新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

投資企業-連結に関する例外規定の公表

2012.11.06
重要ポイント
  • 「投資企業」は、IFRS第10号に定義されている。
  • 企業が投資企業としての要件を満たすためには、定義の3つの要件すべてを満たし、4つの典型的な特徴を有しているかどうかを考慮しなければならない。
  • 企業が投資企業に該当するかどうかを判断する際、その目的及び設計をはじめ、すべての事実及び状況を考慮する必要がある。
  • 投資企業は子会社を連結しない。ただし、投資企業の投資活動のみに関連するサービスを提供する子会社については連結する。
  • 投資企業は、子会社を、IFRS第9号に従い純損益を通じて公正価値で会計処理する。

概要

国際会計基準審議会(IASB)は、投資企業の定義を満たす企業は、子会社の連結を禁止するという連結規定の例外を定めたIFRS第10号「連結財務諸表」への改訂を公表した。投資企業は、子会社を、IFRS第9号「金融商品」に従って純損益を通じた公正価値で会計処理することが求められる。

投資企業の定義

以下のすべてを満たす企業は投資企業に該当する。

  1. a)単一または複数の投資家に対し、投資管理サービスを提供する目的で、投資家から資金を獲得する(受け入れる)
  2. b)投資家に対し、企業の事業目的は、当該資金を資本増価、投資収益、またはその両方からのリターンのためにのみ投資することである旨をコミットしている
  3. c)実質的にすべての投資のパフォーマンスを、公正価値に基づいて測定及び評価する

IFRS第10号の適用指針では、企業は、企業が投資企業に該当するかどうかを判断するとき、その目的及び設計をはじめ、すべての事実及び状況を考慮しなければならないと明確に定めている。投資企業となるために、企業は定義の3つの要件すべてを満たすことが求められる。適用指針では、定義の各要件について以下の通り詳細に説明している。

事業目的

投資企業の事業目的は、資本増価、投資収益、またはその両方からのリターンのためにのみ投資することである。投資企業は、投資家だけでなく第三者にも投資関連サービスを提供することがある。当該サービスが、企業の事業の相当な部分を占めることになるとしてもなお投資企業に該当する。投資企業は以下のような活動を実施することもあるが、そうした活動は投資リターンを最大限にするために実施されるものでなければならず、別個に実質的な事業活動又は実質的な収益源になるものであってはならない。

  1. a)投資先にマネジメント・サービス及び戦略的助言を提供する
  2. b)投資先に金融支援を提供する
投資企業は、子会社を、IFRS第9号「金融商品」に従って純損益を通じた公正価値で会計処理する。すなわち、投資企業は子会社を連結してはならない(連結の例外規定)。

弊社のコメント
最終基準が公表される直前までは、企業が、第三者に実質的な投資関連サービスを提供している場合、その企業は投資企業としての要件を満たさないと提案されていた。しかし、IASBスタッフだけでなく一部のコメント提出者が、それでは本来は投資企業の要件を満たすはずの多くのプライベート・エクイティ企業が投資企業の範囲から除外されることになると懸念を表明した。そのため、最終基準では、第三者に実質的な投資関連サービスを提供するというだけでは企業が投資企業の範囲から除外されることにはならない、とされている。

出口戦略

投資企業が期日を定めない形で投資を保有することはない。したがって、企業が資本性金融商品及び非金融資産投資のすべてのリターンを実質的にどのように実現するかを記した出口戦略が存在しなければならない。

弊社のコメント
最終基準が公表される直前までは、投資企業は実質的にすべての投資に関して出口戦略を定めていなければならないとされていた。しかし、それでは負債性金融商品のうち多くを満期まで保有する企業は、投資企業に該当しなくなってしまうとの懸念が表明された。そのため、最終基準では、投資企業は、期日を定めない形でその投資を保有することはないという事実に着目し、満期日が確定している場合には、負債性投資に関して出口戦略は通常は要求されないとされた。

資本増価及び投資収益以外の収益

投資先の無形資産や技術の取得など、資本増価及び投資収益以外の収益を獲得することを目的とする企業は投資企業に該当しない。

公正価値測定

投資企業は、主要な測定指標が公正価値であることを説明しなければならない。すなわち、経営幹部に対して公正価値情報が報告され、企業の投資家にもその情報が提供される必要がある。この要求を満たすために、企業は以下を行う。

  1. a)投資不動産については、IAS第40号「投資不動産」の公正価値モデルを用いて会計処理することを選択する。
  2. b)関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資に関しては、IAS第28号の持分法適用の免除規定を選択する。
  3. c)IFRS第9号に従って金融資産を公正価値で測定する。

投資企業の典型的な特徴

上述の投資企業の定義を満たすかどうかを判断するにあたり、企業は次の典型的な特徴を有しているかどうかを考慮しなければならない。

  • リスク資産を分散させリターンを最大にするために複数の投資を行なっている。
  • 複数の投資家が存在し、そうした投資家は投資機会を最大にするためにその資金をプールしている。
  • 企業の関連当事者ではない投資家が存在している
  • 資本又はそれに準ずる持分の形で所有持分が存在する。

