サービス
保険 税務

グローバル保険業界における税務に係る最新動向

2017.03.10

グローバル保険業界における税務に係る最新動向本稿は変化の著しいグローバル保険業界における税務に係る最新動向の中から、特に興味深いテーマに焦点を絞り、保険業界のエグゼクティブの方々定期的にご紹介することを目的とした刊行物です。本稿第3号では、以下の4つのテーマを取り上げています。

1. BEPS行動4は、キャプティブ保険会社を課税対象に

経済協力開発機構(以下、OECD)による税源浸食と利益移転(BEPS: Base Erosion and Profit Shifting)の行動4では、今後、多国籍企業の利子の損金算入及びその他の金融取引の支払いによる税務浸食に厳格に対応する方針が明らかになっています。その中でも特に注目されるのが、非保険グループ内でのキャプティブ保険に対する取扱いです。OECDは今後、BEPS行動4におけるキャプティブ保険会社に対して、1)非保険グループ内でのキャプティブ保険会社に対して支払う保険料、2)実際には保険契約となる取引の中で、リスクを移転・分配する度合い、3)支払の価格設定と、その価格設定がグループのシナジーに考慮される程度、4)キャプティブ保険会社が規制対象となる範囲及び規制の性質、の点に注目していくとみられます。しかし、この問題を扱うワーキンググループは政府の税務当局の代表から構成されていますが、キャプティブ保険会社の業務と規制がOECD側に十分に理解されていないことは明らかです。当該プロジェクトは、非保険グループにおけるキャプティブ保険会社の活用について重大な影響を及ぼす可能性もあることから、保険業界は、政策立案者に積極的に協力し、現在の業界の慣行と規制に合ったルールを開発するよう働きかけていくことが大切だと考えられます。

2. オフショア再保険業界の最新動向

カナダでは、カナダ金融機関監督庁(以下、OSFI)やカナダ歳入庁(以下、CRA)が再保険に対する監視を強めており、企業が関連会社間の再保険取引を実施する際には税務上の影響を考慮することが必要です。 カナダでは未登録のオフショアの関連企業に対する再保険の上限枠(25%)が2010年に撤廃され、以来、免許を持たない多国籍のオフショア再保険会社が増加しました。同時にOSFIによるガイドラインB-3が施行され、保険会社は全体のリスク管理の一部として再保険に関するガバナンスを求められるようになりました。OSFIは、上述の上限枠25%の撤廃に伴い、多国籍の保険会社がカナダにおけるリスクをオフショアの関連グループに出再することで、グループレベルでの正味保有リスクが変わることなく、実質的なリスク保有額の上限と保有額そのものが増加することに懸念を示しています。また、関連会社であるか否かにかかわらず、無免許の再保険会社の破綻により、保険契約者が抱える信用リスクが高まる可能性もあります。

また、CRAは移転価格税制の観点から再保険取引を見直しています。CRAは、まず保険会社が外国の関連企業にリスクを移転する際の公正価値測定に関連する会計基準を精査するとともに、出再保険料と債務の公正価値の見積もりに用いられた移転価格文書中の比較対象取引の正当性や、再保険取引における独立企業間価格の正当性を疑問視しています。

また、付加価値税(VAT)の観点からは、これまで再保険や保険はVATの対象外でしたが、CRAは関連当事者間のオフショアの再保険に特別規定を設けました。同規定のもとでは、カナダの出再者はオフショア関連保険会社に出再する際、課税対象を明確化するため、契約書に付加保険料を記載することが求められます。この記載がない場合、出再された再保険料全額にGST(連邦消費税)が課税されます。しかし、これまで出再者に費用を請求する慣例がなかったことから、上述の要件が保険業界に混乱を招いており、今後もこの問題から目が離せない展開が続きそうです。

3. 保険会社の地域拠点としてのシンガポール

シンガポールは世界最大の金融センターであり、保険、再保険、キャプティブ、仲介市場に強みを発揮しています。今後アジアにおける人口増加や中産階級の可処分所得の増加により、アジアのプレゼンスがさらに高まる可能性があり、インフラ支出の増加とも相まって、さまざまなリスクに対する保険需要の増加が見込まれます。特にシンガポールは税務上の優遇措置があり、本稿ではこれらの税制上の優遇措置の一部を紹介しています。

4. 保険料税:高まる懸念

世界の税制が直接税から間接税へとシフトする中、多くの国で保険料税(以下、IPT: Insurance premium tax)や準財政的負担金を新たに導入、または引き上げる動きが高まっています。しかし、グローバルに事業を展開する多国籍の保険会社にとって、さらに仲介業者にとってもこうした動向は負担増につながりかねません。しかし、最近では多国籍保険会社のIPTの違反に対する税務当局の調査が増えており、例えばドイツではIPT部門が創設され、オランダではIPT部門の人員を倍増させるなど、税務当局側もこの問題に総力を挙げて取り組んでいます。また、近年の傾向としては、保険やIPTの適用範囲の拡大や、税率の引き上げ、報告の複雑化などが挙げられ、特にイギリスでは今後1年以内に相次ぐ保険料率の引き上げにより、年初からの引き上げ率が50%を超えることが予想されています。今後、多国籍の保険会社は、事業を展開する地域ごとに、IPT遵守のための人員、業務プロセス及びテクノロジーの見直しが必要となるでしょう。

英文オリジナルレポートと併せてご確認ください。

関連ページ