国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
保険IFRSアラート

保険契約に関する新基準(IFRS第17号)の公表

2017.05.24
重要ポイント

  • 国際会計基準審議会が、保険契約の認識、測定、表示及び開示を包括的に規定する新会計基準(IFRS第17号)を公表した。
  • IFRS第17号のモデルは、保険契約負債の貸借対照表計上額に測定日現在の状況を反映させることと、保険サービスが提供される期間にわたって利益を認識することを共に達成するモデルとなっている。
  • 一定の将来キャッシュ・フロー及びリスク調整の見積もりの変更も、保険サービスが提供される期間にわたって認識される。
  • 割引率の変更による影響は、会社の選択により、純損益又はその他の包括利益で認識される。
  • 有配当保険契約について、その測定及び表示に関するガイダンスが別途設けられている。
  • IFRS第17号は、2021年1月1日以降開始年次報告期間から適用となるが、早期適用が認められている。

背景

長きにわたる検討を終え、国際会計基準審議会(以下、IASB)はIFRS第17号「保険契約」(以下、IFRS第17号)を公表した。IFRS第17号は2021年1月1日以降開始年次報告期間から強制適用となる。IFRS第17号が適用されると、2005年に公表されたIFRS第4号「保険契約」は廃止となる。IFRS第17号の全般的な目的は、保険契約を発行している企業に対し、より有用、かつ一貫した保険契約に関する会計モデルを提供することにある。

2013年に公表した再公開草案(以下、2013年ED)に対するコメントを受け、IASBは当該再公開草案で提案したモデルの多くの側面について再検討を行っている。

再検討の結果、モデルのいくつかの分野に変更が施されてはいるものの、測定日現在の状況を反映したインプットを用いて保険契約を測定するという全般的な目的は堅持されている。IASBは2013年EDに対するフィードバックを受けて施した変更は根本的なものではないと結論付けており、その意味で、モデルの根本部分についても、関係者は基準開発中にコメントする機会があったと考えている。また、IASBは、広範なコンサルテーションがプロジェクトを通して実施されてきたと述べている。それゆえ、再々公開草案の公表は必要ではなく、再々公開草案の公表を経ずに最終基準を公表することは可能とIASBは判断した。

本稿は、最終基準の主な特徴を要約しており、また2013年EDからの主な変更点を紹介している。

今後の展開

IASBは、新基準の導入期間中の継続的なサポートが必要であることは認識しており、その目的はIFRS第17号の原則の理解を促進し、その原則を適切に解釈することにある。IASBは資料提供及び関係者との協議を通じて導入サポートを行う予定であり、そのプロセスの一環として、IASBはIFRS第17号の移行リソースグループ(以下、TRG)を設立する予定である。そこでは、IFRS第17号の導入に関連した論点を分析することになる。TRGから正式な適用ガイダンスが公表されることはなく、公式な決定が行われることもない。基準の公表と同時に、IASBはTRGを向こう数か月で設立する旨を発表しており、TRGの役割について追加の情報を公表している。

今後、公表を予定している、IFRS第17号に関する我々EYからの公表物にも期待されたい。

EYの見解

IFRS第17号及びIFRS第9号により、保険会社のIFRS財務諸表上の会計処理は抜本的に変更される。財務報告を作成する際に利用するデータ、システム及びプロセスだけではなく、財務報告を作成する担当者にも多大な影響が予想される。

新たなモデルでは、各報告日現在の仮定を用いて、保険契約負債を貸借対照表に計上することが求められるが、損益項目は当期中の保険サービスの提供を反映することになる。したがって、当モデルでは、報告日現在の仮定を用いて貸借対照表計上額を算定することと、企業による保険サービスの提供を時の経過に応じて純損益で認識するという2つの点が同時に達成されている。当モデルは、一定の保険会社やグループの利益や総資本に重要な影響を与える可能性が高く、KPIの変更も考えられ、現在の会計モデルと比較して、報告される資本や利益のボラティリティが高まる可能性がある。

発効日が2021年1月1日であるため、おおよそ3年半の導入期間が用意されている。IASBは以前のミーティングにおいて、他の基準と比較してこの導入期間は長いと述べてはいるものの、IFRS第17号の複雑性を鑑みれば、保険会社に待つ余裕はなく、今からでも導入準備を開始する必要があろう。導入ステップを計画するため、基準遵守に必要な労力を検討するため、また財務上の影響を理解し、説明するために、影響度調査は必須であろう。特に、移行日に有効な契約にIFRS第17号を常に適用していたかのように開始貸借対照表の修正再表示を求める規定は、多くの労力を要するものと考えられる。




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