新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

金融商品:分類及び測定-共同審議が終了

2012.08.08
重要ポイント
  • 両審議会は、測定カテゴリー間における再分類の会計処理について、コンバージェンスされたアプローチを採用することに暫定的に同意した。唯一、「再分類日」については差異が残されるが、ビジネスモデルの変更は稀であると見込まれることを鑑みると、これは大きな違いにはならないであろう。
  • IASBは、償却原価カテゴリーと、純損益を通じて公正価値で測定カテゴリー間の再分類に係るIFRS第7号の開示規定を、新たに提案されたその他の包括利益を通じて公正価値で測定カテゴリーから他のカテゴリーへの再分類、及び、このカテゴリーから他のカテゴリーへの再分類にも適用することを暫定的に決定した。
  • さらに、IASBは、提案するIFRS第9号の分類・測定モデルの改訂に伴う経過措置及び開示についてもいくつかの暫定的決定を行った。
  • IASBは、IFRS第9号の最終版が公表された場合には、IFRS第9号を早期適用する企業は、当該最終版を適用しなければならないと提案することを決定した。

概要

2012年7月の共同審議において、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、「両審議会」)は、金融資産の再分類についての会計処理、及び関連する開示について審議した。また、IASBは、単独での審議にて、IFRS第9号の限定的な改訂に伴う経過措置及び開示規定についても審議を行った。

これにより、両審議会は、金融資産の分類及び測定に関する共同審議1を終了したことになる。これまでの審議の成果として、負債性金融商品の分類及び測定については、ほぼコンバージェンスされたアプローチが決定されたことになる。両審議会は、分類及び測定に関する公開草案を2012年の第4四半期(10~12月)に公表する予定である。

本稿では、7月の共同審議においてIASBがFASBと共同で、また、単独で行った主な決定について解説する。これまでの審議会における主な共同決定の概要については、本稿の付録を参照されたい。なお、ここで説明しているすべての決定は暫定的なものであり、変更される場合がある点に留意されたい。

測定カテゴリー間における再分類の会計処理

IFRS第9号「金融商品」は、企業が金融資産の運用に係るビジネスモデルを変更した場合2に、再分類を将来に向かって行うことを要求している。これは、再分類が行われた場合であっても、それまで認識した利得、損失又は利息は修正再表示されないことを意味している。

2012年5月、両審議会は、IASBがそれまでの審議でIFRS第9号の分類・測定モデルに追加することを決定した、適格負債性金融資産について分類可能なその他の包括利益を通じて公正価値で測定カテゴリー(FVOCI)3への/からの再分類を含め、金融資産の測定カテゴリー間におけるすべての再分類に、この規定を適用すべきであるという点に同意した。

IFRS第9号には、償却原価(AC)測定カテゴリーと、純損益を通じて公正価値で測定カテゴリー(FVTPL)間の再分類については、すでに規定が存在している4。したがって、以下では、適格負債性金融資産に対する新たな測定カテゴリーである、FVOCIへの/からの再分類の会計処理に絞って解説する。

2012年7月、両審議会は、FVOCIへの/からの「再分類日」5時点で、次のような会計処理を行うことを決定した。

FVOCIからFVTPLへの再分類 FVOCIからACへの再分類
負債性金融商品は公正価値で振り替えられる。再分類される負債性金融商品に係るOCI累計額は、OCIからPLにリサイクリングしなければならない。 負債性金融商品は、当初公正価値で振り替えられるが、再分類日時点のOCI累計額は、関連する金融資産残高に振り替えることにより認識を中止しなければならない。その結果、当該負債性金融商品は、再分類日時点で、あたかも従前から償却原価カテゴリーに分類されていたかのように償却原価で測定されることになる。
FVTPLからFVOCIへの再分類 ACからFVOCIへの再分類
負債性金融商品は公正価値で振り替えられる。再分類日後に生じる負債性金融商品の公正価値の変動は、OCIに認識しなければならない(再分類日より前の公正価値の変動はOCIに振り替えない)。再分類日時点の帳簿価額に基づきEIRが計算される。 再分類された負債性金融商品は、公正価値で測定し、従前の帳簿価額と公正価値との差額はOCIに認識しなければならない。