これらの典型的特徴の1つないしは複数が欠けているとしても、そのことのみによって、企業が投資企業に該当しないということにはならない。企業が、典型的な特徴のすべてを有しているわけではないが投資企業であるとされた場合、IFRS第12号による開示を行わなければならない(後で説明)。

連結に関する例外規定

投資企業は、支配を獲得する場合には子会社を連結せず、IFRS第3号「企業結合」も適用しない。その代わり、投資企業はIFRS第9号に従って子会社を純損益を通じて公正価値で測定しなければならない。

投資関連サービス

投資企業は子会社を連結しないが、例外が1つ設けられている。すなわち、投資管理サービスなど、投資企業又は第三者に投資関連サービスを提供する子会社を投資企業が有する場合、投資企業はその子会社を連結しなければならない。

投資企業の親会社となる投資企業

子会社自体が投資企業であっても、投資企業は、投資先である子会社に対する投資のすべてを公正価値で測定する。これには、マスターフィーダー構造及びファンド・オブ・ファンズ構造の両方が含まれる。

投資企業ではない親会社

投資企業に適用される連結に関する例外規定は、自身が投資企業に該当しない親会社には適用されない。すなわち、自身が投資企業ではない親会社はその連結財務諸表において投資企業の会計処理を適用することを認められない。その代わり、当該親会社は投資企業を通じて支配される企業をはじめ、支配するすべての企業を連結しなければならない(図を参照)

投資企業ではない親会社

弊社のコメント
公開草案に対するコメント提出者の大多数が、投資企業レベルにおいて公正価値情報が有用であるのと同様に、親会社レベルにおいても公正価値情報が有用であると述べ、投資企業の会計処理を親会社の連結財務諸表においてそのまま取り込むこと(roll-up)を支持した。しかし、IASBは、そうするとストラクチャリングの機会が生じることになることを主な理由にそれを認めないことにした。
IASBは、これにより米国会計基準との違いが生じることに留意した。米国会計基準では、投資企業ではない親会社であっても、投資企業である子会社が使用する公正価値会計を適用しなければならない。

投資企業に保有される関連会社及びジョイント・ベンチャー

上述のとおり、投資企業は関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する持分に関してはIAS第28号の持分法免除規定を選択する。

公開草案とは異なり、ベンチャー・キャピタル組織、ミューチュアル・ファンド、ユニット・トラスト、投資連動の保険ファンド及びそれらに準ずる企業は依然として、IFRS第9号に従って関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資を公正価値で測定することを選択できる。

設例

IFRS第10号には、企業が投資企業に該当するかどうかを判断するための定義及び典型的な特徴を有しているどうかの判断に関し4つの設例が示されている。

開示

IFRS第10号に関する改訂に加え、IFRS第12号も投資企業が追加の開示を行わなければならないように改訂されている。

投資企業は以下について開示しなければならない。

  • 企業がどのように投資企業の定義を満たしているかを決定する過程で行った重要な判断及び仮定
  • 以下をはじめとする、各非連結子会社に関する情報
    • 子会社の名称
    • 設立国又は所在国
    • 保有している所有持分の割合及び保有している議決権の割合
  • 以下に関する詳細
    • 子会社が投資企業に資金を移転する際の制約
    • 投資企業が子会社に提供している金融支援
    • ストラクチャード・エンティティと交わしている契約の条件

発効日

改訂は、2014年1月1日以降に開始する事業年度から適用される。早期適用も容認される。

弊社のコメント
改訂は、IFRS第10号より1年遅れて適用される。早期適用が認められることから、企業は改訂をIFRS第10号と同時に適用することを選択することもできる。
しかし、企業は連結していた投資企業の連結を中止しなければならない可能性もあり、新しい開示規定もクリアしなければならず、そのために必要となるシステムやプロセスの更新の立案及び準備にどのくらいの時間を要すことになるかを考慮する必要がある。

経過措置

適用開始日において(改訂がはじめて適用される報告期間の期首)、企業は、その時点で存在するすべての事実と状況に照らし合わせて投資企業の定義を満たしているかどうかを判断する。投資企業であるとされた場合、改訂が既に適用されていたものとして、各子会社に対する投資を純損益を通じて公正価値で測定する。

投資企業は、適用開始日の直前期及びその期首時点の資本の両方に関し、以下の項目の間に生じた差異についての調整を行う。

  • 子会社の従前の帳簿価額、及び
  • 投資企業の子会社の投資の公正価値

米国会計基準との比較

米国会計基準審議会(FASB)は、米国会計基準における投資企業の定義の改訂に関する作業を引き続き進めており、それにより米国会計基準とIFRSは、投資企業に関しさらにコンバージェンスが図られることになる。しかしそれでもなお、先に説明している投資企業ではない親会社による会計処理をはじめ、一定の違いが両者間に残る。FASBは最終基準を2012年中には公表したいと考えている。

弊社のコメント
我々はIFRS第10号が改訂されることにより、支配している企業を連結しなくてもよくなり、投資企業であるファンド及びそれに準ずる企業に関してはその会計処理が単純化するものと考えている。しかし、そうした改訂は、銀行、保険者など、投資活動に係わるその他の多くの企業には何ら影響を与えるものではない。というのも、投資企業自体の財務諸表に対してのみ例外規定が有効であり、そうした企業を支配するグループの連結財務諸表にはこの例外規定は適用されないからである。


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