新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
保険IFRSアラート

両審議会は保険契約、残余マージンのアンロック、表示及び開示の要件を再審議

2013.02.08
重要ポイント
  • 両審議会は、キャッシュ・フローが資産のリターンの影響を受けるが、「ミラーリング・アプローチ」が適用されない契約に対し、従前の決定をどのように適用すべきかを明示した。
  • IASBは、有配当契約に係る原資産から生ずる一部の利得及び損失に対しては、残余マージンをアンロックすべきではないと決定した。
  • またIASBは、将来の保険事故及び他の将来のサービスに関連したキャッシュ・フローの見積りの変動に対してのみ、残余マージンをアンロックすべきであるという点を明確にした。
  • IASBのモデルによれば、再保険資産に含まれる当初の残余マージンは、残存期間にわたる期待損失を考慮して決定され、期待信用損失のその後の変動は、純損益を通じて認識されることになるだろう。

概 要

この保険IFRSアラートでは、2012年11月及び12月の会議で取り上げられた議題について解説する。11月の合同会議では、国際会計基準審議会(以下、IASB)及び米国財務会計基準審議会(以下、FASB、あわせて両審議会)は、IASBの公開草案「保険契約」(以下、ED)及びFASBのディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」(以下、DP)で下された決定について再審議を行った。

両審議会は、キャッシュ・フローが資産のリターンの影響を受けるが、ミラーリング・アプローチが適用されない契約に対して、暫定的な決定をどのように適用するか、特に以下の項目について討議した。

  • 利息を計上するための割引率をロックインすべきか
  • 割引率の変動の表示方法

12月には、IASBは以下の論点及び議題を対象とした単独会議を開催した。

  • 意図せぬ結果の発生を回避するための、残余マージンのアンロック適用のメカニズム
  • 有配当契約に対する、残余マージンのアンロックに代わるアプローチ(「変動」残余マージン)
  • 出再者が保有する再保険資産の減損

有配当性を有する契約の概要

保険契約は、資産の運用成績の影響を受ける投資リターンを、保険契約者に提供する特徴をしばしば有している。本プロジェクトでは、かかる特性は有配当性と呼ばれる。これらの契約には、保険者が保有する特定の原資産のリターンの分配を受けるという契約上の権利を含んだものも存在する。両審議会は、この種の契約を有配当契約として分類している。

前回までの会議で両審議会は、有配当契約にどのようにビルディング・ブロック・アプローチ(以下、BBA)を適用するか、明確にすべきであると結論づけ、「ミラーリング・アプローチ」に関するガイダンスを整備した。ミラーリング・アプローチでは、契約上の有配当性に関連するキャッシュ・フローは、原資産と整合した方法で測定されるという点が明確化されている。さらに、契約上の有配当性に関連した割引率の変動による影響は、原資産に係る金利の変動による影響と整合した方法で、包括利益計算書の中に表示されることになる。この明確化の目的は、契約上リンクしている有配当契約のキャッシュ・フローと原資産の間の測定における、会計上のミスマッチが生じないようにする点にある。

ミラーリング・アプローチが適用されない、有配当性を有する契約

ミラーリング・アプローチは有配当契約を対象としたものであり、有配当性を有する契約の一部について、意図せぬ結果が起きる可能性があるとスタッフは指摘した。スタッフは、特に資産への依存性が、保険者が保有している特定の原資産のリターンの分配に関する契約上の権利から生じるものではない契約について指摘した。

この種の契約の最も典型的な例として、スタッフは、契約のリターンが資産の運用成績に影響を受けるものの、賦与利回りについては保険者の裁量で決定されるユニバーサル生命保険を挙げた。それ以外の例として、特定の資産の運用成績(インデックス)に対する契約上の権利を付与するものの、保険者が原資産を保有していないような、インデックス・リンク契約がある。有配当性を有するこれらの契約は、保険者が保有する資産との契約上の依存性が存在しないため、両審議会の現在の見解によれば、「有配当契約」には該当しない。結果として、ミラーリング・アプローチがこれらの契約に適用されることはなく、また負債測定のための割引率は、対象となる資産の運用成績への依存を反映したものではなくなるだろう。

