国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

開示イニシアティブ-開示の原則

2017.05.11
重要ポイント
  • 「開示イニシアティブ」は、リサーチ・プロジェクトと適用プロジェクトから構成されており、IFRS財務諸表における開示の有効性の改善を取り扱っている。
  • IASBは、「開示の課題」及び当該課題への対処方法に関する予備的見解についてフィードバックを収集することを目的として、DPを公表した。
  • DPは複数の領域における開示の原則を定めている。
  • DPの募集期限は、2017年10月2日である。

概要

国際会計基準審議会(以下、IASB)は2017年3月31日に、ディスカッション・ペーパー「開示イニシアティブ-開示の原則」(以下、DP)を公表した。「開示イニシアティブ」は4つのプロジェクトに区分されており、「開示の原則」は、その中の1つである。DPは、IASBが識別した開示の課題及び当該課題に対してどのように対処すべきかに関する予備的見解について、フィードバックを求めている。

開示イニシアティブ

IASBは、財務報告に関するコミュニケーションを向上させるための方法を検討しており、「財務報告に関するコミュニケーションの改善」を2017年から2021年におけるアジェンダの中心テーマに位置付けている。「開示イニシアティブ」は、IFRS財務諸表における開示の有効性の改善方法を取り扱うことを目的としている。「開示の原則」以外の開示に関する取り組みは、以下のとおりである。

  • 「重要性」-IASBは、重要性の定義及び適用に関する明確化の検討を進めている。
  • 「重要性に関するプラクティス・ステートメント」-IASBは2015年に、重要性に関するプラクティス・ステートメントの公開草案を公表した。最終化されたプラクティス・ステートメントでは、重要性の一般的な特徴が記述され、財務諸表の表示及び開示に係る重要性の判断に関するガイダンスが提供される予定であり、数カ月以内に公表されることが見込まれている。
  • 「基準書レベルの開示レビュー」-IASBは、新しい基準及び基準の改訂における開示規定を定める場合に使用する指針の開発を検討している。現行の基準の開示規定は、開示の有効性を改善するために見直される可能性がある。

開示イニシアティブの一環として、すでに完了している開示の取り組みは以下のとおりである。

  • 「限定された範囲におけるIAS第1号「財務諸表の表示」の改訂」-IASBは2014年に、財務諸表の作成において企業の判断の一助となるようIAS第1号の改訂を行った。
  • 「IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」の改訂」-2016年1月に基準が改訂され、財務活動から生じる負債の変動の開示が求められる。

「開示イニシアティブ」に加えて、IASBは、「基本財務諸表」プロジェクトにおいて、基本財務諸表の構造及び内容に関して変更すべき領域を検討している。さらにIASBは、財務報告を改善するために、別途、独立したプロジェクトとして「財務報告に関する概念フレームワーク」の改訂に取り組んでおり、より完全かつ明確な最新の概念を提供することを目指している。

開示の課題

IASBは、2013年1月の「財務報告の開示に関するディスカッション・フォーラム」及び調査活動を通じて、財務諸表の開示に関する3つの主な懸念(開示の課題)を確認した。

  • すべての状況において提供されるべき関連性のある情報が十分ではない-不適切な投資又は貸付の意思決定につながる。
  • 関連性のない情報が開示されている-適切な情報を曖昧にし、理解可能性を低下させ、財務諸表の作成に不要なコストを生じさせる。
  • 提供される関連性のある情報が、必ずしも有効にコミュニケーションされていない-財務諸表の理解可能性を低下させる。

IASBは、財務諸表で開示すべき情報の判断ならびに最も有効な情報の構成及びコミュニケーションの方法の決定には困難を伴い、開示の課題の主な原因になっていると考えている。こうした困難さが生じる背景には、一部の企業や監査人、規制当局が、財務諸表を、財務諸表利用者とのコミュニケーションを促進するツールではなく、基本的にはコンプライアンス・ドキュメントとして捉えていることが考えられる。IFRSの開示規定は機械的に適用される場合があり、一部の企業では、開示規定をチェックリストとして使用する傾向にあるため、財務諸表利用者にとって目的適合性のある情報を決定するための判断を行っていない。

ディスカッション・ペーパー

DPは、開示の課題を識別し、理解を深め、新しい1組の開示原則の開発又は現行の開示の原則の明確化を行うことを目指している。DPは、IAS第1号の一般的な開示規定及び現行の概念フレームワークの改訂に関するプロジェクトで開発される概念に焦点を当てている。したがって、DPは財務諸表の利用者及び作成者の両方に関係している。

