新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Outlook

新基準でも残るリース分類:想定される影響

2013.01.11
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IFRS Outlook 2013年1月号 (PDF:1,359KB)

IASB及びFASB(以下、「両審議会」)は、2006年よりリース会計について議論している。両審議会は、2010年8月に公開草案を共同で公表し、さらに公開草案に寄せられたフィードバックを評価するため2011年初めから再審議を行ってきた。フィードバックを受けて当初の提案は変更されており、当該変更を踏まえて両審議会は公開草案の再公表を決定した。その公表は2013年第1四半期(1~3月)の予定である。

リースの提案に関しては多くの変更が行われてきたものの、プロジェクトの基本となる考え方は首尾一貫している。ハンス・ホーヘルフォルストIASB議長は、2012年にロシアで開催されたEY主催のIFRSセミナーで次のように語っていた。「(リース)取引が投資者にとって理解しやすい方法で会計処理されることこそ、我々が望んでいることなのです。経営者がリースに関する情報に精通している一方で、投資家がリースから生じる企業の負債を推定しなければならないのはおかしいと思います」。1 ホーヘルフォルスト議長の発言は、借手がリース関連資産及び負債を貸借対照表に計上しなければならない旨を規定することにより、財務諸表利用者がリース取引をよりいっそう理解できるようにするという両審議会の基本となる考え方を反映したものである。

2012年6月に両審議会は、(その形式は異なるものの、)リースの分類を残すことを暫定的に決定しており、再公開草案においても当該提案が示されるものと思われる。本稿では、このリースの分類を改めて取り上げるとともに、新しい分類の導入に伴い想定される影響についても解説する。

リースの分類方法は?

提案では、借手及び貸手ともに、リースは2種類に分類される(それぞれ「定額リース」と「前加重リース」と呼ばれる)。リースは、借手が、リース期間にわたり原資産の重要でないとはいえない部分を取得し、費消するか否かに基づいて分類されることになる。両審議会は、分類の際の評価を簡素化するために、原資産の性質を基礎とした実務上の簡便法の使用を提案している。

簡便法の下では、不動産(すなわち、土地、建物又は建物の一部)のリースは、以下のいずれかの条件に該当する場合を除き、定額リースに分類される。

  • リース期間が原資産の経済的耐用年数の大部分にわたる
  • 固定リース料の現在価値が、原資産の公正価値のほとんどすべてを占める

不動産以外の資産(例:設備)のリースは、以下のいずれかの条件に該当する場合を除き前加重リースに分類される。

  • リース期間が、原資産の経済的耐用年数のわずか(insignificant)な部分である
  • 固定リース料の現在価値が、原資産の公正価値と比較して重要ではない

簡便法を用いることで、通常はリースの分類が容易になるものの、リース契約によっては容易にいかないケースも考えられる。例えば、電波塔やパイプラインのリースなど、一定の資産のリースが不動産のリースに該当するかどうかは明確ではない。たしかに様々な意見が交錯しているため、IFRS解釈指針委員会(以下、委員会)は、まさにこの問題を現在議論している。具体的には、電波塔がIAS第40号「投資不動産」の適用対象となる不動産なのか、それともIAS第16号「有形固定資産」の適用対象となる設備なのかが議論されている。電波塔は、空間が借手にリースされるという意味では不動産に類似する特徴を有しているが、不動産本来の特徴に欠けるという点で、問題が生じているのである。

加えて、前述の簡便法における除外要件にあてはまるか否かを判断するため、借手は、費消の程度を評価するうえでリース資産の耐用年数及び公正価値を見積もる必要がある。しかし、こうした見積りを行ったからといって、すべてのリースの分類が容易になる訳ではない。両審議会のスタッフは、最近のウェブキャスト2で、耐用年数が40年となる商業用不動産の30年リースと、同じく耐用年数は40年であるがリース期間を5年とする傭船契約上の船舶の例を取り上げていた。スタッフは、いずれのケースについても、リースの分類が明確に決まるわけではないと述べていた。というのも、除外要件に含まれる「(経済的耐用年数の)わずかな部分」、「(経済的耐用年数の)大部分」及び「(原資産の公正価値の)ほとんど実質的にすべて」といった用語の意味が特に定義されていないからである。したがって、リース契約の分類評価にばらつきが生じないよう、当該評価にはそのためのプロセスや統制だけでなく、かなりの判断も必要となろう。

なお改訂案では、更新オプションを含めリース期間が最長で12カ月以内となる短期リースに関して、借手及び貸手は現在のオペレーティング・リースの会計処理を適用できる(強制ではない)ことに留意されたい。

借手への影響は?

