。
因みに、同じく11年から、米国の公認会計士試験は、日本国内(東京、横浜、大阪のプロメトリック・テストセンター)でも受験可能となるようです。
このように日米の公認会計士試験において今後IFRSの重要度が高まることが予想されます。
IFRS導入の世界での潮流と日本の対応 ―なぜIFRSが選ばれるのか―