第12部 収益(1)
「収益」の部では、5回にわたり、収益に関する会計基準について想定される主な実務上の論点に触れていきます。第1回から第4回までは、以下で規定している収益に関する現行の会計基準について説明し、第5回で現在提案されている新しい収益認識モデルについて説明します。
- IAS第11号「工事契約」
- IAS第18号「収益」
- IFRIC第13号「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム」
はじめに
IAS第18号「収益」では、以下の取引および事象から生ずる収益の会計処理を定めています。
- 物品の販売
- 役務の提供
- 利息、ロイヤルティ、および配当を生ずる企業資産の第三者による利用
このうち役務の提供とは、典型的には、契約上合意された業務を合意された期間を通じて企業が履行することをいいます。役務の提供のうち請負建設工事契約等の工事契約に直接関連する役務を提供する施工者の会計処理についてはIAS第11号「工事契約」が適用されます。工事契約については第4回で説明します。
また、次のものから生じる収益については他のIFRS基準書で規定されており、IAS第18号の適用対象外となります。
- リース契約(IAS第17号「リース」を参照)
- 持分法で会計処理される投資から生じる配当(IAS第28号「関連会社に対する投資」を参照)
- IFRS第4号「保険契約」の範囲に含まれる保険契約
- 金融資産および金融負債の公正価値の変動またはそれらの処分(IAS第39号「金融商品:認識及び測定」を参照)
- その他の流動資産の価値の変動
- 農業活動に関連する生物資産の当初認識及び公正価値の変動(IAS第41号「農業」を参照)
- 農産物の当初認識(IAS第41号「農業」を参照)
- 鉱物の採取
収益とは
IAS第18号で収益とは、持分参加者(株主)からの拠出に関連するもの以外で、持分の増加をもたらす一定期間中の企業の通常の活動過程で生ずる経済的便益の総流入とされています。
企業にとっての持分の増加をもたらす経済的便益の総流入と定義されているため、売上税、付加価値税や日本の消費税のように第三者のために回収する金額は企業に流入する経済的便益ではないため収益から除外されます。
代理人としての収益
企業が代理人として取引先から回収した経済的便益の総流入は、本人当事者のために回収したものであり、企業の持分の増加をもたらすものではないため収益として計上されません。この場合は本人当事者から受け取る手数料部分のみを収益として計上することになります。
企業の行動が本人当事者としてのものか、代理人としてのものかについては判断を要しますが、企業が財貨の販売やサービスの提供に関連する重要なリスクと経済価値にさらされる場合は、本人当事者として行動しているとみなされます。具体的には以下の指標により判断することになります。商社取引や百貨店や総合スーパー等におけるテナントの取引などがこれに該当するか留意が必要です。
- 財貨またはサービスの提供または注文を履行する主たる責任の有無
- 在庫リスクの有無
- 価格決定権の有無
- 顧客の信用リスクの有無
収益の測定
収益は、受領した、または受領可能な対価の公正価値(値引きおよび割戻しの額を控除後)により測定する必要があります。公正価値とは、取引の知識がある自発的な当事者の間で、独立第三者間取引条件により、資産が交換され、または負債が決済される価額とされています。
日本の実務に照らした場合、取引先に対する売上割戻・販売報奨金といった名目で支給される販売インセンティブの取扱いに注意が必要です。実務上販売インセンティブを販売費として計上する会計処理が見られますが、その実質を吟味し、実質的な売上の割戻しなのか、取引先の販売費の補填であるのか判断する必要があります。取引先の販売費の補填であることが明らかな場合を除き、販売インセンティブは収益から控除して会計処理することになります。
また、長期分割回収のように収益に係る対価の流入が繰り延べられる場合、取引金額には将来の金利を含むことになりますので、収益の額は割引計算により現在価値を算定して収益を計上する必要があります。
次回は、収益の認識にあたっての取引単位の識別、および物品の販売における収益の認識基準を説明します。