新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
IFRS Developments

経過措置ガイダンス:IFRS第10号、第11号及び第12号の改訂

2012.07.09
重要ポイント
  • IFRS第10号における「当初適用日」は、「IFRS第10号が初めて適用される事業年度の期首」と定義された。
  • 支配が存在するか否かの評価は、比較年度の期首ではなく「当初適用日」時点で行われる。
  • この支配の評価結果がIFRS第10号に基づいた場合とIAS第27号/SIC第12号に基づいた場合で異なる場合は、遡及修正が求められる。
  • 一方、支配の評価結果が同じ場合、遡及適用は求められない。
  • 投資者は、当初適用日時点で行われた連結要否の判断が異なる場合、比較年度を遡及的に修正しなければならない。
  • 複数の比較年度が表示される場合、修正再表示が要求されるのは直前の一期間のみとする、追加の免除規定が定められた。
  • IFRS第12号を最初に適用する年度に限り、比較情報に関しては、当該IFRSに基づく非連結ストラクチャード・エンティティに関する開示は要求されない。
  • 改訂は、2013年1月1日以降に開始する事業年度から適用される。

概要

2012年6月28日、国際会計基準審議会(IASB)はIFRS第10号「連結財務諸表」、IFRS第11号「共同契約(ジョイント・アレンジメント)」、及びIFRS第12号「他の事業体への関与の開示」の改訂を公表した。当該改訂により経過措置が変更され、完全遡及適用に関して追加の免除規定が設けられた。本稿では、当該改訂の概要に加えて、企業への潜在的影響を解説している。

当初適用日

IASBは、「当初適用日」が定義されておらず、基準書によってその意味が異なるとの関係者からのフィードバックに応えるために、「当初適用日」の意味を明確化することを決定した。IASBは審議の中で、IFRS第10号では当初適用日を、どの持分がIFRS第10号に基づいて会計処理されるべきかを判断する際の基準点、すなわち支配の評価が行われるべき時点として用いることを意図していた点に留意した。よって、「当初適用日」は、「IFRS第10号が初めて適用される事業年度の期首」と定義された。

したがって、企業は、当初適用日時点の連結要否の判断がIAS第27号「連結及び個別財務諸表」/SIC第12号「連結―特別目的事業体」に基づいた場合と、IFRS第10号に基づいた場合で同じか又は異なるかを評価し、その評価結果に基づき、IFRS第10号の原則を以下で説明する本改訂を考慮した上で適用しなければならない。

当初適用日時点の連結要否の判断がIAS第27号/SIC第12号とIFRS第10号で同じ場合

当初適用日時点の連結要否の判断がIAS第27号/SIC第12号を適用した場合とIFRS第10号を適用した場合で同じ場合、本改訂によって、企業への関与に関する以前の会計処理を修正する必要はないことが明確化にされた。その結果、IFRS第10号の遡及適用に関する免除規定は、投資者が投資先に対する持分を比較年度中に処分した場合にも適用されることをIASBは確認した(すなわち、この場合、IAS第27号/SIC第12号とIFRS第10号で当初適用日時点において連結処理に修正は要求されない)

企業は、IFRS第10号の当初適用日の直近比較年度のみ、遡及修正が要求される。

12月決算会社の以下の事例に基づき説明する。
  • IAS第27号/SIC第12号に基づき、投資先は2012年1月1日時点で連結されていなかった。
  • 仮にIFRS第10号が2012年1月1日から適用されていたとしたら、当該投資先は連結されていたことになる。
  • 2012年中に、投資者は当該投資先に対する持分を売却(又は取決めの条件を再交渉)し、IFRS第10号を適用する2013年1月1日時点では、当該投資先は投資者によって支配されていない。
  • IFRS第10号は、2013年1月1日から適用される。
この事例において、IFRS第10号の当初適用日は2013年1月1日である。当初適用日時点で、当該投資先は、IAS第27号/SIC第12号又はIFRS第10号のどちらに基づいた場合も、投資者によって支配されていない。したがって、投資者はIFRS第10号の遡及適用を免除される。

当初適用日時点の連結要否の判断がIAS第27号/SIC第12号とIFRS第10号で異なる場合

IFRS第10号(2011年公表)では、当初適用日時点で行われた連結要否の判断がIAS第27号/SIC第12号とIFRS第10号で異なる場合、比較年度を遡及的に修正することが要求されている(なお、実務上不可能な場合の追加規定も存在する)。

公開草案に対するコメント提供者は、IFRS第10号(2011年公表)の遡及適用は、新規連結によって財務諸表のすべての表示科目に影響が及ぶと共に、情報を入手することが困難な場合があることから、投資先を以前連結していなかった企業にとって、過度な負担が生じる点に言及した。これは、現地の法規制により、複数の期間の比較年度情報が要求される場合には特に負担になる。大多数のIASBメンバーは、これらのコメントに同意し、IFRS第10号の当初適用日の直近比較年度(以下、「直近比較年度」)についてのみ、遡及修正を要求することを決定した。またIASBは、要求はされないものの、それより前の比較年度についても比較情報を修正して表示できることも決定した。直近比較年度より前の比較情報が修正再表示されていない場合は、その旨を財務諸表本体で明示しなければならない。