従来の決定の明確化

スタッフは、ミラーリング・アプローチが適用されない、有配当性を有する契約に対して、割引率の見積りに関する従来の決定をどのように適用するかについて明確化する必要があると考えた。具体的に、スタッフは、キャッシュ・フローが特定の資産プールの運用成績に依存している範囲において、負債を測定するための割引率には、その依存性を反映すべきであると示唆した。

保険契約基準が原則主義であることを考慮し、この明確化の必要性について問う審議会メンバーもいた。また、キャッシュ・フローと資産リターンとが契約上明白にリンクしているとはいえない場合に、どのようにして経営陣は資産リターンへの契約の依存性を判断するのか、疑問を投じるメンバーもいた。これらの審議会のメンバーは、契約上のリンクがない場合には、保険者は資産を考慮すべきではないと提案し、負債のキャッシュ・フローの特徴により割引率を決定すべきであるとした。

さらにスタッフは、自分たちの意図は原則主義からの逸脱にあるわけではなく、ミラーリング・アプローチが適用されない有配当性を有する契約に対するガイダンスの適用についての明確化を目的とするに過ぎないと説明した。スタッフは、このような契約における資産に依存する賦与利回りは、契約に関連するリスクの共有を生み出すため、資産の期待リターンは保険負債の特徴に該当すると考えている。

審議会メンバーの過半数は、ミラーリング・アプローチが適用されない、有配当性を有する契約の割引率について明確化することに賛成した。この割引率は、以下のいずれにも関わりなく、期待キャッシュ・フローが資産からのリターンに影響される範囲において、当該負債の特徴を反映するものであるべきとした。

  1. 資産の期待リターンの移転が、保険者の裁量権の行使によるかどうか
  2. 特定の資産を保険者が保有しているかどうか

割引率の変動の表示

両審議会は、ミラーリング・アプローチが適用されない有配当性を有する契約に関し、割引率の変動をその他の包括利益(以下、OCI)の中に表示すべきか、純損益の中で利息費用の一部として認識すべきかを討議した。これまでに審議会が、利息費用はロックインされた利率に基づくべきであると決定していたにもかかわらず、スタッフは、純損益で認識する利息費用を測定するにあたって割引率をリセットすることは、より有益な情報をもたらすことになるだろうという考えを表明した。

両審議会は、それに同意し、次のような暫定的な決定を行った。すなわち、賦与利回りの予想される変更によって、保険契約負債の測定における期待キャッシュ・フローに変動が生じた場合に、保険者は、純損益における利息費用の測定のための割引率を、新たな賦与利回りにリセットすべきであるとした。またこの予想賦与利回りは負債の測定にも適用されるため、有配当性に係るキャッシュ・フロー部分に関する割引率の変動は、OCIではなく純損益で表示されることになるだろうと両審議会は指摘した。

EYの見解

有配当性を有する契約に係る業績の変動性に対する懸念を軽減するために、両審議会は、かなりの労力を費やした。結果的には、割引率の変動から生ずる保険負債の変動は、これらの契約に係るキャッシュ・フローの構成要素に従い(たとえば、賦与利回りの変動により影響を受ける部分など)、OCI 又は純損益に区別されることになるだろう。これは、会計処理のモデルの改訂が潜在的な損益の変動性を減少させる可能性がある一方で、運用上の複雑さを増加させる可能性があることを示している。

また、キャッシュ・フローの変動部分と固定部分をどう区別するのか、あるいは資産のリターンに影響を受ける部分とそうでない部分をどう区別するのかなど、一部の提案内容に関して、有配当性を有する契約に対してどのように適用するかについて、両審議会によるさらなる明確化が必要になるだろう。

IASBスタッフは、複雑さが増すことを懸念しているように思われる。12月の会議の最後には、スタッフは、有配当性を有する契約の変動キャッシュ・フローと固定キャッシュ・フローの区別について調査しているところであると述べている。

