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重要な論点

米国財務会計基準審議会(以下、FASB)の予備的見解が採用されれば、保険契約の測定及び報告に大きな影響が及ぶこととなるだろう。予備的見解の採用により見込まれる重要な変更は以下のとおり:

  • 発行体を基準とした会計処理に係るガイダンスは、契約を基準としたガイダンスに置き換わる。
  • 複数の測定モデルは、単一の測定モデルに置き換わる。
  • 測定モデルの種類によっては、損益計算書における従来の勘定科目(たとえば、収入保険料や支払保険金)がなくなることとなる。

本ディスカッション・ペーパーに対して寄せられるコメントがFASBの審議に影響を及ぼし、さらに将来の公開草案の提案内容にも影響を与えうることに留意しなければならない。したがって、関係各位が本ディスカッション・ペーパーに対してコメントを提出し、FASBの審議プロセスに参加することが強く推奨される。

背景

FASBは、保険契約の会計処理に関するディスカッション・ペーパー1を公表した。本ディスカッション・ペーパーは、国際会計基準審議会(以下、IASB)との共同プロジェクトの結果として公表されたものである。IASBは、2010年7月30日に保険契約の会計処理に関する公開草案2を公表した。

本ディスカッション・ペーパーでは、IASB公開草案の主要な論点の概要がまとめられており、公開草案の提案内容とFASBによる代替的な予備的見解との比較が行われている。

たとえば、IASBは2つのマージン(すなわち、リスク調整と残余マージン)によるアプローチに基づく測定モデルを提案しているが、FASBは複合マージン・アプローチに基づく測定モデルを提案している。また、本ディスカッション・ペーパーでは、IASBが提案しているアプローチ及びFASBの予備的見解とAccounting Standards Codificationのトピック944「金融サービス-保険」(ASC 944)における現行のガイダンスとの比較が示されている。コメント募集期限は2010年12月15日である。3

公開草案が採用された場合、暫定的な基準書である国際財務報告基準第4号「保険契約」(IFRS第4号)に代わるものとなる。新基準書は、保険契約に関する国際的に一貫した単一の認識及び測定基準となる。IASBは、2010年11月30日までコメントを受け付けている。

本稿は、本ディスカッション・ペーパーの主要な論点を要約したものである。IASBの公開草案の概要については、2010年7月発行の「保険IFRSアラート特別版」を参照されたい。

  1. ディスカッション・ペーパー「保険契約に関する予備的見解」
  2. 公開草案「保険契約」
  3. FASBとIASBは、2010年12月に公開ラウンドテーブルを数回開催する予定である。ラウンドテーブルへの参加を希望する企業は、2010年11月30日までに本ディスカッション・ペーパー及び公開草案に対するコメントを提出しなければならない。

保険契約の定義

ASC 944は、保険会社の会計処理に関するガイダンスを定めている。したがって、保険契約に類似する契約であっても、保険会社が発行したものでない場合には、同じ会計処理は適用されない。FASBは、IASBの保険契約に関するプロジェクトに参加するにあたり4、同一又は類似の経済的特徴を有する契約が、その発行体に関係なく同じように会計処理されるようにASC 944を改善したいと考えていた。そのため、FASBとIASBは、保険契約を以下のとおり定義するよう提案することを決定した:

「ある主体(保険者)が、他の主体(保険契約者)から、特定の不確実な将来事象(保険事故)が保険契約者に不利益を与えた場合に保険契約者に補償を行うことを同意することにより、重要な保険リスクを引き受ける契約」

この定義に基づくと、ある契約が保険契約となるのは、「重要な保険リスク」を移転する場合のみである。保険リスクとは、契約保有者から保険者に移転する金融リスク以外のリスクであり、商業実態を伴わないシナリオを除いたいずれかのシナリオにおいて、保険事故が保険者に重要な追加給付を負担させる場合にのみ「重要」となる。保険契約は、正味キャッシュ・アウト・フローの現在価値が、キャッシュ・イン・フローの現在価値を上回るシナリオが1つも存在しない場合、保険リスクを移転しているとは看做されない。

  1. FASBは、IASBの保険契約プロジェクトに2008年の第4四半期から参加している。
EYのコメント

本ディスカッション・ペーパーにより、保険会社が発行する契約のみがASC 944の保険契約の会計処理に従わなければならないとの概念が取り除かれることになる。多くの非保険会社が、保険契約の定義に合致し、保険会社が発行する契約に類似した契約を有していると思われる。たとえば、現行のASC 944が適用されない第三者に対する保証契約及びヘルスケア契約(医療制度に基づく契約)は、提案されている保険契約の定義を満たすと考えられる。

適用範囲

本ディスカッション・ペーパーの適用範囲には、保険の定義を満たす保険者が発行した契約及び保険者が保有する再保険契約が含まれる。

本ディスカッション・ペーパーは、その適用範囲から以下の契約を除外することを提案している:

  • 製造者、ディーラー又は販売者によって発行された製品保証契約
  • 従業員給付制度に基づく雇用主の資産及び負債
  • 非金融商品の将来の使用、又は使用権を条件とする契約上の権利及び義務
  • リース契約における残価保証、又は製造者、ディーラーもしくは販売者によって提供された残価保証
  • 固定料金サービス契約。ただし、保険者が発行している場合を除く
  • 企業結合において支払う又は受け取る条件付対価
  • 報告企業が保険契約者である元受保険契約

適用範囲に関する本ディスカッション・ペーパーと公開草案の重要な相違点は、FASBが保険契約の基準書の適用範囲から裁量権のある有配当性を持つ金融商品を除外すると決定したことである。裁量権のある有配当性により、契約の発行者は、保証された給付を上回る追加給付の金額及び発生時期に関して裁量を持っている。当該特性は、ヨーロッパの金融商品でより多くみられる。

アンバンドリング

保険契約には、保険による保障(補償)、投資(金融)要素や組込デリバティブといったさまざまな要素が含まれていることがある。保険契約を測定する際に、契約のそのような要素を区分して識別及び測定すべきか、区分して識別及び測定する場合にどのような方法によるのかという問題が生じる。

本ディスカッション・ペーパーは、契約で特定されている保障(補償)内容に密接に関連しない要素をアンバンドルするよう提案している。アンバンドルすべき要素の例として、本ディスカッション・ペーパーは以下のようなものを挙げている:

  • 明示的なリターンが賦与される勘定残高を反映する投資要素で、その賦与利率が対応資産の投資パフォーマンスに基づいて決定されるもの
  • 現行の区分処理に係るガイダンスに従い主契約から区分して処理することが求められる組込デリバティブ
  • 保障(補償)内容と密接に関連しない財又はサービス

本ディスカッション・ペーパーは、要求される場合を除いて、アンバンドリングを禁止することを提案している。

認識

本ディスカッション・ペーパーでは、企業は保険契約上の義務を契約の当事者になった時点で認識しなければならないと提案されており、当該時点とは、以下のいずれか早い時点とされている:

  • 契約を締結したとき
  • 契約に基づくリスクを負ったとき(すなわち、保険者が義務を免れることができず、特定の保険契約者のリスクを再査定できなくなった時点)

保険契約の初期認識は、必ずしも保障(補償)期間の開始時点で行われるわけではない。したがって、保険契約は、保障(補償)期間の開始以前に認識される場合がある。


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