改訂案では、リースの分類に関係なく、借手は当初、リースについて使用権資産及び対応するリース負債を同額で貸借対照表に計上することになる。しかし、使用権資産の事後測定及びリース費用の認識パターンは、リースの種類により異なる。

前加重リースの場合、借手は、使用権資産を個別に償却し(通常は定額法)、実効金利法による負債の増加につき利息費用を認識する。利息費用は一般的に時間の経過に伴って減少するので、借手はリース費用総額を前加重で認識することになる。この会計処理は現行のリース基準におけるファイナンス・リースの処理と整合したものであり、借入による有形固定資産等の購入に類似する。

定額リースの場合、借手は、現行基準におけるオペレーティング・リースの費用認識のように、リース期間にわたり定額で費用を認識することになる。また、実効金利法による負債の増加につき利息費用を認識し、借手は、定額法による期間費用総額から、負債の増加分(利息費用)を控除して、使用権資産の変動額を算定することになる。定額リースに係る費用総額は、単一の表示科目(例えばリース料又は賃料)として損益計算書に表示される。

IFRSでは、資産の減価償却費又は償却費は、将来の経済的便益が企業によって費消されるパターンを反映する形で計算される。リースの分類は償却と同じ概念的基礎を有する(すなわち、借手による資産の予測消費を基礎にする)が、定額リースにおける使用権資産の償却方法は、他の資産に適用される償却方法と異なる。

使用権資産の償却費は、定額法による期間費用総額と負債の増加分(利息費用)の差額として計算される。両審議会は、2010年の公開草案で提案された費用の前加重について、一部のリースの借手からのフィードバックを受けてこの償却方法を提案したものの、この償却方法が既存の資産の償却と整合していない点については、懸念の声がいくつかあがっている。

さらに、定額リースにおいて認識される使用権資産は、前加重リースにおいて認識される使用権資産よりも、減損が生じる可能性がより高くなるであろう。一般的に、定額リースにおいて認識される使用権資産の帳簿価額は、前加重リースにおいて認識される使用権資産の帳簿価額よりも、リース期間の前半では多額になっている。というのも、定額リースによる使用権資産の減少幅は毎期一定ではなく、リース期間の終了時に近づくほど大きくなるからである。

さらに、定額リースの場合、借手は定額によるリース料総額、実効金利法による負債の期間増加額及び両者の差額となる使用権資産の償却額といった、追加の計算を実施しなければならないので、借手の記帳の負担は減るどころか、むしろ増大することになる。

借手モデルの現行処理と提案の比較

以下の表1では、現行のリース会計に基づくリースの分類と、改訂後の提案に基づき適用される可能性が最も高い、原資産の性質(すなわち、不動産か不動産以外か)に基づく分類とを比較している。ただし、必ずしもすべてのリースが表のように分類されるわけではない。また、提案されているその他の変更も損益計算書に影響を及ぼすことになる。

表1:借手モデルの現行処理と提案の比較

現行 改訂案 損益計算書への影響
不動産(土地、建物又は建物の一部)
オペレーティング・リース 定額リース 概ね類似
ファイナンス・リース 前加重リース 概ね類似
不動産以外のリース(車両・機器等)
オペレーティング・リース 前加重リース 費用認識が初期に増加、
償却費及び利息費用の個別表示
ファイナンス・リース 前加重リース 概ね類似

貸手における考慮事項は?