IFRS第9号の限定的な改訂に伴う経過措置

IFRS第9号における契約上のキャッシュ・フローの特徴テストに対する限定的な改訂

2012年2月、IASBは契約上のキャッシュ・フローの特徴テスト(以下、「特徴テスト」)を修正した。この軽微な改訂の詳細については、本稿の付録を参照されたい。

IFRS第9号は、同基準書の適用にあたっては、当初認識時の契約上のキャッシュ・フローに基づき、特徴テストを遡及的に行うことを求めている。2012年7月、IASBは、特徴テストの遡及適用を修正し、遡及適用が実務上可能でない場合6には、IFRS第9号(2010年版)に従って特徴テストを遡及適用するよう求めることを決定した。たとえば、企業が、当初認識時に存在しており、企業が入手可能であったであろう状況の証拠となる情報を客観的に区別することができないため、後知恵(hindsight)の利用なくして判定・評価を行うことができないと判断する場合、当該企業は、改訂後の特徴テストではなく、IFRS第9号(2010年版)で定められるテストを適用しなければならない。なお、IFRS第9号(2010年版)の特徴テストを適用すると、契約上のキャッシュ・フローを調整する特性(modifying feature)を有する金融商品は、公正価値で分類、測定される可能性が非常に高いであろう。

併せて、IASBは、IFRS第9号(2010年版)の特徴テストによってキャッシュ・フローを評価した金融資産については、その帳簿価額を、当該資産の認識が中止されるまで開示することを要求することを決定した。

IFRS第9号既適用企業における公正価値オプション(FVO)

改訂後の分類・測定規定の適用により、一部の金融資産の分類が変更し、その結果、会計上のミスマッチが変更されることになる。これを踏まえ、IASBは、以下を暫定的に決定した。

  1. (i)すでにIFRS第9号(2009年版)及び/又はIFRS第9号(2010年版)を適用している企業に対し、改訂後の分類・測定規定の当初適用時に会計上のミスマッチがもはや存在しなくなった場合には、従前のFVO指定を取り消すことを要求する。
  2. (ii)上記の既適用企業に、改訂後の分類・測定規定の当初適用によって新たな会計上のミスマッチが生じる場合、FVOを適用することを認める。

なお、会計上のミスマッチが引き続き存在する場合には、従前のFVO指定を取り消すことは認められず、また、改訂後の分類・測定規定の当初適用時より前にすでに存在していた会計上のミスマッチにFVOを適用することは容認されない。

IFRS第9号の一部の段階的な(フェーズごとの)早期適用

IASBは、IFRS第9号の完全版(これには、改訂後の分類・測定モデル、期待損失減損モデル、一般ヘッジ会計モデルが含まれる)が公表された場合には、IFRS第9号を適用する企業に対し、IFRS第9号改訂の各フェーズを段階的に適用することを認めないことを決定した。

また、IASBは、IFRS第9号完全版の早期適用については、これを容認することを決定した。

なお、(IFRS第9号完全版の公表前に)IFRS第9号の旧バージョンをすでに適用している企業は、そのバージョンを引き続き適用することができ、強制適用日までは最終的な規定を適用することは要求されない。ただし、そのような企業は、IFRS第9号完全版が最終決定された後は、完全版より前の、他の途中バージョンのIFRS第9号に「アップグレード」してはならない。

弊社のコメント
IFRS第9号の最終版が公表された場合には最終版以前のIFRS第9号の適用(段階適用)を禁止するとのIASBの決定は、比較可能性に関する懸念に対応することを目的としている。IASBが、この決定を行わなければ、任意の時点で、4つものバージョンのIFRS第9号から選択できてしまうことになる。これは、企業間の比較可能性や、企業の期間ごとの比較可能性を著しく損なってしまうことになる。

7

ある企業が、2011年1月1日に、額面金額がCU4,500の負債性金融商品を取得し、当該金融商品をFVOCIに分類する。当該日時点で、公正価値は額面金額に等しい。当該負債性金融商品の2011年1月1日現在の期待損失はCU20である。