有配当契約における変動残余マージン

12月の会議でIASBは、有配当契約について「変動」残余マージン・アプローチを適用するという、一部の業界団体からの提案について討議を行った。この提案は、資産管理手数料及び資産リターンに係る保険者の持分を含め、保険契約の未実現利益に相当するように残余マージンを調整するというものである。残余マージンにより、契約の基礎となる項目の変動、たとえば、有配当契約に対応する資産の保険者の持分、保険に関する実績(たとえば死差益)などから生ずる利得及び損失の損益認識を繰り延べる。変動残余マージンは、有配当契約の契約者に対する分配(すなわち、配当の発表)が行われた際に純損益として解放される。

業界からの提案は、契約に関する利益分配のメカニズムを反映した、残余マージンの配分メカニズムを含むものであった。提案者は、この提案が、収益認識を合理的に確実となった額に制限するという、収益認識のプロジェクトの提案でのガイダンスと整合すると考えている。

IASBスタッフは、かかる契約について変動残余マージンの採用を提案したが、その根拠は業界グループとは異なると主張した。IASBスタッフは、保険者が、提供するサービスの対価として、有配当契約の契約者とともに契約の基礎となる項目への参加を決定できるという点に着目していた。IASBスタッフは、契約の基礎となる項目の価値の変動を、契約に従い提供されるサービスの対価としての新たな保険料に相当すると考えている。新たな保険料に相当するものとして、残余マージンを変動させることは、スタッフの見解によれば、保険契約の会計モデル全体と整合している。またこのアプローチは、残余マージンに対する貨幣の時間価値の適用(すなわち、契約開始時に決定された利率による測定)と、有配当性に係るキャッシュ・アウトフロー(資産価値の変動に基づき更新される)との間の会計上のミスマッチを低減することになるだろう。

変動残余マージン・アプローチを支持するとした審議会メンバーもいた。支持するメンバーは、保険者の業績は、原資産に係る契約上の持分の変動に直結するものではなく、継続的な視点で捉えるべきものと考えている。またこれらのメンバーは、保険の会計モデルが、契約上、契約者に帰属する資産(たとえば、資産の90%)の一部の変動から生ずる不確実性を反映するのであれば、そのモデルはまた、保険者に契約上帰属する残りの資産(資産の10%)の変動から生ずる不確実性も反映すべきであると指摘した。他の審議会メンバーは、保険モデルで測定した契約者に対する将来のキャッシュ・アウトフローだけでなく、当該資産の保険者の持分に関連する要素に対しても、マージンをアンロックすることにつながるという理由で、この提案には否定的であった。否定的な見解によれば、このようなメカニズムは損益の平準化につながる可能性があるとされる。

8対7という僅差で、審議会は有配当契約への変動マージンの適用に係るスタッフ提案を否決した。さらに両審議会は、保険のBBA(すなわち、期待価値モデル)と整合しないという理由で、収益認識に関する提案における収益の認識に関する制約を残余マージンの配分には適用しないことを全会一致で決定した。

EYの見解

IASBもFASBも、会計によって生じ、経済実態を反映しない業績の変動の発生可能性を低減することに主眼を置いてきた。しかしながら、変動残余マージンを適用しないというIASBの決定により、契約の経済的状況を反映したものと考えられる変動については、今後、審議会が取り上げることはない点が明らかとなった。

残余マージンのアンロックの適用

IASBは、現行の決定に従った場合における、意図せぬ結果の可能性を検討するため、残余マージンのアンロックについて再討議した。IASBはこれまでに、将来キャッシュ・フローの見積りの変動はすべて、残余マージンに追加又は控除し、過去のキャッシュ・フローのすべての差異(すなわち、経験調整)は即座に純損益で認識すると決定している。スタッフ及び一部の関係者は、将来の保険事故に対する保険金の見積りの変動については、この区別した取扱いが適していると考えたが、一部の過去の事象に関連した見積りの変動については、意図せぬ結果をもたらす可能性があると考えた。

