新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

IASBによるIFRS第9号の適用日の延期と自己の信用に関する規定の適用前倒し

2013.08.05
重要ポイント
  • IASBは、IFRS第9号の完成版の公表日が明確になるまで、IFRS第9号の強制適用日を延期することを暫定的に決定した。
  • IASBは、自己の信用(負債の信用リスク)に関する規定については、完成版のIFRS第9号が公表される前に早期適用できるようにすることを暫定的に決定した。

概要

国際会計基準審議会(IASB)は、2013年7月のIASB審議会で、以下について暫定的に決定した。

  • (1)IFRS第9号の強制適用日を延期し、減損、分類及び測定に関する規定が最終基準化されるまで未定とする。IFRS第9号を早期適用することは引き続き可能である。
  • (2)IFRS第9号に含まれる「自己の信用」に関する規定については、他の規定から切り離して、その適用を前倒しする。そのため、IASBはIFRS第9号の発効日に関する規定をできるかぎり早急に改訂する予定である。この改訂が行われた場合、IFRS第9号未適用企業は、金融資産に関するIFRS第9号の規定を早期適用することなく、金融負債に係る「自己の信用」に関する規定のみを早期適用することができるようになる。

これまでの共同審議において、IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、両審議会)は、スタッフから、分類及び測定に関する規定に係る今後の共同再審議に関する計画概要の説明を受けているが、その時点では、いかなる決定も行われなかった。

本稿では、IASB審議会での重要な決定事項の概要を説明するとともに、そのような決定に至った議論の背景について解説する。

強制適用日

IASBは、IFRS第9号の強制適用日を延期する方向性をできるかぎり早急に確認することを強く促す一貫したフィードバックを多くの関係者から受領してきた。これは、提案されている新しい減損規定を適用するには、特に準備期間が必要になるためである。

IASBはこのフィードバックに同意した。しかし、具体的な強制適用日については、減損及び分類・測定に関する再審議が完了した後でなければ決定することができない点に留意し、現在の強制適用日を2015年1月1日から延期する方向性は確認したものの、新たな発効日については特定しなかった。なお、IASBは、完成版IFRS第9号の公表日が明確になる前においても、企業が各報告期間の開始時点でIFRS第9号を適用することを認める予定である。

この「期日未定」の延期は、ヘッジ会計の章を織り込んだ2013年版IFRS第9号1に反映され、また、現行のIFRS第9号2も同様に改訂される。なお、2013年版IFRS第9号の結論の根拠では、強制適用日について、IFRS第9号の完了していないフェーズ(マクロヘッジに関する会計処理を除く)が最終基準化された時点で決定すると説明され、併せて、完成版のIFRS第9号の公表から十分な準備期間が提供されることも明記される予定である。ただし、適切な準備期間がどの程度になるかは、今後決定される予定である。

弊社のコメント

IASBの減損プロジェクトの進捗状況を踏まえると、最終的な強制適用日が2016年より前になることはないと考えている。

IFRS第9号の「自己の信用」に関する規定の適用前倒し-完成版IFRS第9号の公表前に適用可能に

2010年版のIFRS第9号3は、金融負債に公正価値オプションを適用し、純損益を通じて公正価値で測定(FVPL)に指定する場合、発行体の自己の信用リスクの変動に起因する負債の公正価値の変動は、その他の包括利益(OCI)4に計上しなければならないと定めている。また、IFRS第9号は、当該OCIに表示された金額は、事後的に純損益に再分類(リサイクル)されないと定めている。

IASBは、自己の信用に関する規定をIFRS第9号の他の規定から切り離して適用できるようにすることにより、企業による自己の信用に関する規定の早期適用を促すことを決定した。IASBは、企業による当該規定の前倒しの適用は、IFRS第9号(2010)を未適用の企業がIFRS第9号(2013)の他の規定については早期適用することなく、自己の信用に関する規定だけを早期適用することができるようにIFRS第9号(2013)の発効日に関する規定を修正することによって行う予定である。なおIFRS第9号(2010)の発効日に関する規定についても同様の改訂が行われる予定である。現在のIFRS第9号(2010)では、同基準書の未適用企業が、これを早期適用する場合、金融資産に関する規定を含む他の規定についても同時に適用することが求められている。

