新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

SECスタッフのIFRSの組込みに関する最終報告に対するIFRS財団による分析の公表

2012.11.05
重要ポイント
  • IFRS財団は、IFRSの組込みに関するSECスタッフ最終報告に対するスタッフによる分析を公表した。
  • IFRS財団報告書は、以下の論点を取り上げている。
  • グローバルな会計基準としてのIFRS
  • グローバルな基準設定主体としてのIASB
  • 米国の移行にあたっての課題
  • IFRS財団スタッフはSECスタッフ報告書におけるいくつかの提言について、歓迎しつつも資金調達及び監督に関する発見事項と指摘に異議を唱えている。
  • FASBとのコンバージェンス・プログラムも完了することになり、IASBは各国の基準設定主体とのより公式的な連携を発展させていこうとしている。
  • 本稿はIFRS財団スタッフの発見事項及び所見をまとめている。

概要

IFRS財団は2012年10月23日に、「IFRS財団評議員会への報告書-IFRS財団スタッフによるSECスタッフ最終報告書の分析」(以下、IFRS財団報告書)1を公表した。IFRS財団報告書は、2012年7月に公表された「米国の発行企業の財務報告制度へのIFRSの組込みを検討するためのワークプランについての米国SECスタッフの最終報告書」(以下、SECスタッフ報告書)2に対するものであり、その中で議論されているいくつかの論点を取り上げている。

SECスタッフ報告書で識別された論点には、評議員会の戦略レビュー3を経て、すでに対応が完了しているものもあれば、今なお検討中のものもある。IFRS財団スタッフはIFRS財団報告書の中で、IASBの資金調達及び監督に対するSECスタッフの指摘について異議を唱えている。棚卸資産の評価方法であるLIFO(後入先出法)に関し、IFRS財団スタッフは、本件は基本的には税制上の問題であり、「投資者が行う財務報告に関する決定が税務の影響を受けないようにするために、」税務目的上LIFOの使用を容認するかどうかは米国財務省の裁量によるべきである、と述べた。

IASBのFASBとのコンバージェンスに向けたプログラムは完了しており、各国の基準設定主体との、より公式的でかつ一貫性のある、包括的な取決めを進展させる必要性の方がIASBにとって緊急性を増している。この目的に向けて会計基準フォーラムが2013年に創設される。IASBの観点からは、米国がIFRSの採用にエンドースメント・アプローチを採用するのであれば、将来の会計基準フォーラムへの米国の貢献が非常に重要になるということは明確である。

その一方で、米国が懸念している事項、すなわち、現在の経済情勢下におけるIFRSへの移行に伴うコスト、ならびに作成者及び規制当局がIFRSの首尾一貫した適用をどの範囲で行うのかは、基本的に会計上の論点ではなく、移行過程と規制当局による執行に関連する問題であり、他の国々では成功裡に対応が完了しているものである。

背景

7月に公表されたSECスタッフ最終報告書は、米国の財務報告制度にIFRSを組み込むかどうかの検討において重要なマイルストーンを意味するものである。SECスタッフ報告書は、SEC委員に対し、米国の財務報告制度にIFRSを組み込むべきかどうかを決定し、もし組み込むのであれば、どのように組み込むべきかを決定する必要があることを伝えることが目的であった。SECスタッフ報告書の公表を受けて、IFRS財団の評議員会(以下、評議員会)は、SECスタッフ報告書における発見事項と所見を慎重に検討することを確認し、その表明を行った。IFRS財団報告書は、そのような発見事項と所見に対するIFRS財団スタッフの評価を要約したものである。

米国が懸念している事項、すなわち、現在の経済情勢下におけるIFRSへの移行に伴うコスト、ならびに作成者及び規制当局がIFRSの首尾一貫した適用をどの範囲で行うのかは、基本的に会計上の論点ではなく、移行過程と規制当局による執行に関連する問題であり、他の国々では成功裡に対応が完了しているものである。

IFRS財団スタッフ報告書は以下の論点を取り上げている。

  • グローバルな会計基準としてのIFRS
  • グローバルな会計基準設定主体としてのIASB
  • 米国がIFRSに移行する際の課題(エンドースメント・アプローチ、移行コスト、人的資源の確保及び小規模発行企業と大規模発行企業との関係)

IFRS財団スタッフはSECスタッフ報告書のいくつかの提言を受け入れ歓迎しつつも、補足説明を加えた上で、ある事例に関してはSECスタッフの発見事項と所見に異議を唱えている。IFRS財団報告書で取り上げられている論点は、以下のとおりである。

