国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Outlook

IFRSフレームワークの改善に向けたIASBの動向

2013.08.01
IFRS Outlook 2013年8月号 (PDF:429KB)

概念フレームワークは、国際会計基準審議会(以下、IASB)がIFRSにおける個々の基準を策定する際の基礎を成すものである。2011年のアジェンダ協議に対して寄せられたフィードバックを受けて、IASBは概念フレームワーク・プロジェクトを2012年9月に再始動させた。このプロジェクトは、2010年に中断される前までに行われた概念フレームワーク・プロジェクトの議論に基づいて進められることになる。当該プロジェクトでは、報告企業、財務諸表の要素、測定、表示及び開示等のさまざまな側面への取り組みが行われる。下記の図1では、フレームワークの個々のトピックについての状況と予定の概要を示している。

図1:概念フレームワークにおける各種トピックについての状況と予定
概念フレームワークのトピック状況と予定
目的及び質的特性2010年9月に最終化されており、他に付随する改訂を除いて、再検討が行われる予定はない。
概念フレームワークの目的目的に関する現在の記述を更新
報告企業2010年3月公表の公開草案(ED)に基づいて進められる
要素(資産と負債の定義、資本対負債、認識及び認識の中止を含む)以前の作業に基づいて進められる
測定以前の作業に基づいて進められる
表示(純損益及びその他の包括利益の表示を含む)「財務諸表の表示」プロジェクトにおける以前の議論に基づいて進められる
開示(重要性を含む)開示フォーラムでのフィードバックを考慮する

2012年以降、IASBはフレームワークのさまざまな側面について議論してきた。プロジェクトの重要性や直面している課題について、2007年8月1日からIASBメンバーを務めるスティーブン・クーパー氏に意見を聞いた。

企業にとってなぜ概念フレームワークは重要だと思うか

IASBは、基準策定のためのガイダンスとして概念フレームワークを使っている。例えば、資産又は負債を財務諸表に認識すべきかどうかを考慮する際に概念フレームワークを参照する。そのため、作成者が将来の基準に積極的に意見を反映させるために最も効果的な方法は、概念フレームワークを改善するための議論に今参加することである。
概念フレームワークには、もう1つの役割がある。すなわち、作成者や企業が、特定の取引に特に適用する基準が存在しない場合に、会計方針を策定する際のガイダンスとして参照するのが、概念フレームワークである。

そのため、IFRSに係るフレームワークの見直しが行われることにより、基準及び解釈指針の今後の方向付けが行われることとなるため、作成者は、当該プロジェクトの動向を注視する必要がある。実際に、作成者やその他の関係者は、このプロジェクトに関してIASBにフィードバックを行うことが重要である。

なぜIASBは概念フレームワークを今重視しているのか

これまで概念フレームワークは、IASBにとって多くの場合に有用なガイダンスとなってきた。しかし、IASBは最近の経験測から、フレームワークの改善を行うことが必要ではないかと考えた。現行のフレームワークには、測定、表示及び開示や、報告企業の識別方法のような分野に関してほとんど記述がない点で、不足している部分がある。さらに、IASBは概念フレームワークのいくつかの分野で明確化が必要であると考えている。例えば、資産及び負債の定義は、既存の定義を利用してきたIASBの経験に照らして、明確化することができる。

2012年に、IASBはそのアジェンダ(検討テーマ)に関して公開協議を行った。この協議のコメント提供者の多くは、IASBが優先すべきプロジェクトとして概念フレームワークを挙げた。IASBはその判断に同意し、このプロジェクトを2012年下半期に再始動させた。改善した概念フレームワークを適時に提供するため、当該プロジェクトでは、これまで現行の概念フレームワークを基準書レベルのプロジェクトで適用する際に生じた問題に対応する上での改善に焦点を絞っている。

IASBは、2013年7月にディスカッション・ペーパー(DP)の公表を予定しており(訳者注:2013年7月18日に公表済み)、コメント募集期間は6カ月となる見込みである(訳者注:2014年1月14日がコメント提出期限)。IASBは、このDPによって、議論が活発化し、改善した概念フレームワークの公開草案の作成に向けて貴重な意見が示されることを願っている。

プロジェクトの主な課題は?

このプロジェクトの主要な課題の1つであり、多くの作成者が関心を持っている事項が、純損益及びその他の包括利益(OCI)とは何か、そしてリサイクリングを要求又は容認すべきかどうかを決定することである。

現行のIFRSでは以下を判断するための原則は定められていない。

  • a)収益又は費用のどの項目を純損益又はOCIに表示すべきか。
  • b)OCIに認識した項目を、その後純損益にリサイクリングすべきか、また、いつリサイクリングすべきか。

IASBは、DPにおいて、純損益及びOCI計算書に認識されたすべての項目は、財務業績について何らかの情報を提供するものであると提案している。また、多くの投資家、債権者、作成者等は純損益が有用な業績指標であると捉えており、「純損益」としての小計又は「純損益」という言葉が経済、事業、及び投資家の考え方に深く根付いていると考えている。すべてのセクターの利用者は、その分析の出発点として、あるいは企業の業績の主要な指標として純損益を分析に組み込んでいる。そのため、IASBは、概念フレームワークにおいて、小計として重要である純損益の概念を維持すべきであると提案している。IASBは、OCIとは何であると考えられるか、そしてその残余が純損益であることに関してガイダンスを提供することも提案している。

さらにOCIを説明する方法として、2つのアプローチを提案している。1つは、限定的な項目に対する一定の再測定を反映する狭義のアプローチであり、もう1つはOCIとして分類できる項目により柔軟性を持たせた広義のアプローチである。

次のステップは?

DPは2013年7月の公表を予定している(2013年7月18日に公表済み)。なお、コメント募集期間は6カ月になる見込みである(2014年1月14日がコメント提出期限)。

スティーブン・クーパー

2007年からIASBのメンバーを務める。それ以前は、財務諸表の表示に関してIASB及びFASBに助言を行う国際共同グループを含む、数々の諮問グループの委員を歴任した。クーパー氏はIASBの投資家諮問グループ(現在の資本市場諮問委員会)のメンバーを設立時から務めた経験もある。IASBにメンバーとして加入する前はUBS投資銀行のエクイティ部門のマネージングディレクターであった。また、コーポレート・ファイナンス・アドバイザリーや財務分析の教育と研修、その他の投資銀行関連の役職も務めた。クーパー氏は1983年に会計士の資格を取得し、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで会計・財務の修士号を取得している。


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