国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

「IFRS適用レポート」の公表と日本の会計基準の今後

2015.04.16
重要ポイント
  • 金融庁は、4月15日に開催された企業会計審議会会計部会(第2回)において同日付で「IFRS適用レポート」を公表した旨報告するとともに、ASBJよりIFRS第15号を踏まえた収益認識基準の開発に着手する旨報告を受けた。
  • 「IFRS適用レポート」は、IFRS任意適用・適用予定企業にヒアリング、アンケートを行い、IFRS移行に際しての課題やメリット等をまとめたものである。
  • 任意適用の理由及びメリットとして、「経営管理の高度化」、「同業他社との比較可能性の向上」、「海外投資家への説明の容易さ」などが挙げられていた。
  • 企業会計審議会に先立ち3月20日に開催された企業会計基準委員会(ASBJ)にて、IFRS第15号を踏まえ、包括的な収益認識基準の開発に向けた検討に着手することが決定された。

概要

金融庁は、4月15日に企業会計審議会 会計部会(第2回)を開催し、IFRSの任意適用拡大推進に向けての一施策として、「IFRS適用レポート」を同日付で公表した旨を報告した。「IFRS適用レポート」の内容については、IFRS移行を検討する企業にとって参考になる内容であるといった好意的な評価が大勢を占めた。

また、企業会計基準委員会(ASBJ)より、IFRSを踏まえた我が国における会計基準の開発・改訂に向けた検討状況の報告がなされ、まずはIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を踏まえ、包括的な収益認識基準の開発に着手することについて報告がなされた。包括的な収益認識基準を開発する方向性については、ほとんどの委員が賛成する一方、日本の会計実務を踏まえたうえで、各業種の実態に整合する会計基準を検討する必要があるとの意見も複数聞かれた。また、連結基準など、収益認識基準以外の会計基準についても早期にコンバージェンスの検討を希望する意見も見られた。

「IFRS適用レポート」公表について

「IFRS適用レポート」は、2014年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2014」の中で、「IFRSの任意適用企業の拡大促進」が明記されたことに伴うものである。「『日本再興戦略』改訂2014」においては、IFRSの任意適用企業に対する実態調査やヒアリングを通じて、移行時の課題や移行のメリット等を調査し、今後IFRSへの移行を検討している企業の参考にするため、『IFRS適用レポート(仮称)』として公表することが提言されていた。本レポートは、当該提言に基づき、IFRSの移行に際しての課題やメリットなどにつき、IFRS任意適用企業に対するアンケートやヒアリングを実施し、その回答を取りまとめたものである。

レポートの内容については、今後のIFRS適用企業にとっての参考になるとの意見が大勢であり、今後も同レポートのアップデートを期待する声もあった。メリットとして経営管理への寄与を挙げた企業が多い点は注目を集めた。一方で課題として導入コストの問題や監査人対応などが挙げられていた。なお、同レポートは、財務諸表作成企業の声をまとめたものであり、財務諸表利用者や監査人の意見は反映されていない。

「IFRS適用レポート」の内容

調査の方法及び調査項目

本レポートの作成に当たり、金融庁は2015年2月28日までにIFRSを任意適用している企業および、IFRSの任意適用を予定している旨を公表した企業、計69社に対して質問票を送付し、65社から回答を得ている。また、そのうち28社に対しては、直接ヒアリング調査が行われている。

主な質問項目と、それに対する回答を要約すると以下のとおりである。

任意適用を決定した理由又は移行前に想定していた主なメリット

任意適用を決定した理由又は移行前に想定していたメリットとしては、「海外子会社が多いことから、経営管理に役立つ」との回答が65社中29社と最も多かった。

また、同業他社との比較可能性の向上(15社)及び、海外投資家への説明の容易さ(6社)をメリットにあげる企業も多かった。

移行プロセスと社内体制

IFRSへの移行プロセスに関しては、具体的に移行を提案した主体として、CEOやCFOが直接関与した、「トップダウン方式」と、経理部門中心に提案がなされた「ボトムアップ方式」とに回答が分かれた。いずれにしても移行プロセスにおいて経営トップや経理部門だけでなく、事業部門を含めた全社的な取り組みが重要であるというのが各企業の共通した意見であった。

