国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

IASBがIFRS第9号の改訂を公表

2017.10.30
重要ポイント
  • IASBは、負の補償を伴う期限前償還要素を有する負債性金融商品を償却原価又はその他の包括利益を通じて公正価値で測定することができるようにIFRS第9号を改訂した。
  • 本改訂は、2019年1月1日以後開始する年次報告期間から適用されるが、早期適用も認められる。
  • また、結論の根拠において、IFRS第9号では、認識の中止を伴わない金融負債の条件変更から生じる利得及び損失は、純損益に認識されることが明確化された。

はじめに

国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2017年10月12日にIFRS第9号「金融商品」の改訂(以下、本改訂)を公表した。本改訂により、契約が早期解約された場合に合理的な補償を契約当事者が支払う又は受け取ることを容認もしくは要求する期限前償還特性を有する(したがって資産の保有者の観点からは「負の補償」が存在しうる)金融資産を、償却原価又はその他の包括利益を通じて公正価値で測定することが認められることとなった。

背景

負債性金融商品は、IFRS第9号に従い、契約上のキャッシュ・フローが「元本及び元本残高に対する利息」のみで構成され(SPPI要件)、かつ当該金融商品がその分類上適切なビジネス・モデルに沿って保有されている場合、償却原価又はその他の包括利益を通じて公正価値で測定することができる。

2014年に公表されたIFRS第9号では、契約の早期解約を容認又は要求する契約条件は、期限前償還金額が実質的に元本及び利息の未払金額(そこには早期解約に対する合理的な追加の補償も含まれうる)を表す場合にのみ、SPPI要件を満たすことになると定めている。このことは、SPPI要件を満たすには、補償又は期限前償還に係るペナルティは、オプションを行使する当事者がもう一方の当事者に支払うものでなければならず、それ以外は補償には該当しないと、通常、解釈されていた。

したがって、関連する基準金利の変動に関する補償を含む金額で、借手又は貸手のいずれかがローンを期限前償還することを容認又は要求する契約条件を有する金融商品は、SPPI要件を充足しなかったと考えられる。それは、貸手が借手に補償するということになりうるためである(すなわち「負の補償」)。例えば、現在の市場金利が負債性金融商品の実効金利より高い場合、借手の返済額は元本と利息の未払金額より小さいものになってしまう。

そのような金融商品について照会を受けた際に、IASBは以下に留意した。

  • 負の補償を行う期限前償還特性を有する金融商品の契約条件は、他の期限前償還特性を有する金融商品と異なるキャッシュ・フローを生じさせるわけではない。
  • そのような金融商品に実効金利法を適用することは可能である。
  • そのような金融商品に関する有用な情報を財務諸表の利用者に提供するうえで、償却原価は適切な測定基礎である。

そのため、IASBは、負の補償特性を有する金融商品がSPPI要件を満たすことになるようにIFRS第9号を改訂した。

改訂の内容

本改訂で、ある金融資産がSPPI要件を充足するか否かを判断するうえでは、契約の早期解約につながった事象や状況、及びいずれの当事者が早期解約に対する合理的な補償を支払う又は受け取るかは関連がないことが明確にされた。

本改訂の結論の根拠では、早期解約は、契約条件から生じることもあれば、契約の当事者の支配が及ばない事由(契約の早期解約につながる法律や規制の変更など)を背景に生じ得ることが明確にされている。

IASBは、公開草案において、負の補償特性に関してSPPI要件を満たすために必要となるもう1つの適格要件を提案していた。その要件とは、当該金融商品の当初認識時に、負の補償を伴う期限前償還特性の公正価値が僅少であるというものであったが、この要件は最終的な改訂には含まれていない。

また、IASBは、結論の根拠において、現時点の公正価値で期限前償還が可能な金融商品や、関連するヘッジ手段を終了させるためのコストの公正価値を含む金額で期限前償還が可能な金融商品も存在すると指摘している。IASBは、そのような特性がSPPI要件を満たすケースも存在しうると認めている。例として、期限前償還金額の計算が、元本及び利息の未払金額を関連する基準金利の変動の影響額を反映するように調整した金額に近似させることを意図しているケースが挙げられている。しかし、IASBはまた、常にそうなる訳ではないとも述べている。したがって、そのような金融商品について、SPPI要件を満たすと一律に判断するのではなく、個々のケースごとに判断することが求められる。

弊社のコメント

本改訂は、期限前償還金額が、元本及び利息の未払金額を関連する基準金利の変動の影響を反映するように調整した金額に近似する場合に適用されるということがその意図にある。つまり、現時点の公正価値もしくは関連するヘッジ手段を終了するためのコストの公正価値を含む金額での期限前償還は、通常、SPPI要件を満たすことになる(ただし、信用リスクや流動性の影響など、公正価値を変動させるその他の要素が小さい場合のみ)。

スワップ当事者の信用リスクを最小限に抑えるために、担保設定されている「プレーンバニラ」の金利スワップを終了するコストは、この要件を満たすことが多いと考えられる。

発効日及び経過措置

本改訂は、2019年1月1日以後開始する年次報告期間から強制適用されるが、早期適用は認められる。なお、本改訂は遡及適用が求められる。

本改訂を、IFRS第9号の他の規定が強制適用される2018年ではなく、2019年に適用する場合にのみ、一定の経過措置を用いることができる。

  • 本改訂の結果、会計上のミスマッチがもはや存在しなくなる場合、企業は公正価値オプションの適用を取り消さなければならず、一方で新たな会計上のミスマッチが生じることになる場合、金融資産又は金融負債に対し、新たに公正価値オプションを適用することができる。
  • 過去の期間の修正再表示は求められないが、後知恵を用いなくとも可能な場合にのみ、修正再表示は認められる。
  • 本改訂を適用した影響及び公正価値オプション適用の変更の影響を説明する追加の開示が必要となる。

認識の中止を伴わない金融負債の条件変更又は交換

本改訂の結論の根拠において、認識の中止を伴わない条件変更(又は交換)があった場合の金融負債の償却原価の調整に関するIFRS第9号の規定は、認識の中止を伴わない金融資産の条件変更に適用される規定と一貫している点も明確にされている。つまり、当初の実効金利で契約上のキャッシュ・フローの変動を割り引くことにより計算される、認識の中止を伴わない金融負債の条件変更から生じる利得又は損失は、即座に純損益に認識される。

このコメントは本改訂の結論の根拠に盛り込まれているが、これは、IFRS第9号には、金融負債の条件変更及び交換を会計処理するための適切な基準が既に定められており、この点に関しての正式な改訂は必要ないとIASBが判断したためである。

弊社のコメント

IASBは、この明確化はIFRS第9号の適用に関連するものであると特に述べている。したがって、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」における負債の条件変更の会計処理に適用すべきかは明らかでない。

したがって、IAS第39号においてこの会計処理を行っていない企業は、移行時に会計処理を変更することになろう。特定の免除措置が定められていないため、この変更は遡及適用する必要があると考えられる。


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