DPは、以下の領域における原則の開発を検討している。

(下の図をクリックすると拡大します)

当該領域における詳細な内容は以下のとおりである。

有効なコミュニケーションの原則

DPでは、企業が財務諸表の情報に関して有効なコミュニケーションを図るための7つの原則を識別している。提供される情報は、下記の原則から構成されることが求められる。

(下の図をクリックすると拡大します)

情報の開示場所の原則

DPは、一定の要件が満たされる場合において、IFRSの開示規定に従った必要な情報を、相互参照することにより財務諸表以外の場所(例:マネジメント・レポート)で提供することを認める原則の導入を提案している。

また、「IFRSに準拠しない情報」をIFRS財務諸表で開示することに関して、禁止又は制限されるべきかどうかについてフィードバックを求めている。IASBは、IFRSに準拠しない財務情報が財務諸表で開示される場合には、その旨及びその内容を明確に記載しなければならないことを提案している。

特定の開示の懸念に対処するための原則

【業績指標】

企業は、利息減価償却費控除前税引前利益(EBITDA)や調整後EBITDA(特別項目や非経常取引を除外したEBITDA)など、IFRSで定められていない業績指標を、財務諸表や財務諸表利用者との財務諸表以外でのコミュニケーション(例:プレスリリース、株主向けプレゼンテーションなど)において利用されるケースが増加している。一部の財務諸表利用者は、業績指標の表示を支持しており、事業がどのように管理されているかを把握するうえで有用であると述べている。一方で、業績指標は、財政状態及び経営成績について偏向した見方が表示され、判断を誤らせるおそれがあると懸念する者もいる。

DPでは、財務諸表利用者が示した懸念に応えるために、財務諸表で業績指標を開示する場合には、以下の要件を満たさなければならないことを提案している。

  • IFRSに準拠した情報よりも目立たせない
  • 最も直接比較可能なIFRSに準拠した測定値との調整を行う
  • 判断を誤らせることがないように明確な見出しを付し、説明する(測定値の目的適合性及び目的を示す)
  • 中立で誤謬なく、一定期間にわたり比較可能となるように首尾一貫して測定及び表示する
  • 比較情報を付随する

【会計方針】

現行の実務では、会計方針を種類ごとに区別することなく、注記の冒頭で長々と開示することが主流になっている。DPでは、3つの方針のカテゴリーを説明している。

  • カテゴリー1-重要な項目、取引や事象に関連し、かつ以下の特徴を有する会計方針
    • 過去の期間から変更することが要求されている、又は任意で変更している
    • IFRSで認められる複数の会計方針の中から選択されている
    • 適用すべきIFRSが存在しないためIAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って企業が策定している
    • 重要な判断又は仮定が求められる
  • カテゴリー2-重要な項目、取引や事象に関連するが、カテゴリー1に含まれない会計方針
  • カテゴリー3-財務諸表の作成の際に適用されるすべての会計方針のうち、カテゴリー1及び2に含まれない会計方針

DPでは、カテゴリー1及び2の会計方針の開示のみを求めることを提案している。ただし、目的適合性のある情報が曖昧にならない場合には、カテゴリー3の会計方針を開示することを認めている。さらに、DPでは、会計方針ならびに重要な判断及び仮定の開示場所に関する検討内容を示している。

開示の目的及び要求事項を改善するための原則

IASBは、一部の基準において開示目的が明確に定められていないため、企業が開示規定の目的を識別し、目的適合性のある情報の開示を決定することが困難になっていることを認めている。DPでは、状況に応じた開示を促す2つの代替的なアプローチを示している。

(1) 一元化された開示目的の開発
(2) すべての開示を対象とした単一の基準もしくは1組の基準の開発

これらのアプローチは相反するものではなく、両方が採用される可能性もある。

DPでは、上記(1)のアプローチに関して、現行の基準と同様に情報の種類に焦点を当てる方法と、企業の活動に焦点を当てる方法を提案している。上記(2)のアプローチは、IASBが開示規定を定める方法が大きく変更され、企業が開示規定を適用する際に重要な変化をもたらす可能性がある。

次のステップ

DPのコメント募集期限は2017年10月2日である。

弊社のコメント

EYは、開示の原則が十分な根拠に基づく活発な議論が行われるように、利害関係者の意見がコメント・レターを通じてIASBにフィードバックされることを望んでいる。今回のトピックの重要性を考えると、財務諸表の作成者及び利用者ならびに監査人や規制当局など関連するすべての当事者が、DPに関心を寄せることになるであろう。


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