2011年12月31日、当該負債性金融商品の公正価値はCU4,430に減少する。当該金融商品の期待損失はCU30に増加した。

2012年1月1日、当該負債性金融商品は2011年12月に行われたビジネスモデルの変更に基づき、償却原価カテゴリーに再分類される。

単純化のため、利息は考慮しない。

以下の表は、企業が上記の負債性金融商品について行う仕訳を説明したものである。括弧内の金額は、貸方影響/貸方残高を反映している。

  資産 資本 PL
日付 仕訳 現金 FVOCIの負債性金融商品 償却原価の負債性金融商品 信用損失に係る引当金 OCI 減損損失
2011/1/1 仕訳1 (4,500) 4,500        
2011/1/1 仕訳2         (20) 20
2011/12/31 仕訳3         (10) 10
2011/12/31 仕訳4   (70)     70  
    (4,500) 4,430     40 30
2012/1/1 仕訳5   (4,430) 4,430      
2012/1/1 仕訳6       (30) 30  
2012/1/1 仕訳7     70   (70)  
    (4,500) 4,500 (30) 30

  1. 仕訳1:負債性金融商品の購入を公正価値で計上
  2. 仕訳2:期待損失モデルに基づき減損損失を計上(減損プロジェクトでの審議に基づく)
  3. 仕訳3:期待損失の見積りが増加したことに基づき、追加の減損を計上(減損プロジェクトでの審議に基づく)
  4. 仕訳4:負債性金融商品の帳簿価額を新たな公正価値に評価減
  5. 仕訳5:負債性金融商品を償却原価の測定カテゴリーに再分類
  6. 仕訳6:再分類日時点での期待信用損失に係る引当金を計上(減損プロジェクトでの審議に基づく)
  7. 仕訳7:CU70のOCI累計額は、負債性金融商品の残高に振り替えることで認識を中止する

追加の表示及び開示規定

提案されたFVOCI測定カテゴリーに関する開示及び表示規定

IASBは、以下を決定した。

  • FVOCIで測定される負債性金融商品に関し、償却原価で測定される資産と同じ減損についての開示を要求する(減損損失累計額の開示を含む)。
  • FVOCIで測定される負債性金融商品について、引当金残高を財政状態計算書の本体に表示することを禁止する。

次のステップ

IASBは、分類・測定に関する公開草案を2012年第4四半期(10~12月)に公表する予定である。公開草案には、以下が含まれると予想される。

  • FVOCIビジネスモデルに適格となる事業活動の種類に関する適用指針
  • 償却原価カテゴリーに適格になるための、「(契約上のキャッシュ・フローを)回収するために保有する」というビジネスモデル上の主要な目的を明確化するための追加の適用ガイダンス

また、IASBはIFRS第9号のヘッジ会計モデルをFVOCIで計上される金融資産にも適用するかを検討すべきであると弊社は考える。しかし、そうした決定は、公開草案に対するフィードバックを受領し、FVOCI測定カテゴリーを導入するという最終的な決定が行われるまではなされないかもしれない。

プロジェクトの公開草案について設定されたスケジュールを考慮すると、我々は、最終的な分類・測定基準は、2013年半ばまでは公表されないものと予想している。このスケジュールと、減損フェーズ及び保険プロジェクトのスケジュールを考慮すると、最終的なIFRS第9号の強制適用日に対しては引き続きプレッシャーがかかることになる。具体的には、2015年にIFRS第9号の最終版を適用することが可能かどうかということである。IASBは、新しい減損モデルについて公表される公開草案に対するコメント募集の一環として、発効日についてのフィードバックも要請するものと思われる。

付録

これまでの会議における主な共同決定の概要は以下のとおりである。8

契約上のキャッシュ・フローの特徴テスト

2012年2月、両審議会は、それぞれの分類・測定モデルにおけるキャッシュ・フローの特徴テストをコンバージェンスさせることに同意した。IFRS第9号の観点からすると、この決定による主な影響は、適用指針に軽微な変更が行われる程度と考えられる。この改訂案によれば、金融商品の契約上のキャッシュ・フローが「元本及び金利のみ」であるといえるかどうかを判断する上で、元本、貨幣の時間価値及び信用リスクの経済的関係が、重要でないとは言えない程度に変更しているかを評価することが要求される。