IASBは、このアプローチを採用し、IFRS第9号を適用(あるいは、状況に応じて承認)したうえで、自己の信用に関する会計処理の発効日に関連する規定だけを有効にすることにより、自己の信用に関する会計規定のみを適用することができるようになると考えている。この措置により、IFRS第9号のすべての規定については適用準備ができていない国又は地域であっても、自己の信用に関する会計規定のみを適用することができるようになる。なお、IASBは自己の信用に関する会計処理の変更のみを適用することを認める予定であるため、国又は地域が、IFRS第9号の強制適用日より前に、このアプローチを採用したとしても、IASBによって公表されたIFRS第9号を適用していないことにはならない。

なお、IASBが、自己の信用に関する会計規定をIAS第39号「金融商品:認識及び測定」に盛り込むという代替的なアプローチについては、多くの関係者により支持されていたものの、追求すべきではないというスタッフの提言に同意している点は注目に値する。さらに、IASBは自己の信用に関する利得と損失を純損益にリサイクルすることを禁止する規定について、当面の間、再検討すべきでないとする提言にも同意している。

次のステップ

FASBとの共同審議において、両審議会のスタッフは、分類及び測定に関する今後の共同再審議に関する計画概要を説明した。この計画は、IASBの公開草案「分類及び測定:IFRS第9号5の限定的な改訂」、及びFASBの会計基準アップデート案「金融商品に関する会計処理、デリバティブ金融商品及びヘッジ活動に関する会計処理の改訂-金融商品(トピック825)、デリバティブ及びヘッジ(トピック815)6」に寄せられたフィードバックに基づいて策定された。

この計画には、両審議会の共同審議における出発点が異なることによる各々の提案範囲の相違が反映されている。したがって、論点の中には共同での再審議の対象になるものがある一方、各審議会単独での再審議の対象になるものもある。次ページの表は、この計画の概要を説明している。

2013年9月審議会の計画概要
契約上のキャッシュ・フローの特徴テスト ビジネスモデル・テスト
両審議会のスタッフは、両審議会に対して、契約上のキャッシュ・フローの特徴テストに関するさまざまな論点について明確化する意向の有無を質問する。契約上のキャッシュ・フローの特徴テストに関する論点には以下の項目が含まれる。
償却原価測定の目的、及び、元本および利息の支払いのみであるという条件の基礎になる基本原則
  • 「元本」及び「金利」の意味。これには「貨幣の時間価値」の意味も含まれる。
  • 元本および利息の支払いのみであるという条件の、以下を含む具体的な特性への適用:(a)「僅少」という特性(すなわち、契約上のキャッシュ・フローに「僅少な」影響しか及ぼさないという特性)、(b)偶発事象(発生可能性が低い事象を含む)、及び早期償還又は期限延長特性
両審議会のスタッフは、関係者から受領したフィードバックを踏まえ、両審議会に対して以下について検討する意向の有無を質問する。
  • 金融資産に関する3つの分類及び測定カテゴリーの維持
  • ビジネスモデルの目的及び関連する論点の明確化(たとえば、どのカテゴリーが残余となるか、及びビジネルモデルに関する分類結果は特定の状況において強制されるか、それとも企業による選択か)
  • 金融資産が管理されるビジネスモデルの決定に関する適用指針の拡充、及び一層の整合性確保の可能性
10月以降の審議会
契約上のキャッシュ・フローの特徴テスト ビジネスモデル・テスト
両審議会は、契約上のキャッシュ・フローの評価に関する、上記以外の論点に係るフィードバックについて検討することが求められる。 ビジネスモデル変更時の金融資産の再分類に関する、両審議会それぞれの提案における特定分野を再検討もしくは確認する意向の有無について
その他の論点
スタッフは両審議会に対して以下の点について確認する。

  • 公正価値オプション(FVO)に関するそれぞれの提案を確認するかどうか。また、両審議会は、両者の立場をさらに一致させる意向にあり、かつ、FVOが適用されるケースの変更を検討する意向があるか(あるいは、いずれか一つには該当するか)。
  • 共同再審議から生じた、追加的な相互に関連する論点について議論を行う。

IASBの分類及び測定プロジェクトの日程

スタッフは、共同論点の再審議及びIASB単独の再審議は、実質的に2013年末までには完了すると見込んでいる。

  1. IFRS第9号(2013)は今後数カ月以内に公表される予定である
  2. IFRS第9号(2010)及びIFRS第9号(2009)
  3. 5.7.7項から5.7.9項
  4. IFRS第9号(2010)は、負債の信用リスクの変化をOCIで表示することにより、会計上のミスマッチが発生又は増大する場合には、これを純損益に表示することを定めている。ただし、そのような状況が生じるのは稀であると考えられる。
  5. 2012年11月に公表
  6. 2013年5月に公表

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