新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

両審議会、収益認識に関する開示、経過措置及び発行日を再検討

2013.03.04
重要ポイント
  • 両審議会は、新しい収益認識基準は、2017年1月1日以降に開始する事業年度から適用されることに暫定的に同意した。
  • 企業は、新しい収益認識基準を遡及的に適用するか、または部分的に遡及適用する方法を選択することが認められる。
  • 両審議会は、契約資産及び契約負債、ならびに資産化契約コストの期首から期末への残高の調整に関して、表形式ではなく、説明文による開示を行うことを求めることを仮決定した。
  • 両審議会は、共同の再審議を実質的に完了しており、2013年6月末までには新しい収益認識基準を公表することを見込んでいる。

概要

国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、両審議会)は、収益認識基準案に関する共同の再審議をほぼ完了した。

両審議会は、2013年2月の共同審議で、収益認識基準の経過措置及び発効日に関し、暫定的な決定を行った。さらに両審議会は、収益の構成要素の分解、契約残高及び資産化された契約コストの調整表、残存履行義務の明細、期中財務諸表における開示規定など、2011年公開草案(ED)にて提案された開示に関連する諸論点についても取り扱った。

両審議会は新しい基準を2013年6月末までに公表する予定にしている。

暫定的決定

発効日、早期適用及び経過措置

両審議会は、提案された収益認識基準は2017年1月1日以降に開始する事業年度から適用されることを仮決定した。企業が新しい基準の適用に向けて十分な準備ができるよう、基準書の公表からその発効までの期間が比較的長く設定されている。

IASBは、既存のIFRS適用企業に関しては、早期適用は認められないということを暫定的に決定した。これはEDからの変更である。FASBは、新しい収益認識基準の早期適用については認められないとする従来からの決定を維持することを暫定的に再確認した。

新しい収益認識基準は、2017年1月1日以降に開始する事業年度から適用されることが暫定的に決定された。

EDでは、新しい収益認識基準を遡及適用することが提案されていた(実務上の一定の簡便的措置は定められていた)。両審議会は、EDで提案されていた遡及適用に加えて、以下に示されるような方法も認めることを暫定的に同意した。

  • 比較年度については、従来の収益認識規定(すなわちIAS第11号、IAS第18号ならびにそれに関連する解釈指針)を適用しなければならない。
  • 当初適用年度(報告年度)については、新基準を適用する。既存の契約については、当初適用日時点でいまだ取引が完結していないものに対してのみ、新しい収益認識基準を適用する
  • 新しい収益認識基準を適用することによる累積的な影響を、当初適用年度の期首利益剰余金の調整として会計処理する(すなわち、過年度は修正されない)
  • 当初適用年度において、以下の追加的な開示を行う
    • 新しい収益認識基準を適用することによる、各財務諸表項目に対する影響額
    • 新しい収益認識基準及び従来の収益認識基準との間で、報告される数値に重要な変更がある場合にはその説明
弊社のコメント

EYは、上場企業に関しては、最初に適用される年度の期中報告においても新しい収益認識基準が適用されなければならないということを、両審議会は意図していると考えている。たとえば、12月末に事業年度を終了する上場企業が半期報告を行っている場合、2017年6月期に関する半期報告についても新しい収益認識基準を適用しなければならない。

両審議会は、企業が移行のための情報を、経過期間を通じて蓄積していくことを望んでおり、そのため、経過期間は長めに設定されている。

開示―収益の構成要素の分解

EDにおいては、商品やサービスの種類、国や地域、顧客や契約の種類、移転の時期、契約期間又は販売ルートなど、EDにおいて「適切になり得る分類」として定められている区分に従い、収益の構成要素を表示することが提案されていた。こうした開示は、経済的要因が、収益の内容、金額、認識時点及び不確実性にどのような影響を及ぼすかを説明することを目的としていた。

両審議会は、EDにおいて提案されていたような、基準において定められた一定の分類を基礎に収益の構成要素を分解する方法を採用しないことにした。そうではなく、経営者及び市場参加者であれば収益をどのように分析するであろうかということを考慮したうえで、企業自身がどのレベルまで細分化した開示を行なうか決めねばならないとした。これは、財務諸表の作成者及び利用者が提起した懸念に対処した結果の決定である。両審議会は、企業がこうした開示情報を作成するときの一助となるように適用指針を収益認識基準に設けることを仮決定した。また、両審議会は、そのような収益の構成要素の分解表示とセグメント情報の開示がどのように関係しているかを、企業は説明しなければならないことを仮決定した。

