国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

IASBが事業の定義及び以前より保有していた共同営業に対する持分の会計処理の明確化を提案

2016.07.20
重要ポイント
  • EDでは、以下の事項の明確化を提案している。
    • 事業の定義の適用
    • 事業の定義を満たす共同営業に対する支配又は共同支配を企業が獲得した場合における、以前より保有していた持分の会計処理
  • コメント募集期限は2016年10月31日である。

概要

国際会計基準審議会(IASB)は、2016年6月28日に公開草案「事業の定義及び以前より保有していた持分の会計処理」(IFRS第3号及びIFRS第11号の改訂案)(ED)を公表した。改訂案の目的は以下のとおりである。

  • 事業の定義の適用を明確化すること
  • 事業の定義を満たす共同営業に対する支配又は共同支配を企業が獲得した場合における、以前より保有していた共同営業の資産及び負債に対する持分の会計処理に関して、実務上のばらつきを解消すること

事業の定義の明確化

IASBは、IFRS第3号「企業結合」の適用後レビュー(PIR)で利害関係者が示した懸念を受けて、IFRS第3号の事業の定義の適用方法を明確化する改訂を提案した。当該改訂案では、事業の取得と資産グループの取得を区別する際に役立つ追加のガイダンスを提供している。また、米国財務会計基準審議会(FASB)も、事業の定義の適用の困難さに関して、PIRで受領した同様のフィードバックに対処するための提案1を公表している。IASB及びFASBは、実質的にコンバージェンスされているIASBのIFRS第3号とFASBの会計基準(ASC)第805号における事業の定義の明確化について共同審議を行った。IASBの改訂案の内容は以下のとおりである。

1: 2015年11月に公表された、会計基準アップデート案「事業の定義の明確化」

取得した資産の公正価値が単一の資産に集約されるか

EDでは、統合された一連の活動及び資産が事業を構成するかどうかに関する評価を単純化するために、スクリーニング・テストの実施を提案している。改訂案によれば、取得した総資産の公正価値のほとんどすべてが、識別可能な単一の資産又は同様の資産グループに集約される場合、統合された一連の活動及び資産は事業には該当しない。当該スクリーニング・テストは、支払対価の合計や純資産ではなく、取得した総資産の公正価値に基づいて実施される。取得した単一の資産又は同様の資産グループの重要性は、資金の調達方法を考慮せずに評価される。

スクリーニング・テストにより、統合された一連の活動及び資産が事業に該当しないと判断された場合には、企業は事業の定義に関する他のガイダンスを評価する必要はない。

事業に該当するための最低限の要件

IASBは、事業に該当するためには、最低限、アウトプットの創出に寄与する能力を有したインプット及び実態を伴うプロセスが取得対象に含まれていなければならない、と判断した。しかしながら、アウトプットの創出に必要となるすべてのインプット及びプロセスを取得することが、統合された一連の活動及び資産が事業に該当するための要件となるわけではない。

取得したプロセスが実態を伴うかどうかの評価

EDは、実態を伴うプロセスを取得したかどうかに関する企業の判断を容易にするためのガイダンスを設けている。改訂案では、統合された一連の活動及び資産の取得が、アウトプットを有しているかどうかによって異なる要件を定めている。取得日時点で、当該活動及び資産がアウトプットを有していない場合は、取得したインプットが、アウトプットの創出に不可欠なプロセスを実行するために組織化された労働力、及びアウトプットの開発が意図された他の1つ以上のインプットを含んでいる場合にのみ、事業の定義が満たされる。一方、取得日時点で、当該活動及び資産がアウトプットを有している場合は、特殊又は希な、あるいは代替困難なプロセス(又はプロセス・グループ)を含んだ取得であれば、組織化された労働力の存在は求められない。

足りない要素を取り替える市場参加者の能力

IASBは、足りない要素を取得した一連の活動及び資産と組み合わせることによって、アウトプットを継続して生成する市場参加者の能力は、もはや取得が企業結合に該当するかどうかを評価する際の検討事項ではないと判断した。IASBは、市場参加者が取替可能であることではなく、取得したものに基づいて評価すべきであると考えている。

アウトプットの定義の改訂

EDでは、顧客に提供される財及びサービスに焦点をあてることで、アウトプットの定義の範囲を狭めることを提案をしている。提案されている定義では、投資家、その他の所有者、構成員又は参加者に対して、コスト低減やその他の経済的便益という形で、直接的に提供されるリターンを除外している。IASBは、現行のアウトプットの定義が、資産と事業を区別するのに十分でないと考えている。例えば、取得した多くの資産(例:工場施設における新たな機械装置の購入など)は、活動及びプロセスの取得とは関係なく、コスト低減をもたらす場合がある。

その他の明確化

EDでは、取得した契約は実態を伴うプロセスではないことも明確にしている。しかしながら、取得された委託契約の中には、実態を伴うプロセスを実行するために組織化された労働力へのアクセスを提供する場合がある。

また、EDでは、のれんの存在は、事業を取得したことの指標になる場合があるとしている。しかしながら、重要でない金額ののれんの存在をもって、取得された資産(及び活動)が直ちに事業とみなされるわけではない。

IASBは、事業に該当するかどうかの解釈を容易にするために、IFRS第3号に設例を設けることを提案している。

以前より保有していた持分の会計処理

IASBは、事業の定義を満たす共同営業の支配又は共同支配を企業が獲得した場合における会計処理に関して、実務上のばらつきが存在することに留意した。EDでは、実務上のばらつきを解消するために、IFRS第3号及びIFRS第11号を改訂し、以下の規定を設けることを提案している。

  • 既に共同営業者である、又は共同営業の当事者である企業が、共同営業に対する支配を獲得した場合、以前より保有していた共同営業の資産及び負債に対する持分は、公正価値で再測定を行う。この結論に至る過程において、IASBは、共同営業である事業の支配を獲得することは、段階的に達成される企業結合に該当し、以前より保有していた持分の再測定は、IFRS第3号の公正価値測定に関する要求事項と整合することに留意した。
  • 既に共同営業者である企業が、共同営業に対する持分を取得したが、共同支配が維持される場合、以前より保有していた共同営業の資産及び負債に対する持分の再測定は行わない。また、既に共同営業の当事者である企業が、共同営業に対する持分を取得し、共同支配を獲得する場合も、以前より保有していた持分の再測定は行わない。この結論に至る過程において、IASBは、共同営業の資産及び負債に対する持分の性質は変化しているが、当該取引はグループの境界性や以前より保有していた共同営業に対する持分の会計処理を変化させるものではないことに留意した。

経過措置

EDでは、IFRS第3号の改訂案を、取得日が本改訂の発効日以降開始する最初の年次報告期間の期首以降となる企業結合から適用することが提案されている。

IFRS第11号の改訂案は、共同支配の獲得が本改訂の発効日以降開始する最初の年次報告期間の期首以降となる取引から適用することが提案されている。

発効日は決定されていないが、早期適用は認められる。

次のステップ

コメント募集期限は2016年10月31日である。弊法人は、IASBへ改訂案に対するフィードバックを行うことを推奨する。


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