グローバルな会計基準設定主体としてのIASB

監督

SECスタッフ報告書は、IFRS財団のガバナンス構造は、「その独立性を認識・保持しつつ、IASBの監督との合理的なバランスが取られる」ように全体的に設計されていると述べている。しかし、SECスタッフ報告書では、IASBの客観性は、外部からの政治的な圧力により損なわれかねないという関係者の懸念について言及している。

IFRS財団スタッフは、フィードバックに対して敏感に反応することと、過度の政治的圧力を受けることの間には微妙な違いしかないことを認識している。だが、IFRS財団及びIASBによるガバナンス構造の不断の強化に伴い、その独立性はさらに確保されることとなろう。さらに、モニタリング・ボードの創設、多様な性格を有するIFRSのコミュニティ、及びIASBの構成が国際的かつ職業専門的に多様なメンバーで構成されていることは、特定の国又は特定の利益集団からの不当な圧力を和らげることに役立つであろう。

IFRS財団スタッフは、フィードバックに対して敏感に反応することと、過度の政治的圧力を受けることの間には微妙な違いしかないことを認識している。さらに、モニタリング・ボードの創設、多様な性格を有するIFRSのコミュニティ、及びIASBの構成が国際的かつ職業専門的に多様なメンバーで構成されていることは、特定の国又は特定の利益集団からの不当な圧力を和らげることに役立つであろう。

資金調達

SECスタッフ報告書は、多くの点について懸念を表明している。例えば、IFRS財団は引き続き資金調達源を大手会計事務所に依拠していること、IFRS財団に資金提供を行っている国は30か国にも満たないこと、さらに米国に割り当てられた資金拠出部分について、評議員会は米国からの資金調達目標の達成に成功していない点である。

IFRS財団スタッフは、資金調達に関して、SECスタッフが報告書で述べている「30か国に満たない」という点に対し、69か国から資金提供を受けていると説明する。確かに、財団予算に最も大きく貢献しているのは欧州諸国及び欧州連合(EU)である。さらに米国からの公的な資金提供が不足しているという問題は、IFRS財団ではなく、米国の当局自身によってのみ、直接的又は間接的に解決されうる問題である。

IFRSは幅広い活動を対象にしているが、徐々に埋めていかなければならないギャップも確かに存在する。IASBは、将来アジェンダに関するコンサルテーションを通じてそうした分野を識別しており、優先順位を定めている。

グローバルな会計基準としてのIFRS

網羅性

SECスタッフ報告書では、IFRSの規定は、共通支配下取引の会計処理などのいくつかの分野で限定されており、保険や採掘産業などの特定の業界に関しては全く不十分であると説明している。IFRSは幅広い活動を対象にしているが、徐々に埋めていかなければならないギャップも確かに存在する。IASBは、将来アジェンダに関するコンサルテーションを通じてそうした分野を識別しており、優先順位を定めている。すでに確立された会計基準の中にあっても、IFRSにおいて改善可能な分野は存在する。アジェンダ・コンサルテーションプロセス、年次改善プロセス及び解釈指針委員会による作業を通じて、時間の経過とともに、改善が図られていくことになろう。

維持管理

IFRS解釈指針委員会(以下、委員会)は、より適時に問題に対処できるはずであるというSECスタッフ報告書での指摘に対し、IFRS財団スタッフは、評議員会の戦略レビューの一環として、評議員会が今年のはじめ4に委員会の効率性及び有効性に関するレビューを実施し、2012年5月にそれらを改善するための提言を公表したと述べている。そうした提言は、すでに実行に移されている。

各国の基準設定主体

SECスタッフの提言の1つが、IASBは新しい基準の開発などの過程で、各国の基準設定主体(NSS)との関わりをさらに拡大させるべきであるということである。この提言に対し、IASBは会計基準フォーラム(以下、フォーラム)を創設し、NSS及び地域における機関との関係を強化しつつ、公式なものにしていくための準備作業を開始した。フォーラムの目的は、IASBがNSS及び地域における機関と共同でさらなる連携が図られるようにすることである。フォーラムの役割は、基準設定活動に関する主要な専門的論点について、IASBに助言を行い意見を提供することとなる。そのためには、意見を明確に表明し、IASBと徹底的に議論できるように、フォーラムには各国や地域に関して深い知識を持つと同時に高度な専門的能力を有する代表者を選出することが必要である。

