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第11部 従業員給付(3)

今回は、IAS第19号が規定している従業員給付のうち、退職後給付以外の従業員給付について解説します。

はじめに

IAS第19号は退職後給付以外に以下のような従業員給付について規定しています。

  • 短期従業員給付
  • その他の長期従業員給付
  • 解雇給付

短期従業員給付-概要

短期従業員給付とは、従業員が関連する勤務を提供した期間の終了日から12ヶ月以内に、決済される予定の従業員給付(解雇給付を除く)です。短期従業員給付の債務・費用は、従業員が企業に関連する勤務を提供したときに認識します。通常、期末日後12ヶ月以内に決済されるので割引は実施せず、また数理計算上の仮定を行わないことから、数理計算上の差異の発生がありません。短期従業員給付には、以下が含まれます。

  • 賃金、給料及び社会保障のための掛金
  • 期末日後12ヶ月以内に取得が予測される短期有給休暇
  • 期末日後12ヶ月以内に支払うべき利益分配及び賞与
  • 現在の従業員に対する現物支給(医療給付、住宅、自動車等)

本稿では、このうち短期有給休暇の会計上の取扱いについて説明します。

短期従業員給付-短期有給休暇

短期有給休暇には、当期の権利を完全に消化しなかった場合に繰り越すことができ、将来の取得が可能な「累積型」と繰り越されない「非累積型」があります。累積型には退職時に未消化の有給休暇を企業が買取る場合と買い取らない場合がありますが、いずれの場合も、費用及び負債を計上する必要があります。

累積型では、給付の対象となる勤務を従業員が提供した報告期間の期末日現在で、未消化の有給休暇日数の給与相当額を全て費用及び負債として計上します。ただし、買い取らない場合は、未消化の有給休暇日数のうち翌年に消化されるであろうと予測される日数を計算し、この日数の給与相当額を費用及び負債として計上します。他方、非累積型では期間と従業員が提供した勤務が直接連動するわけではないため、従業員が休暇を取得した時点でのみ認識されます。

日本基準においては有給休暇の会計上の取扱いについての規定はありません。実際には日本では有給休暇が従業員の勤務に応じて付与され、消化されずに繰り越されることが一般的であることから、IAS第19号を適用した場合、将来消化されると見込まれる有給休暇について、期末日時点で測定し、将来の債務として認識する必要が生じます。

その他の長期従業員給付

その他の長期従業員給付は、従業員が関連する勤務を提供した期間の期末後12ヶ月以内に、決済される予定でない従業員給付(退職後給付及び解雇給付を除く)のことです。IAS第19号では、長期従業員給付として、「長期勤務休暇又は研究休暇のような長期有給休暇」、「記念日又は他の長期勤務給付」、「従業員が勤務を提供した期末後12ヶ月以降に支払われる利益分配及び賞与」等を例示し、会計処理を規定しています。

長期従業員給付は、短期従業員給付と異なり、割引後の金額で測定されますが、退職後給付の測定ほど不確実性の問題はなく、その他の長期従業員給付の導入又は変更が、多額の過去勤務費用を発生させることはほとんどないと考えられ、退職後給付の場合と異なり、数理計算上の差異及び全ての過去勤務費用を直ちに認識します。

解雇給付

解雇給付とは、「通常の退職日より前に従業員の雇用を終了するという企業の決定」、または「当該給付の見返りに自主退職を受け入れるという従業員の決定」のいずれかの結果として支払うべき従業員給付です。負債を生じさせる事象は、従業員による勤務提供ではなく解雇であるため、IAS第19号では、他の従業員給付とは別個に扱っています。

解雇給付は、退職後給付の割増額、従業員が企業に経済的便益をもたらす勤務をもはや提供しない場合の特定の予告期間の末日までの間に支払われる給与等も該当します。解雇給付については期末までに、以下のいずれかを「余儀なくされたと証明できる場合」にのみ、負債として計上する必要があります。「余儀なくされたと証明できる」とは、解雇の詳細かつ正式な計画を有し、撤回する現実的な可能性を有しない場合をいいます。

  • 従業員若しくは従業員グループの雇用を通常の退職日前に終了すること
  • 自発的退職を勧奨するために行った募集の結果として解雇給付を支給すること

自発的退職の勧奨に係る解雇給付額の場合、勧奨を受け入れると見込まれる従業員数を基礎とし、決算日から12ヶ月後以降に解雇給付の期日が到来する場合には、割引後の金額で計上されます。

日本でもリストラを行うことになった場合、解雇給付に該当する事象が発生する可能性がありますが、日本の基準では、解雇給付に関する明示的な規定はありません。

今回で、第11部「従業員給付」は終了です。次回は、「収益」です。

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