新日本有限責任監査法人
国際財務報告基準
(IFRS、国際会計基準)
米国の動向

米国SEC、IFRSを「組込導入」の方向へ

2012.02.23

2月20から21日の両日、ロンドンで開かれたIFRS諮問委員会で、米国証券取引委員会(SEC)から久しぶりに米国における国際会計基準(IFRS)の利用に関してきわめて前向きな発言がありました。

重要ポイント
  • SECはIFRSに対する支持を再確認した。
  • 今後5年から7年をかけ、米国基準を段階的に「IFRS化」していく。
  • コンバージェンスとは異なる。
    • 類似する基準を開発するのではなく、IFRSの規定が存在する分野は現行基準をIFRSに入れ替えていくアプローチである。
    • 現在の米国基準が残るのは原則としてIFRSに規定がない分野のみである。
  • アドプションとは異なる。
    • ある一時点をもってIFRSの全基準を適用するビッグバン・アプローチではない。
    • 新たに組み込まれるIFRSの規定が遡及適用されないこともありうる。
    • 企業は「IFRSに準拠」しているということはできない。

我が国における一部の報道では、米国におけるIFRS適用に関するSECの決定が今年に延期されたことをもって、アメリカがIFRSに対して消極的な姿勢を示していると受け止める向きもありましたが、会議の席上においてSEC主任会計士であるジム・クローカー氏はこうした見方を否定するとともに、SECのIFRSに対する積極的支持を再確認しました。また、いまだ検討段階にあるものの、今後の米国におけるIFRSの導入に向け、SECが考える方向性についての説明がなされました。以下は氏の発言の要約です。

  • SECは昨年末にIFRSの国内導入に関する決定を数カ月遅らせることを発表したが、これは単にドッド・フランク法等、他の案件の対応に人や時間をとられたためである。決して、SECのIFRSに対する支持が揺らいでいるであるとか、SECがIFRSに対して暗に否定的なメッセージを発しようとしているなどと捉えてはいけない。SECのスタッフは現在も鋭意作業中であり、今後数か月内に最終報告書並びに法令案を完成の上、これをSEC理事会に提出の予定である。
  • SECは、米国におけるIFRSの導入を、米国基準への段階的組み込みを通じて実現していくことを決定する予定である。
  • 近年においてIFRSと米国基準とのコンバージェンスがさらに進んだことは、今般、SECがこのような前向きな決定を行うに当たり、大きく影響した。
  • 米国における制度会計に関し、今後も最終的な責任はSECが持つことに変わりはない。したがって、米国は(欧州や豪州と同様に)IFRS各基準の国内使用にかかる承認権限を留保することになるが、具体的な評価作業はおそらくFASBが担うことになると考えられる。ただし、ある特定の基準の使用が認められないと判断されるケースは稀であることを想定しており、その場合も当該基準の内容そのものというより、その策定のプロセスが妥当であったか否かに焦点を当てた判断となろう。
  • 現在、米国で上場している外国企業(外国登録企業。以下、FPI)は、「IASBにより公表されたIFRS」をそのまま適用することが求められている。これに対し、今後、米国企業が用いる会計基準については引き続き「米国基準」という名称を用いることとなる。これは、実務においては「米国基準」という用語に直接言及する契約書等が多く存在するため、名称を変更した場合に無用な混乱が生じることが見込まれ、これを避けねばならないからである。
  • 具体的な導入アプローチとしては、今後5年から7年ほどの時間をかけてIFRSを米国基準に徐々に取り込んでいくことになる。よって、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」に基づく一斉遡及適用は行われない。
  • SECのスタッフは、IASBのデュー・プロセス(一連の正式な基準開発手続)への参加を通じ、今後もIFRSの開発に対する強い影響力の保持を予定しているものの、これは他国の基準設定機関や規制当局と同様であり、足並みをそろえ、ともに協調していくことを前提としている。
  • 今後解決していかねばならない会計上の主な論点としては、料金規制事業会計及び投資会社会計を挙げることができる。もっとも、米国で後入先出法を廃止するとなれば、新たに総額で$500億の税負担が生じることになるため、これが意外に大きな問題に発展する可能性もある。
  • 当面の間、国内企業のIFRS任意適用は認めない方向である。これは、米国で全上場企業の完全なIFRSへの段階的移行の方針が固まってからあらためて検討される。なぜなら、任意適用を容認した場合、米国市場において2つの会計基準が長期間混在することになり、投資家のニーズに反するためである。すでにFPIが米国市場においてIFRSをそのまま用いている以上、この指摘は当たらないとする向きもあるかもしれないが、その数は登録企業全体から言えば僅少であり、影響は軽微と考えられる。
  • 現段階では、FPIが引き続き純粋なIFRS(IASBにより公表されたIFRS)を適用していくことが認められるのか、それとも今後は「米国版IFRS」への変更が強制されるのかについて、SECのスタッフは何ら決定していない。

クローカー氏のスピーチ全体を通じてもっとも印象的だったのは、米国におけるIFRSの導入に関して、終始前向きな論調が貫かれていた点です。とはいえ、氏の発言から間接的に分かることはIFRSと米国基準との間の一部の差異(IFRS第1号の非適用など)は今後も残ることになるため、米国企業は純粋なIFRSに対する準拠性を謳うことができない点であり、注意が必要です。

また、IFRS財団によるモニタリング・ボードの改革が現在、議論されていますが、ここではIFRSの「国内使用」に対する確約をそのメンバーシップの要件の1つとすることが検討されています。ここでいう、IFRSの「国内使用」がどこまでのIFRSの国内導入を想定しているのかは特定されていませんが、今般示されたSECの姿勢は、我が国においてもこのコミットメントを充足するための一つの水準として意識されることになるでしょう。


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