国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
業種別IFRS解説

石油鉱業におけるIFRS
-採掘産業における、シェールガスを含む非在来型資源の会計処理-

2013.04
石油業研究会
公認会計士 諸貫健太郎

石油鉱業におけるIFRS
-採掘産業における、シェールガスを含む非在来型資源の会計処理-
(PDF:561KB)

I はじめに

近年の原油価格の高騰、東日本大震災に起因したエネルギー政策の見直しの影響により、多くのエネルギー関連企業が積極的に非在来型資源に対して投資を行っています。国際会計基準(IFRS)を適用した場合、上流部門(<図1>参照)における非在来型資源の会計処理はどのような取り扱いになるでしょうか。本稿では、非在来型資源について簡単に説明した上で、上流部門のうち、探鉱および評価段階、開発段階におけるIFRS上の会計処理の概要について、在来型資源と比較しながら説明します。なお、文中の意見に係る部分は筆者の私見であることをお断りします。

II 非在来型資源の特徴

1. 非在来型資源とは

一般に、シェールガス・シェールオイル・コールベットメタン・オイルサンドに含まれる超重質油(ビチューメン)などは非在来型資源と呼ばれています。当該資源は、流体の流動性が劣る岩石に貯留、または吸着した状態にあるため、在来型の石油ガス田で行われている坑井からの自噴(自然に地上に湧き出てくる)とは異なる採取方法を採用しています。
すなわち、流動性が劣るため、在来型石油ガスとは違った手法を用いて採取する資源が非在来型資源ということになります。

2. 非在来型資源開発の方法

非在来型資源の探鉱および評価、開発手法はさまざまですが、ここでは坑井からオイルサンドに含まれるビチューメンを回収する手法の一つであるスチーム補助重力排油法(SAGD法)とシェールガスの探鉱および評価、開発手法について解説します。

<図1> 石油鉱業における上流部門の活動の概要
図1 石油鉱業における上流部門の活動の概要
<図2>
図2
出典:石油資源開発(株)提供をもとに筆者一部加工

(1) SAGD法

SAGD法は、油層内を流動しないビチューメンに流動性を持たせるため、2本の水平井を上下に一定の間隔をおいて掘削し、上位の水平井には高温高圧の水蒸気を圧入し、下位の水平井で蒸気による加熱で流動性を得たビチューメンを受け止めて連続的に採取する手法です(<図2>参照)。
SAGD法により商業生産を行うためには、十分な厚さのオイルサンド層が広範囲に広がっているかを確認する必要があるため、鉱区全体に地震探査を行い、有望な場所ごとに試掘井・評価井を掘削し、層厚を評価していきます。

(2) シェールガスの探鉱および評価、開発活動

シェールガスの探鉱および評価、開発活動の特徴として、微細な孔隙に閉じ込められているガスを採取するため、シェール層に沿って水平井を掘削し、孤立した孔隙をつなげるために人工的な割れ目を作り出すフラクチャリングという技術を採用していることが挙げられます。また、割れ目が形成される時に出る地震波を解析し、フラクチャリングネットワークを把握するマイクロサイスミックと呼ばれるモニタリング技術を駆使した評価活動を行っています。
また、同鉱区あるいは近隣鉱区における在来型資源の探鉱および評価活動を通じてすでに非在来型資源の存在が確認されている場合が多いという特徴が挙げられ、探鉱成熟度の高い地域(特に北米)では、資源の存在を前提に探鉱および評価、開発活動を行うケースもあります。

III 非在来型資源の会計処理の特徴

1. 石油鉱業のIFRS適用における一般的な特徴

石油鉱業の探鉱および評価段階、開発段階における会計処理を定めるIFRS上の基準は、IFRS第6号(探鉱および評価段階)、IAS第16号、第38号(ともに開発段階)などですが、IFRSは原則主義を採用しており、具体的な会計処理の方法について明確な定めはありません。特にIFRS第6号は全部で27項目のみです。
従って、IFRSを適用する企業は、米国会計基準(US GAAP)のASC932 Extractive activities(採掘活動)(成文化前:FAS第19号)などの定めを参照しながら各社のプロジェクトの実態を勘案して、会計方針および会計処理を決定している場合が多いと考えられます。