たとえば、予想よりも解約失効率が高ければ、解約返戻金の支払いが予想より高くなる。しかし、この結果、保険者は、将来の期間のキャッシュ・アウトフローの純額の減少を見込むことになる。さらなる適用の明確化がなければ、アンロック・アプローチにより、保険者は予想額を超える当期の解約返戻金(実績に基づく差異)を即座に純損益で認識すると解釈するかもしれない。また、現在の解約がこのような変化をもたらしたとしても、残余マージンについては、将来のキャッシュ・アウトフローが減少したことにより(将来のキャッシュ・フローの見積りの変動として)増加するだろう。この解釈によれば、今期の見積りによる影響を、今期の事象に直接関連している将来の見積りと結び付けて考える場合よりも、今期に認識する損失額は大きくなるだろう。

キャッシュ・フローの変動による影響の一貫性を高めるために、スタッフは、将来の保障/ 補償又は将来のサービスに関連したキャッシュ・フローに関する、現在の見積りと従来の見積りとの差異について、残余マージンをアンロックすべきであると提案した。言い換えれば、過去の保険事故及びすでに提供されたサービスに関連したキャッシュ・フローの変動が、当期の純損益で認識されることになる。将来の保障/ 補償及び他の将来の役務に関連したキャッシュ・フローの見積りの変動は、いずれも残余マージンで調整される。

審議会メンバー全員がスタッフの提案に賛成したが、メンバーの一人が、この適用の改訂に関して、関係者が想定するところと整合しているかどうかについて、疑念を呈した。スタッフは、審議会の討議は最近指摘された論点に関する結果であることを認識している。残余マージンのアンロックは、IASBが関係者からの意見を求めている分野のひとつであるため、全面的な評価は、改定公開草案が公表された後に行われるだろう。

EYの見解

残余マージンをアンロックする際に、アンロック可能な将来キャッシュ・フローを区分するというIASBの決定は、保険者が、自らのシステムにおいて、この区分をどう適用するか検討する必要があることを意味する。保険者は、当期の事象によってもたらされる変動を識別できるように、期待将来キャッシュ・フローの変動に関して数種類の異なった見積りの算定が必要となる可能性があるだろう。

実績に基づく調整と見積りの変動とをどのように区分するかという論点は、2010年に公表されたEDにも含まれていたが、実績に基づく調整及びキャッシュ・フローの見積りの変動の双方が純損益で認識されていたため、損益計算書における表示区分の論点にとどまっていた。

再保険資産の減損

IASBは、出再者が保有する再保険資産に係る信用損失をどのように会計処理するか討議した。これまでの議論において、IASBは、減損モデルでは再保険者の信用リスクを検討すべきであり、損失額を決定及び認識する際には、IFRS第9号「金融商品」の減損モデルを利用することを決定していた。残余マージンのアンロックに関するIASBの決定によって、減損に関する従前の決定と関連して、信用損失(の変動)は残余マージンの調整として会計処理するのか、又は純損益で認識すべきなのかという対処すべき問題が生じている。

スタッフは、審議会に対し、将来の再保険契約に関しては、契約開始時の利得及び損失の双方が、残余マージンを通じて認識されることを改めて伝えたうえで、以下の2つの案を示した。

  1. 残余マージンを決定する際に、IFRS第9号の減損の提案を適用せず、契約期間にわたる期待損失を含めて契約開始時における残余マージンを決定する。契約開始後は、期待キャッシュ・フローの変動を、信用損失に係るものも含めすべて残余マージンの調整として認識する。
  2. 残余マージンのアンロックと合わせ、金融商品の減損に関する提案を適用する。
    保険者は、契約開始時に、期待損失のうち将来12カ月間に発生が見込まれる金額を純損益で認識する。また、再保険者の信用力に大幅な変化が生じた場合には、保険者は残存契約期間にわたる期待損失の全額を純損益で認識する。

スタッフは、保険モデルにおいて、期待キャッシュ・フローの変動を一貫して残余マージンのアンロックにより調整するという点で、最初の案を推奨した。

どちらの案も、メンバーの見解と完全に一致するものではなかったため、審議会メンバーからは、いくつかのコメントが出された。審議会は、保険モデルが保険期間全体にわたる期待損失モデルであることは認識しているものの、残余マージンの中に信用損失を「温存」し、信用損失を即座に認識せずにおくことに慎重であった。最終的に、審議会は、契約開始時の残余マージンについて契約期間にわたる信用損失を考慮して測定し、その後の契約期間における期待信用損失の変動は純損益で認識するという、スタッフが提示した2つの案を組み合わせたモデルに同意した。しかし、一部の審議会メンバーは、信用損失の変動(純損益で認識)と、その他のキャッシュ・フローの変動(残余マージンの調整)とを区分するための根拠をどのように明確にするか、スタッフは検討すべきであると提案した。