改訂案は貸手の財務諸表にも影響を及ぼすことになる。ただし、定額リースの場合、大きな影響が生じることはないであろう。両審議会は、定額リースの貸手について、現在のオペレーティング・リースと同様の方法で会計処理し、リース原資産の認識を中止しないことを暫定的に決定した。

この決定により、現在オペレーティング・リースに分類されており、改訂案でも定額リースに分類されるリースの貸手に係る負担は減少することになる。他方で、現在オペレーティング・リースに分類されているが、改訂案では前加重リースに分類されるリースの貸手は、この決定により財務諸表に多大な影響を受けるであろう。そのような貸手は現在、定額ベースでリース収入を認識し、原資産を減価償却しているが、改訂案に基づけば、前加重、すなわちリース期間の前半でより多くの純損益及び利息収入を認識することになる。

現在、ファイナンス・リースの貸手となっている企業でさえ、前加重リースに関する会計処理案(債権及び残余アプローチと呼ばれる)では、収益認識のタイミングが変わるであろう。債権及び残余アプローチでは、貸手はリース資産の一部を売却し、債権を計上することになる。リース資産部分のうち売却とはみなされない部分は残余資産として引き続き資産計上される。債権及び残余アプローチで当初認識される利益の額は、現行のファイナンス・リースの会計処理と異なり、残余資産に対する利益が認識されないため、減少することになる。

残余資産の繰延利益は、原資産がその後売却又は再リースされるときにのみ、認識を中止する残余資産の帳簿価額の一部を構成する。

定額リースは現行のオペレーティング・リースと同様の方法で会計処理されるが(また、前加重リースの会計処理も現行のファイナンス・リースと同様の方法で会計処理されるが)、それでも貸手にとって検討を要する重要な実務上の影響がある。すなわち、貸手は、リース期間終了時の残余価値だけでなく、リース開始日のリース資産の公正価値を見積もる必要があり、こうした公正価値の見積りは、現在オペレーティング・リースに分類されるが改訂案で債権及び残余アプローチに分類されるリースの場合に、より重要なものとなる。IFRSでは、当該公正価値がリースの分類判定や割引率の算定に使用される。提案では、リース開始日のリース資産の公正価値はリースの分類に影響を及ぼすだけでなく、債権及び残余アプローチの対象になるリースに関し当初認識される利益の額にも影響を及ぼす。さらに、リース期間の終了時点の残余価値の見積額はリース期間にわたり認識される利息収益の金額にも影響を及ぼす。提案により公正価値の見積りの重要性が増すことで、当該見積りを適切に実施するためのプロセス改善が必要となる場合もある。

貸手モデルの現行処理と提案の比較

表2では、現行の会計処理と、改訂後の提案に基づき貸手が適用する可能性が最も高いアプローチを比較している。提案された基準の適用により、その他の変更も生じる可能性がある(例えば、リース期間の決定や再評価など)。

表2:貸手モデルの現行処理と提案の比較

現行 改訂案 財務諸表への影響
不動産(土地、建物又は建物の一部)
オペレーティング・リース オペレーティング・リース 概ね類似
ファイナンス・リース 債権及び残余アプローチ
  • リース開始日に認識される利益が減少する
  • 残余資産から繰延利益が控除される
不動産以外のリース(車両・機器等)
オペレーティング・リース 実務上の簡便法に係る条件が満たされない場合には、債権及び残余アプローチ
  • 利益が一定ではなくなる
  • 一部の有形資産が金融資産に組み替えられるため、貸借対照表の構成が変化する
ファイナンス・リース 債権及び残余アプローチ
  • リース開始日に認識される利益が減少する
  • 残余資産から繰延利益が控除される

今後の動向

EYが最近公表した調査結果では、2010年公開草案における提案により、調査対象企業のほぼ全社が影響を受けると推測されていた。3 調査結果によると、「財務諸表に開示されている将来のオペレーティング・リース料は企業の総資産の4%、総負債の7%に達していた。(中略)当該金額が、改訂案による借手の貸借対照表に及ぼすおおよその金額的影響と推測される」としている。大半の企業が本改訂の影響を受けることになるため、経営者は改訂案により予想される影響を分析し、懸念事項がある場合には、再公開草案の公表後にコメント・レターの提出をご検討されたい。

リース・プロジェクトの詳細に関しては、以下の公表物を www.ey.com/ifrs で閲覧することができる。



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