2. 在来型資源と非在来型資源の会計方針の統一

非在来型資源の探鉱および評価段階、開発段階における代表的な会計上の特徴を、幾つか挙げます。
まず、論点になるのが在来型、非在来型資源の探鉱および評価、開発手法が異なるという特徴がある中で、企業集団内の複数のプロジェクトの会計方針を統一すべきか、という点です(IFRS第10号 19項)。
この点については、在来型、非在来型資源は共に石油ガスに関する探鉱および評価、開発に関する取引であることから「類似の状況での同様の取引および事象」であり、基本的には同一の会計方針をとる必要があると考えられます。
ただし、非在来型資源の特徴から、探鉱および評価段階、開発段階のプロセスが在来型資源と異なるため、後述のように会計方針の適用方法に違いが生じることは考えられます。

3. 探鉱および評価段階における会計単位

次に、石油鉱業の会計処理を行うに当たり、主要な論点の一つである会計単位をどのように決定するか、という点についてです。探鉱および評価段階において商業的に見合う量の石油またはガスが存在しない空井戸の会計処理を例に、会計方針の適用方法にどのような違いが生じる可能性があるかを説明します。
在来型資源の場合、空井戸と判断する単位は、坑井1本ごととすることも考えられます。一方で、非在来型資源の場合、SAGD法を例にすると、オイルサンドに含まれるビチューメンの探鉱および評価の場合、商業的に見合うオイルサンド層の層厚が十分、かつ、広範囲に分布しているかどうかは、複数の垂直の評価井を掘削して判断しています。
このような違いがあることから、探鉱および評価段階において商業生産が見込めない坑井については費用処理をするという会計方針(例えばサクセスフルエフォート法)を採用したとしても、在来型資源では坑井1本ごとを判断単位とし、オイルサンドでは複数の坑井を判断単位とする、というように会計方針の適用方法(会計単位の捉え方)が異なる可能性があります。
なお、会計単位の捉え方の違いは、減価償却単位、生産高比例法を採用する場合に分母として利用すべき埋蔵量、減損の判定を行う際の資金生成単位などにも影響を与えます。

4. 探鉱および評価活動から開発活動への移行

IFRS第6号は鉱物資源の探査および評価段階に限定して適用され、鉱物資源の採掘の技術的可能性と経済的実行可能性が立証可能となった場合には、探査および評価資産からの再分類を行わなければならないと定められています(IFRS第6号 17項)。
在来型資源の場合、陸上施設も大規模投資になり、商業採算性を確保するためには鉱区全体で最終投資意思決定を行い、開発へ移行するケースが多いと考えられます。一方で、非在来型資源の場合、探鉱成熟度が高い地域のシェールガスやシェールオイルについては、評価井を掘削し、十分な油ガスの存在が確認できれば、最終投資意思決定を行わずにそのまま坑井基地単位ごとに生産井(水平井)を数本掘削して生産へ移行してしまう場合もあり、在来型資源に比べ、会計上は「探査および評価資産からの再分類」の判断が難しいといわれています。
このため、技術的可能性と経済的実行可能性が実証された段階が在来型資源と非在来型資源で異なる可能性があります。

5. 探鉱および評価活動で発生する支出

在来型資源の探鉱および評価活動の場合、試掘権を取得後、地球物理学的調査を行い、鉱区内の有望な場所に試掘を行うケースが多いと思います。
一方で、探鉱成熟度の高い地域では在来型資源の探鉱および評価活動を通じ、非在来型資源の存在がすでに確認されているため、地球物理学的な調査に関する支出が、探鉱および評価段階では、ほとんど発生しない場合があります。

6. 留意事項

非在来型資源の会計処理を行うに当たり、次の点にも留意する必要があります。

  • 非在来型資源の種類ごとに、自社が実施しているプロジェクトがどのような技術を使い、どのようなコンセプトで事業を行っているかを技術スタッフと十分協議を行う、もしくはオペレーターから十分な情報を入手する。
  • 実態を勘案した会計処理が適用されることから、会計処理方法の継続性が重視されるため、企業は現在の状況のみならず将来の事業計画も考慮しながら選択すべき会計処理方法を決定する。
  • 各社の採用しようとする会計処理の妥当性について、今まで以上に早い段階から監査人と打ち合わせを行う。

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