移行コスト及び移行期間

移行コスト及び移行期間については、企業の規模やシステム構築方針、IFRSの導入目的によっても様々であるが、各社の回答の集計を見る限り、売上規模と移行コスト及び移行期間との間に相関関係が見られた。

また、移行コスト及び移行期間については、システム対応に要する期間によっても影響され、IFRSの導入を契機として経営管理の高度化を図ろうとする企業が、システムの全面改修を行うようなケースでは、移行コストは増大し、移行期間は長期化する傾向にあった。

IFRS移行時の課題

IFRS移行時の課題として、「特定の会計基準への対応」(43社)と「人材の育成及び確保」(9社)を挙げる企業が多かった。

特定の会計基準への対応として挙げられた論点には、有形固定資産の減価償却方法の選択、耐用年数の見積り、収益認識、社内開発費の資産化、資産の減損、金融商品の公正価値測定がある。

監査人の対応に関しては、かつてのIFRS移行企業が少ない状況では、事例が少ないことを理由に監査法人の解釈も形式的になりがちであったが、このような課題はIFRSの導入事例が増加したことで、改善しつつあるという意見があった。

人材の育成及び確保に関しては、IFRSは原則主義であることから、新しい事象に直面した場合に、会計基準を自ら論理的に考え、あるべき会計処理を組み立てて監査人とディスカッションできるような人材が求められるという意見があった。

移行による実際のメリット・デメリット

IFRS移行による実際のメリットについて、多くの企業が移行前に想定していた通りのメリットを享受していると回答していた。また、デメリットについては、実務負担やコストの増加を挙げる企業が多かったが、実務負担の増加については想定したほどではなかったという意見も見られた。移行前に想定していなかったデメリットについては、ほとんどの企業が「ない」と回答していた。

IFRSの任意適用を検討している企業へのアドバイス

任意適用のメリットについて、IFRSの適用は、「目的」ではなく、経営の質を高めるための「手段」として考えるべきであるというコメントが見られた。具体的には、IFRSの適用を機に、グローバルの共通基盤として同じ「モノサシ」で意思決定や業績評価を行うことで、より高度な経営管理が可能になるとの意見があった。

IFRSの移行プロセスについては、IFRS適用企業が増加し、国内にも導入ノウハウが蓄積されている状況のため、先行適用企業や監査法人、同業他社と連携することで効率的な適用が可能になるとの意見が見られた。

ASBJによる今後の日本基準改訂の方向

2007年8月の「東京合意」を受けて、コンバージェンスする会計基準として一部の基準が識別されていたが、ASBJは、3月20日開催の会議において、東京合意後にIASBが公表した主要な会計基準についての日本基準の開発・改訂の必要性を検討した。

検討の結果、特にIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」については、適用対象となる取引が広範におよび、また企業の財務情報に重要な影響を与える可能性が高いという性質や、世界的なコンバージェンスが進む中で、企業会計審議会会計部会でも我が国における収益認識基準の高品質化を求められたことに鑑み、コンバージェンスの優先度が高いと判断された。収益認識専門委員会を再開したうえで、IFRS第15号を踏まえた収益認識基準の開発に向けた検討に着手すると決定された。

一方で、IFRS第9号「金融商品」、IFRS第10号「連結財務諸表」などについては、欧州などの先行適用国での状況を見てからコンバージェンスに向けての検討をすることが報告された。

これらの重要な会計基準については、ASBJの検討にあたっても相当の時間とリソースが必要になると考えられるため、日本基準のIFRSとのコンバージェンスには少なくとも数年は要するものと思われる。


情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?