IFRSの導入に関して、IFRS財団スタッフは、基準ごとに段階的に適用していくという方法によりIFRSの導入に成功した国の存在を今のところ確認できていない。

執行可能性

SECスタッフ報告書は、単一な1組のグローバルな会計基準の便益を完全に実現しようとするのであるならば、IFRSの執行においてさらなる首尾一貫性の確保が重要であると述べている。IFRS財団スタッフは、この点に同意している。仮にSECがIFRSを自国の会計基準に組み込むことを決定する場合には、米国における執行はSECが唯一その責任を負うことになり、外部からの圧力によって基準の執行に影響が及ぶという危険性は排除されることになるであろう。さらに、米国がIFRSへの移行を果たしたとすれば、その時点でSECはIFRSの分野での国際的な執行において既存のリーダー的立場というものを強化しつつ、世界のその他の国や地域と会計基準の執行に関する経験及び実務を共有していくことができるだろう。

IFRSの採用、承認及び移行に関する課題

SECスタッフ報告書は、米国会計基準にIFRSを組み込む際の諸問題に触れているが、それらは米国固有のものであり、彼らが活動する環境のなかで米国当局のみにしか対応できないものである。IFRSを組み込む方法に関し、IFRS財団スタッフはエンドースメント・アプローチがIFRS採用国の大多数で使われており、それによって国際ルールが自動的に国の法律にならないようにするための重要な「主権の遮断機(sovereignty circuit-breaker)」になると述べている。

IFRSの導入に関して、IFRS財団スタッフは、基準ごとに段階的に適用していくという方法によりIFRSの導入に成功した国の存在を今のところ確認できていない。当初はこのアプローチを検討していた国でも、結局のところ「ビッグバン(一斉適用)」アプローチに従う決定をした。新しい基準の段階的適用による方法によると、IFRSの導入に長期間を費やすことになり、それは作成者にとって、技術的な困難性とコストの面でも大きな負担となる。

IFRS財団スタッフの発見事項によると、移行にかかるコストは、他の国の経験に基づけば重要なものではないと言える程ではないが、全体として法外な金額となるものではないことが示されている。

IFRS財団スタッフの発見事項によると、移行にかかるコストは、他の国の経験に基づけば重要なものではないと言える程ではないが、全体として法外な金額となるものではないことが示されている。コンバージェンス・プログラムが実施された結果として、IFRSと米国会計基準の間で最終的には多少の差異が残ったとしても、それは他の国が自国の会計基準からIFRSに移行するときに直面する差異と比べれば、僅かなものであり、米国に関しては、移行に関連して生じるコストもより低く抑えられることになる。さらに、新たにコンバージェンスが達成される基準(例えば収益認識やリース)の適用コストは、米国がIFRSに移行するか、米国会計基準を維持するかに関係なく、米国の作成者が負担しなければならないコストである。加えて、IFRS財団が委託した最近の調査によれば、IFRSの採用により生じる利益は非常に大きいということが分かっているにもかかわらず、そのことがSECスタッフ報告書では省略されていた。5

SECスタッフが報告している、IFRSの採用に関する複数の課題は、IFRSを採用した国々がIFRSの採用に関し何年にもわたりすでに経験してきたものである。

SECスタッフが報告している、IFRSの採用に関する複数の課題は、IFRSを採用した国々がIFRSの採用に関し何年にもわたりすでに経験してきたものである。IFRS財団評議員会ミシェル・プラダ議長は、「本日公表されたIFRS財団スタッフ分析は、すでに自国におけるIFRSへの移行を完了している国々の経験だけでなく、学術的な側面からの調査も考慮して、SECスタッフ報告書の発見事項を補完するものであり、IFRSを採用するかどうか、またどのように採用すべきかを検討している他の国々にとっても有用なものとなるはずである。IFRS財団スタッフが実施した分析は、課題を認めつつも、米国がIFRSを採用するにあたって、克服できない障害は存在しておらず、米国はIFRSへの移行に関し優利な立場にあり、したがってG20首脳により繰り返し確認された目標が達成されるべきであることを示している」と述べた。

弊社のコメント
セグメント報告、公正価値測定及び企業結合など、コンバージェンスが達成された複数の基準が公表されるなど、過去10年間にわたり多大な成果が見られている。我々は、両審議会が収益認識及びリース・プロジェクトに関し引き続き共同で作業をすすめていくということを歓迎し、両審議会が、今後さらに差異を最小限に抑えることに留意し続けていくことを望む。

  1. この報告書はwww.ifrs.orgにて入手可
    SECは米国証券取引委員会の略称である
  2. IFRS Developments第36号「SECスタッフによるIFRSの組込みに関するワークプランについての最終報告書を公表」参照
  3. IFRS Developments第24号「IFRS財団がガバナンス改革を公表」参照
  4. 「The Report on the Trustees' Review of Efficiency and Effectiveness of the Interpretations Committee」はwww.ifrs.orgにて入手可
  5. 「The case for global accounting standards: arguments and evidence」(Tarca et al 2012)はIFRS財団レポートの付録として入手可

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