開示―契約残高及び資産化された契約コストの調整表

両審議会は、契約資産及び契約負債の開示については、定量的及び定性的情報に基づく以下の情報を求めることにした。

  • 契約資産、契約負債及び営業債権の期首残高及び期末残高(他の箇所では開示されていない場合)
  • 契約負債の期首残高に含まれていた金額で、当期に収益として認識された金額
  • 企業が締結している契約や、通常の支払条件が、契約残高にどのように影響を与えるかの説明
  • 契約資産及び契約負債残高の重要な変動に関する定量的及び定性的な説明。重要な変動には以下の要因が含まれる。
    • 企業結合による契約残高の変動
    • 進捗度の測定の変更、取引価格の見積の変更または契約変更による収益(及び見合いの契約残高)の累積的なキャッチアップ調整
    • 契約資産の減損
    • 契約資産が売掛金に振替えられる、または契約負債に認識されていた項目について収益が認識されたことによる契約残高への重要な変動

両審議会はまた、過去の期において充足された履行義務に関して、当期において収益が認識された金額の開示を求めることにした(これは、取引価格の変更や収益の認識累計額の制限により生じ得る)。

両審議会は、契約を獲得する、また履行するための資産化されたコストの増減明細表を求めないことを仮決定した。その代わりに両審議会は、契約を獲得する、また履行するためのコストについて以下のような一定の定量的及び定性的情報の開示を求めることを暫定的に決定した。

  • 資産化された契約獲得コスト及び契約履行コストの期末残高。この情報は資産の主たるカテゴリーに基づいて開示される(例:契約獲得コスト、契約前に発生したコスト、セット・アップ・コスト)
  • 当期の償却額
  • 各会計期間において償却額を決定した方法

開示―残存する履行義務

EDは、残存する履行義務について、企業が定性的情報と定量的情報を開示することを提案していた。それに対する回答者のコメントを踏まえて、両審議会は、残存する履行義務の開示においては、契約の更新は含まれないことを明確にした。また、企業は12カ月未満の契約についても、残存する履行義務の分析を開示することができるようにした。さらに、開示される取引価格は、後に多額の収益が取り消されることにはならない金額(すなわち制限された収益認識額)であることを明確にした。

両審議会は、残存する履行義務に係る定性的情報を開示しなければならないというEDの提案を維持することを再確認した。こうした開示項目には、企業が移転することを約束した財またはサービス、企業が通常ならば履行義務を充足する時期、重要な支払い条件、返品に係る義務、返金その他の義務、保証及び関連する義務などが含まれる。両審議会はまた、(企業が、多額の収益が取り消されることにはならないとする最低限の金額をどのように算定したかが説明されるように)変動対価の認識にあたり企業が行った会計上の重要な判断、見積り及び仮定についても定性的情報の開示を求めることを暫定的に決定した。さらに、財務諸表利用者からの要望により、企業は、貨幣の時間的価値及び契約コストに関する会計方針の選択についても開示が求められることになる。

両審議会はまた、不利な履行義務に関する規定を収益認識基準から削除するという決定を以前行っており、それに整合するように、不利な履行義務の開示に関する規定も削除することに同意した。

開示:期中の開示に関する規定

両審議会は、EDにおいて、IAS第34号「期中財務報告」及びASC第270号「中間報告」を改訂する提案に対するフィードバックを要請した。EDでは、企業は、収益の構成要素の分解、契約残高の増減明細表、残存する履行義務の明細及び契約を獲得又は履行するための資産化されたコストに関する開示を、期中財務諸表に含めなければならないと提案していた。

財務諸表作成者の一部は、提案された期中の開示の分量の多さに懸念を示した。財務諸表の利用者にも同様の懸念を示す者はいたが、期中財務諸表と年次財務諸表における開示が同じになれば、より高度な分析が可能になると述べる者もいた。

IASBは、IAS第34号の現行の規定に加えて、期中財務諸表では収益をその構成要素別に分解した開示のみを求めることにした。これはEDにおける当初提案とは異なる。一方、FASBは、期中財務諸表においても、収益を構成要素別に分解したものの他、契約資産と契約負債の残高(異常な、そして通常生じることはない増減について説明を加える)、及び企業の残存する履行義務の分析の開示を求めることを仮決定した。

弊社のコメント

IFRSに関する暫定決定の内容は、現行の期中財務報告に関する規定により整合的なものとなる。対照的に、US GAAPに関しては、期中財務報告において要求される開示の分量が大幅に増加することになる。

次のステップ

両審議会はEDに関する共同の再審議をほぼ完了した。スタッフは今後数カ月をかけて収益認識の最終基準を起草することになる。両審議会は今後、残りの論点を取り扱い、数カ月をかけて収益認識の最終基準の費用対効果を検討することになる。

スタッフは新しい収益認識基準が2013年6月末までに公表されることを見込んでいる。