EYの見解

IASBは、保険モデル全体と整合させるために、契約の測定において、期間の限度を設定することなく、契約期間全体にわたる信用期待損失を契約開始時に見積ることを求める選択を行った。結果として、再保険資産に係る減損モデル案は、保険契約及び金融商品の減損モデルを組み合わせたものとなっている。当該提案によれば、少なくとも概念上は、保険者の業績は、審議会の金融商品の減損モデルに従って会計処理する場合よりも、ボラティリティが大きくなる可能性があるだろう。実務上は、再保険者の信用力が事後的に変動することによる影響は限定的だろう。これは、再保険契約に係る回収可能性に関する問題の大半が、係争案件に係る再保険契約の効果に関連したものであり、再保険者の信用力によるものではないからである。係争案件は減損テストの対象外であり、期待履行キャッシュ・フロー全体でカバーされる。

表示及び開示

昨秋に行われた会議の中で、IASBスタッフは、従前の審議会による決定を反映させるためにEDにおける提案の修正を行い、表示及び開示の要件に関する提案を提示した。

財政状態計算書及び包括利益計算書の表示項目

2010年に公表されたEDでは、保険者が、保険契約のポートフォリオごとのすべての権利及び義務を、単一の正味負債又は資産として表示することが提案されていた。

両審議会は、ED以降、財政状態計算書における異なる表示アプローチに係る暫定的な決定を行ってきた。たとえば、BBAで測定される契約については、両審議会は、保険契約から生ずるすべての保険料又はその他の対価に対する無条件の権利を、保険契約資産又は負債とは区分して、債権として表示すべきであると暫定的に決定した。保険料配分アプローチ(以下、PAA)で測定される契約に関しては、IASBは、従前にFASBとともに、財政状態計算書において、すべての権利及び義務を総額ベースで表示し、残存カバレッジに係る負債は支払備金とは区分し表示するよう決定している。

11月の会議でIASBスタッフは、保険者が、保険契約のポートフォリオから生ずるすべての権利及び義務を、財政状態計算書の中で純額表示することを提案した。スタッフは、財政状態計算書の中で正味負債(又は資産)の構成要素を別建てで表示すると、これらの項目が異なる互いに無関係の項目と捉えられる可能性があり、結果として利用者の誤解を招きかねないと説明した。スタッフは、EDで提案された表示アプローチを確認することを提案した。

IASBは、保険者が、財政状態計算書において、保険契約に係るすべての権利及び義務を相殺し、純額で表示すべきであると同意するとともに、暫定的に決定した。提示された開示要件に関する草案に基づくと、IASBは、相殺の集約レベルを保険契約ポートフォリオ・レベルとすることを意図しており、各保険契約ポートフォリオに係る権利及び義務は、単一の正味負債又は資産として相殺表示されるだろう。ただし、保険者は、財政状態計算書において、元受保険契約と再保険契約を別個の表示項目として表示することを求められるだろう。また、IAS第1号「財務諸表の表示」で求められる一般要件が、保険契約に関する包括利益計算書の表示要件を規定するのに十分なものであるというのが審議会の見解である。

追加の開示に関するさらなる討議

2012年9月の会議で、IASBは、開示要件全般に関する決定を行った。しかし、当時IASBは、将来における決定に伴い、妥当と考えられる追加の開示要件を検討すると言及していた。その後、IASBは、有配当契約、包括利益計算書における保険料及び保険金の測定、ならびに経過措置という3つのトピックに関して、追加の開示を検討するという結論に達した。

