IAS第12号「法人所得税」の改訂

国際会計基準審議会(以下、IASB)は、公正価値で測定される投資不動産の繰延税金の測定に関して、「繰延税金:原資産の回収(IAS第12号の改訂)」を2010年12月20日に公表した。本改訂により、IAS第16号「有形固定資産」の再評価モデルを用いて測定される非償却性資産に関して、SIC第21号「法人所得税:再評価された非減価償却資産の回収」の規定がIAS第12号に取り込まれている。本改訂は、2010年9月にIASBから公表された公開草案(ED/2010/11)「繰延税金:原資産の回収(IAS第12号の改訂に関する提案)」に関して受領したコメントを考慮して、一部修正のうえ公表された。本改訂は、IAS第40号「投資不動産」の公正価値モデルを用いて測定される投資不動産に関して、現在、自身の課税国において、その予測される回収方法を判断することが困難で、その予測が主観的にならざるを得ない企業に対して、実務的なアプローチを提供することを目的としている(特に、資産を事業目的で使用、あるいは耐用年数の途中で売却するかにより、損金算入限度額や適用税率などが異なる課税国で問題が生じている)。

概要

IAS第12号の主な改訂内容は以下のとおりである。
  • IAS第40号の公正価値モデルを用いて測定される投資不動産に関する繰延税金は、投資不動産の帳簿価額が売却を通じて回収されることを前提に測定されるという、反証可能な前提が追加された。
    さらに、
  • IAS第16号の再評価モデルを用いて測定される非償却性資産に関する繰延税金は、常に売却を前提として測定されるという規定が、SIC第21号からIAS第12号に取り込まれた。

本改訂の適用範囲は上記資産に限定されるが、投資不動産が企業結合後に公正価値モデルを用いて測定される場合は、企業結合で取得した当該投資不動産に関する繰延税金の測定についても適用される。

重要ポイント
  • 本改訂は、IAS第40号の公正価値モデルを用いて測定される投資不動産、及びIAS第16号の再評価モデルを用いて測定される非償却性有形固定資産を有するすべての企業に適用される。
  • 公正価値で測定される投資不動産に関する繰延税金は、原資産(投資不動産)の帳簿価額が売却を通じて回収されるという反証可能な前提を用いて測定することが要求される。
  • ただし、投資不動産が償却性資産であり、かつ、その経済的便益のほとんどすべてを売却ではなく、時の経過に伴い費消することを目的とするビジネス・モデルで保有されている場合には、上記前提は反証される。
  • IAS第16号の再評価モデルを用いて測定される非償却性資産の繰延税金は、常に売却を前提として測定される。

公正価値モデルを用いて測定される投資不動産の反証可能な前提

IAS第12号の基本原則のひとつは、繰延税金の測定を行うにあたって、予想される原資産又は負債の帳簿価額の回収又は決済の方法を反映することである。償却性資産について、IASBは、減価償却計算で要求される見積りは予想される回収方法を決定するものであり、その結果、償却可能額部分についてはその帳簿価額は使用を通じて回収され、残存価額部分についてはその帳簿価額は売却を通じて回収されるべきと考えている。しかし、IASBは、IAS第40号の公正価値モデルを用いて測定される投資不動産については、原資産(投資不動産)の測定に適用される会計上の見積りと、関連する繰延税金の測定にあたって用いるべき回収方法との間に、明確な関連性を見出すことがより困難であることを認識している。

この問題を解決するため、改訂IAS第12号は、IAS第40号の公正価値モデルを用いて測定される投資不動産の帳簿価額は売却を通じて回収され、その結果、すべての関連する繰延税金は売却を前提として測定されるべきとの反証可能な前提を追加している。ただし、投資不動産が償却性資産であり、かつ、その経済的便益のほとんどすべてを売却ではなく、時の経過に伴い費消することを目的とするビジネス・モデルで保有されている場合には、上記前提は反証される。

公開草案では、売却による回収の前提を反証するためには、資産の耐用年数を通じて、その経済的便益が費消される「明確な証拠」が要求されていた。しかしながら、「明確な証拠」という用語の意味するところが曖昧であるため、ある企業はこの要件の充足は困難であると解釈する可能性がある一方で、他の企業は意図した望ましい会計上の結果を達成するために、明確な証拠を準備するかしないかを選択することで当該要求を乱用する可能性があるという懸念がコメント提出者から指摘されたことをふまえ、本改訂から当該要求は除外された。「ビジネス・モデル」という用語は、IFRS第9号「金融商品」ですでに存在するものであり、また、ビジネス・モデルに依拠することで、反証可能か否かを個々の資産に関する経営者の意図に依存しない方法で判断することが可能となるため、本改訂で追加されることになった。

IASBは、上記要件をみたすビジネス・モデルの例を提供していないが、反証可能な水準を「ほとんどすべて(Substantially all)」に設定したことで、企業が一部は売却を通じて、一部は使用を通じて回収することを予想している場合であっても、公正価値で測定される投資不動産の帳簿価額のすべてが、売却を通じて回収されると推定される場合があることを認識している。

IAS第16号の再評価モデルを用いて測定される資産(SIC第21号のIAS第12号への取り込み)

本改訂によってSIC第21号は廃止されたが、その規定していた内容は、公正価値で測定される投資不動産をその適用範囲から削除した上でIAS第12号に取り込まれた。その結果、IAS第12号は特に、IAS第16号の再評価モデルを用いて測定される非償却性資産に関する繰延税金については、常に売却を通じた原資産の帳簿価額の回収に基づく税務上の結果を反映させることを要求している。この要求は土地についても適用され、新設されたIAS第12号第51C項の設例で明示されている。

弊社のコメント

公正価値で測定される投資不動産に関して、予想される回収方法を判断することが困難であった企業にとっては、本改訂は歓迎されるべきものである。すでに投資不動産に関する繰延税金の測定方法を明確に判断できている多くの企業にとっては、本改訂による影響は生じない。しかし、公正価値で測定される帳簿価額の「ほとんどすべて」ではなく、その一部が使用を通じて回収されるという予想に基づいて、繰延税金を測定していた企業については、本改訂による影響が生じる可能性がある。

繰延税金資産の認識に関して、改訂前IAS第12号の原則は引き続き適用される。特に企業は、認識すべき繰延税金資産の金額を判断するにあたって、適切な期間に課税所得を生じさせるタックス・プランニングの実行が可能か否かを考慮する必要がある。

発効日

本改訂は、2012年1月1日以後に開始する事業年度から適用されるが、早期適用も認められる。本改訂を早期適用する企業は、その事実を開示する必要がある。



情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?