重要ポイント
- IASBとFASBは、共同で公表した収益認識に関する再公開草案の審議において、関係者から寄せられたフィードバックを引き続き検討している。
- 両審議会は、知的財産のライセンスに対し支払われる売上に基づくロイヤルティの収益認識に関する規定を削除することを暫定的に決定した。
- 両審議会は、取引価格の区別できる履行義務への配分に関する原則をどのように適用すべきかについて明確にした。両審議会はまた、これらの原則は業種に関係なくすべての取引に適用されなければならないと暫定的に決定した。
- 両審議会は、企業は直接的で、追加的に発生し、かつ回収可能な契約獲得コストを資産化しなければならないとする決定を再確認した。
概要
国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、総称して「両審議会」)は共同で公表した収益認識に関する再公開草案について引き続き審議を行っている。
12月に開催された合同会議において、契約獲得コストの会計処理、ライセンスされた知的財産に関する収益認識累計額に係る制限、及び取引価格の配分について、両審議会の議論に進展がみられた。
両審議会が2011年11月に公表した再公開草案では、リースなどの他の基準書の適用範囲に含まれる契約を除き、顧客との契約から生じるすべての収益に関する会計処理が定められている。両審議会は2012年7月に再審議を開始し、関係者がコメント・レターの中で提起した問題点の解決に取り組んでいる。
両審議会は当初再審議を2012年12月までに完了させる予定であったが、現在では再審議は2013年にまでかかるであろうと見込んでいる。しかし両審議会は、依然として収益認識に関する新たな基準書を2013年上半期に公表する予定である。
両審議会は契約獲得コストを
資産化しなければならないとする決定を再確認した。
暫定的決定
これまでの暫定的決定
両審議会がこれまでに行った暫定的決定の多くは、再公開草案における原則を変更するものではなく、むしろそれらを明確化するものであるが、以下のような原則に対する重要な変更も暫定的に決定されている。1
- 不利な履行義務に関する損失の測定及び認識を求める提案を削除する。
- (契約に重要な財務要素が含まれているか否かにかかわらず)顧客の信用リスクの影響を、包括利益計算書上、収益のすぐ下に表示するのではなく、独立した費用項目として明示的に表示する。
- 履行義務を充足した時(ステップ5)ではなく、取引価格を見積る際(ステップ3)に、企業は収益認識に関する制限(以下に詳しく説明している)を適用しなければならない。
両審議会による再審議計画については、付録を参照されたい。
収益認識累計額に係る制限
再公開草案によれば、企業が受け取る権利を有すると見込む対価の金額が変動する場合、認識する収益の累計額が制限されることがある。変動する対価をいつ認識すべきかを判断するにあたり、企業は過去の契約実績、及びその実績に基づき企業が受け取る権利を有する対価の金額を予測できるかどうかを検討することになる。また再公開草案には、知的財産のライセンスに対し支払われる売上に基づくロイヤルティに関する制限も含まれていた。
多くの関係者が、ライセンスされた知的財産に関する制限を個別に設けることの必要性について疑問を呈した。彼らは、こうした制限はライセンスされた知的財産に関するものだけでなく、すべての売上に基づくロイヤルティに係る取決めに適用されるべきであると考えている。
関係者からのフィードバックを踏まえて、両審議会は、知的財産のライセンスに対する売上に基づくロイヤルティに関する制限を削除することを暫定的に決定した。その代わりに両審議会は、企業に受け取る権利を有する対価を予測できるような実績があるのかどうかを判断する際の指標を(収益認識に関する一般的な制限の規定において)明確化する予定である。当該指標が売上に基づくロイヤルティの取決めに対しても適用されることになる。また両審議会は、最終基準書に設例を設けて、そうした制限が売上に基づくロイヤルティに係る取決めにどのように適用されるのかを説明する可能性もある。
契約獲得コスト
再公開草案では、企業は回収可能な契約獲得コストを資産化しなければならないとされている。しかし、契約期間が1年以内である場合には、企業は契約獲得コストを発生した期に費用処理することを選択できる。
この提案には一定の支持があった一方、これに対し懸念を表明し、契約獲得コストを資産化するか又は費用処理するかについては、企業が会計方針として選択できるようにすべきであると提案する者もいた。
両審議会は、契約期間が1年を超える場合には、企業は直接的で、追加的に発生し、かつ回収可能な契約獲得コストを資産化しなければならないという決定を再度確認した。両審議会は、すべての契約獲得コストを発生時に費用処理するという案も検討した。これは、2010年に公表された当初の公開草案で提案された処理であったが、ほとんど支持を得られなかった。それゆえ、両審議会はこの案を棄却した。
弊社のコメント
両審議会が再確認した2011年に公表された再公開草案における提案は、現在契約獲得コストを費用処理している企業にとって、大きな変更点となるであろう。今後はすべての企業が、契約獲得コストを資産化しなければならなくなる。
両審議会は、取引価格の配分に関する原則は、
業種に関係なくすべての取引に適用されることを暫定的に決定した。
取引価格の配分
再公開草案によれば、企業は(受け取る権利を得ると見込む)対価合計を相対的な独立販売価格に基づき区別できる各履行義務に配分しなければならないが、一定の要件を満たした場合に値引き及び/又は変動する対価を1つ(又は複数)の履行義務に配分することを求める例外規定が存在する。
電気通信業界の関係者は、各履行義務の独立販売価格に基づき取引価格を配分することは、実務で適用するには費用がかかり、また携帯電話と無線サービスのセット販売を含む契約の経済実質を反映することにならないと懸念を表明した。というのも、再公開草案の下では、現行実務に比べ、より多くの収益が携帯電話の販売時点で認識される一方、無線サービスの提供期間にわたり認識される収益が少なくなってしまうからである。両審議会は、再審議の過程で、取引価格の配分に関する原則は業種に関係なくすべての取引に適用されるべきであると暫定的に決定した。すなわち、最終基準書には、電気通信業界に関連しこの収益認識モデルに対する例外規定が設けられることはない。
関係者の中には、残余法が自社の取決めにどのように適用されるのか、及び相対的な独立販売価格に基づく取引価格の配分に対する例外規定がどのように適用されるのかに関して、明確化を求める者もいた。両審議会は、再審議において、取引価格を区別できる履行義務に配分する原則をどのように適用すべきかについて明確化した。これには、値引き及び/又は変動する対価を複数の履行義務に配分できるという明確化も含まれる。
次のステップ
再審議は2013年の初めまで引き続き行われるが、両審議会は依然としてこの新たな基準書を2013年上半期に公表することを目標としている。
付録
以下の表は両審議会による再審議の状況をまとめたものである。
| |
再審議項目 |
| 7月 |
独立した履行義務の識別 |
| 履行義務の充足 |
| 不利性に関する判定 |
| 9月 |
貨幣の時間的価値 |
| 売手によるノン・リコースの金融取引を含む顧客との契約 |
| 契約に関する論点-契約の結合及び販売ネットワーク |
| 10月 |
契約の変更 |
| 進捗度の測定 |
| 11月 |
回収可能性 |
| 収益認識累計額に係る制限 |
| ライセンス 2 |
| 12月 |
収益認識累計額に係る制限-ライセンス |
| 契約獲得コスト |
| 一部のセット販売契約への影響を含む、取引価格の配分 |
| 将来の会議 |
範囲 |
| 非金融資産 |
| 開示 |
| 経過規定、発効日及び早期適用 |
契約に関する論点を含むその他論点 -クレジット・カード及びアセット・マネージャー |
| 残りの論点及び収益認識基準書の公表に伴う他の基準書への改訂 |
| 費用対効果分析 |