有配当契約

IASBは、ミラーリング・アプローチが適用される、有配当性を有する保険契約に関する開示要件について討議し、以下の開示要件を暫定的に決定した。

  1. 保険契約の帳簿価額
  2. 保険契約負債が、特定の資産の価額に基づいて測定されるものの保険者の財務諸表におけるものとは異なる測定方法に基づいて測定される場合における、当該差異が保険契約者に帰属する程度

既経過保険料の表示

BBAにおいて既経過保険料を表示するという要件は、IASB及びFASB双方により最近になって導入されたものである。したがって、2010年に公表されたEDは当該論点に関する具体的な開示項目を含んでおらず、両審議会は、11月の会議において、どういった情報を注記として付記すべきか討議した。

両審議会は、BBAに基づく既経過保険料が把握でき、PAAに基づく表示及び開示とも整合したものとするために、期首残高から期末残高への調整表の中で、以下の項目について区分して開示する必要があると言及した。

  1. 残存カバレッジに係る保険契約負債のうち、以下に起因するもの
    (i) 当初認識時の損失
    (ii) 即時に損益として認識される事後的な見積りの変動額
  2. 発生保険金に係る保険契約負債(支払備金)

BBAを用いて会計処理される契約について、保険者は、保険契約収益を、当期の収益測定に係る要素別に分解すべきである。当該要素の例としては、報告期間中に発生が見込まれる保険金及び給付金、及びマージンの当期配分額がある。BBAが適用される契約について、保険者は、期中に引き受けた保険契約が保険契約負債に及ぼす影響を、以下のように区別して開示すべきである。

  1. 期待将来キャッシュ・アウトフローの現在価値(新契約費は区別して表示)
  2. 期待将来キャッシュ・インフローの現在価値
  3. リスク調整
  4. 残余マージン

保険者に収入保険料から既経過保険料への調整表の作成を求めないというスタッフの提案にもかかわらず、最終的に審議会は、当該調整表の作成を求める決定をした。この論拠は、払込期日到来済みの保険料に関する情報は重要であり、明示的に開示することで、投資家が現在入手している情報を継続して提供できるという投資家からの指摘にある。

経過措置

IAS 第8 号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」は、企業は、新基準の適用時に、前期及び当期に関し、従前の会計方針に従っていた場合の各項目金額を開示するよう求めている。その救済措置として、IASBは、将来公表される保険契約の新基準を初めて適用する場合には、保険者は当該開示を行う必要はないという決定を下した。

EYの見解

これらの開示要件は実務上の負担が重いと映るかもしれないが、財務諸表を理解し易いものとするために、異なる利害関係者(たとえば、財務諸表の作成者、利用者など)のニーズのバランスを取ろうとする試みが認められる。保険者は、自社の業務及び業績に関して首尾一貫した開示が行えるよう、表示及び開示要件に関する包括的な評価を行う必要があるだろう。

フィールド・ワークに関する計画案

2012年9月の会議で、IASBは、今後、対象とする論点を限定して審議を行うことと合わせ、保険契約に関する改訂公開草案を公表することを暫定的に決定した。11月の会議で、IASBは、提案されている基準案の実務における適用に係る情報を収集するためにフィールド・ワークを実施するというスタッフの計画案を検討した。

スタッフの計画に加え、両審議会は以下について提案した。

  1. スタッフが、保険契約基準を架空又は実在する会社に適用し、すべての暫定的な決定が実務上どのように適用されるか検証する。
  2. フィールド・ワークは、(必然的に開示がフィールド・ワークの結果を表示する方法になると考えられるが)開示のパッケージの作成を明示的に行うものとする。
  3. 前回のフィールド・ワークには含まれなかった国にも対象を広げ、参加を呼び掛ける。

次のステップ

両審議会による再審議は終わりに近づいているものの、2013年1月にも討議を継続し、残りの問題の一部を解決する予定である。1月の会議のトピックには、その中から、法人所得税、据置年金契約の認識、ロス・ポートフォリオ・トランスファーに関する会計処理などが含まれる。

IASBは、2013年の上半期に改訂公開草案を公表する予定であり、最終基準書の公表日程についてもいずれ決定する予定である。FASBも、IASBの改訂公開草案と同時期に公開草案を公表する予定である。