弊社のコメント
本改訂は、たとえばSEC(米国証券取引委員会)外国登録企業など、複数年度の比較情報が要求される国や地域に特に関連するものである(たとえば、5年間の比較情報が要求される場合もある)。この免除規定により、情報の期間ごとの比較可能性が妨げられる可能性はあるが、多くの場合、当該免除規定による便益は、これがなければ影響を受ける企業に生じていたであろうコストを上回ると、我々は考えている。

さらにIASBは、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」の開示規定に基づき、IFRS第10号を初めて適用することによる影響の定量的情報を開示するにあたって、企業は、直近比較年度についてのみ当該定量的情報を開示することが要求され、当期及び直近比較年度より前の比較年度に対する影響は開示する必要がないことを明確にした。なお企業は、要求はされないものの、当期又は直近比較年度より前の比較年度についても当該情報を開示することができる。

従前の帳簿価額とIFRS第10号の遡及適用によって認識された金額との差額は、直近比較年度、又は修正されたそれより前の表示されている最も早い比較年度(追加で表示されている場合)の期首時点における資本の修正として認識しなければならない。

IFRS第10号の遡及適用時におけるIFRS第3号及びIAS第27号のバージョンの選択

IFRS第10号の適用時に、投資者が以前連結していなかった投資先を支配していると判断した場合、IFRS第10号では、支配を獲得した時点でIFRS第3号に基づき取得法を適用し、その後IAS第27号に基づき連結処理を行うことが要求される。IFRS第3号とIAS第27号はどちらも2008年に改訂され、改訂後基準は将来に向かって適用することが要求されている。たとえば、企業が(IFRS第10号に基づき判断した結果として)2008年に支配を獲得した投資先を初めて連結する場合、企業は、(当該日時点で有効であった)IFRS第3号(2004年)と、(IFRS第10号の当初適用日時点で有効な)IFRS第3号(2008年)のどちらを適用すべきであろうか。

IASBは、このIFRS第10号の改訂に際して、投資者がIFRS第10号に基づき以前連結していなかった投資先を連結する必要があると判断し、その支配獲得日がIFRS第3号及びIAS第27号(2008年)の発効日(2009年7月1日以降開始する事業年度)より前である場合、企業はIFRS第3号及びIAS第27号の改訂前と改訂後のどちらのバージョンを適用するかを選択できることを明確にした(なお、改訂前バージョンを選択した場合には、改訂後バージョンの発効日より前の期間に限り改訂前バージョンが適用される)。

弊社のコメント
投資者がIFRS第10号の当初適用日時点で連結要否の判断を変更し、他の企業に対する投資を連結する必要がある場合、当該投資者は以前、IAS第28号「関連会社に対する投資」に基づき当該投資を持分法により会計処理していた可能性が高い。以前のIAS第28号は、IFRS第3号(2004年)を参照していた。そのため、投資先をIFRS第3号(2008年)の適用前に取得し、当該投資先をIAS第28号に基づき持分法により会計処理していた投資者は、IFRS第3号(2004年)により要求される公正価値、のれん及びその他の金額について、すでに把握していると思われる。
このような明確化を図ることによって、すでに入手している情報が使用できることになり、IFRS第3号の現行バージョンを適用しようとするために生じてしまう、後知恵の利用に伴うリスクが軽減されることになる。そのため、IASBは、このような情報の利用により、連結に際して、より信頼性のある基礎が提供されることになると考えている。

IFRS第11号及びIFRS第12号の関連する改訂

上述のIFRS第10号に関するコメント提供者の指摘と同じ理由から、IASBは、IFRS第11号「共同契約」及びIFRS第12号「他の事業体への関与の開示」を改訂し、以下のような経過措置を定めることとした。

  • 修正比較情報の提供を要求するのは、直近比較年度のみに限定する。ただし、企業が選択した場合、当該情報はそれより前の比較年度についても提供することができる。直近比較年度より前の比較情報が修正再表示されていない場合は、その旨を財務諸表本体で明示しなければならない。
  • IFRS第12号を最初に適用する年度に限り、比較情報に関しては、当該IFRSに基づく非連結ストラクチャード・エンティティに関する開示は要求されなくなった。

初度適用企業のための免除規定

IASBは、審議の中で、IFRSの初度適用企業にも同様の免除規定を設けるべきかどうかを検討した。IASBは、初度適用企業による遡及適用に関する論点はIFRS第10号に固有のものではなく、より包括的に検討する必要があるとして、現時点ではその決定を行わないことにした。IASBは、将来の検討のために、当該論点について調査を行うことをスタッフに指示した。

発効日

本改訂の発効日は、IFRS第10号、IFRS第11号及びIFRS第12号の発効日と同一とされた。すなわち、企業は本改訂を2013年1月1日以降開始する事業年度から適用することが要求される。企業がそれより前にIFRS第10号を適用する場合、これらの改訂も併せて適用しなければならない。