償却原価-ビジネスモデル・テスト

2012年4月に両審議会は、企業が、契約上のキャッシュ・フロー特徴テストを満たす金融商品を、契約上のキャッシュ・フローを回収することを目的とするビジネスモデルに従って保有している場合には、当該金融商品を償却原価で会計処理できることを暫定的に決定した(すなわち、IFRS第9号で用いられているアプローチ)。追加される適用ガイダンスでは、現行のIFRS第9号に含まれる一部の設例間で生じている、ある種の不整合についても取り扱われる予定である。

金融商品の区分処理

2012年4月に両審議会は、元本及び金利のみではないキャッシュ・フローを含む金融資産について、「組込デリバティブ」と「主契約」とを区分処理してはならないという決定を下した。すなわち、これらの金融商品は、区分処理するのではなく、全体として純損益を通じて公正価値で測定することになる。

また、両審議会は、金融負債については、IFRS第9号と米国会計基準で定められている現行の区分処理規定に基づき、分離して処理することを暫定的に決定した。

FVOCI及びFVTPL-ビジネスモデル・テスト

2012年5月、両審議会は、元本及び金利の支払いのみを表す契約上のキャッシュ・フローを有する金融資産は、そのポートフォリオに係る企業のビジネスモデルが、(1)契約上のキャッシュ・フローを回収するために保有すること、及び、(2)金融資産を売却することの両方である場合には、当初認識時にFVOCIでの分類・測定に適格となることを決定した。両審議会は、契約上のキャッシュ・フローの特徴テストを満たすものの、FVOCI及び償却原価へ分類するためのビジネスモデル・テストのどちらも満たさない金融資産は、残余カテゴリーとしてのFVTPLに分類されることに同意した。

FVOCI測定カテゴリーの会計処理

2012年5月に、IASBは、FVOCIに分類された資産について、企業は、償却原価に関する情報を純損益に、公正価値に関する情報を貸借対照表に表さなければならないと決定した。したがって、利息収益及び信用に係る減損損失と、その戻入れは、償却原価で測定される金融資産と同じ手法により純損益に認識される。OCIに認識された公正価値の正味累積変動額は、これらの金融資産の認識が中止された時点でOCIから純損益にリサイクリングされる。

IFRS第9号における一定の条件を満たす場合の公正価値オプション(FVO)のFVOCI測定カテゴリーへの適用

2012年6月にIASBは、IFRS第9号のFVOを、さもなければFVOCIで測定される負債性金融商品にも適用することを暫定的に決定した。すなわち、企業は、会計上のミスマッチが解消する又は著しく低減する場合には、負債性金融商品を当初認識時にFVTPLに指定する取消不能な選択を行うことができる。

  1. 2012年1月、両審議会は、IFRSと米国基準の金融商品の分類・測定モデルにおける重要な差異を解消するため、分類・測定モデルの特定の分野について共同で再審議を行うことを決定していた。
  2. 再分類が要求されるビジネスモデルの変更は、非常に稀であることが見込まれ、これに該当するためには一定の条件を満たさなければならない。
  3. FASBの当初提案には、すでに負債性金融商品について、FVOCIカテゴリーが含まれていた。
  4. 第5.6.2項及び第5.6.3項
  5. IFRS第9号は、「再分類日」を、ビジネスモデルが変更した報告期間の翌報告期間の期首と定義している。一方、2012年7月にFASBは、再分類日を、ビジネスモデルが変更した報告期間の期末日とすべきであると暫定的に決定している。
  6. IAS第8号の第28項(h)は、実務上不可能な状態が存在するに至った状況、及び会計方針の変更が、どのように、いつから適用されているかについての説明を開示することを要求している。
  7. 2012年7月の審議会におけるIASBのアジェンダ・ペーパー6Aに基づき作成
  8. IASBが過去に下した暫定的決定の詳細については、過去のIFRS Developmentsを参照されたい。