重要ポイント
- IFRS財団は、ガバナンス改革を公表し、モニタリング・ボードを通じたIFRSへの影響力を保持したいのであれば、IFRSを自国の財務報告基準として認めるよう各国に要請することとした。
- モニタリング・ボードのメンバーは、IFRSを採用している、またはIFRSの採用を確約している国・地域の資本市場規制当局の代表者に限定される。新たな要件に照らしたモニタリング・ボードのメンバーの見直しは、2013年初めに行われる予定である。
- 評議員会は、IASBが公表したIFRSが改変されることなく世界中で適用されることが最終目標であると強調している。
- 評議員会は、高品質で、明確かつ理解可能な基準が首尾一貫して適用されるように尽力することを確約した。
概要
IFRS財団は2012年2月9日、「IFRS財団のガバナンス見直しに関する最終報告書」(以下、「ガバナンス・レポート」)、及び「評議員会の戦略見直しに関する2011年報告書-グローバル・スタンダードとしてのIFRS:IFRS財団における次の10年の戦略設定」(以下、「戦略レポート」)という2つの報告書を公表した。本報告書をもって、IFRS財団のモニタリング・ボードと評議員会が2010年から別々に行っていた、組織のガバナンス及び戦略の見直しは終了する。
本報告書の中で特に注目すべき点は、IFRS財団における国際会計基準審議会(IASB)、評議員会、及びモニタリング・ボードのメンバー構成及びガバナンス構造について見直されたことである。報告書では、モニタリング・ボードのメンバーを、その資本市場でIFRSを採用しており(採用を確約している場合も含む)、かつIFRS財団に資金を拠出している国・地域の代表者に限定することが望ましいとしている。また、資本市場規制当局以外の利害関係者を、モニタリング・ボードのメンバーには加えない旨も決定された。
弊社のコメント
モニタリング・ボードのメンバーに関する要件が変更されたことにより、影響を受ける国・地域は、引き続き代表者を確立するために、自国でIFRSを採用することを確約しなければならない。しかし、影響を受ける国・地域が判断する時間を与えるために、「自国でのIFRSの採用」という要件の具体的内容はまだ決定されていない。現在のメンバーの見直しは、2013年初めの予定であるため、影響を受ける国・地域は、それまでに何らかの形でIFRSの採用に関する判断を発表することになるだろう。
上記に加え、高品質で、明確かつ理解可能な基準が首尾一貫して適用されるように、評議員会が尽力するとした点も重要である。これは、IFRSの品質及び首尾一貫した適用についての懸念に対する評議員会のメッセージである。
報告書公表の背景
ガバナンス及び戦略の見直しは、IFRS財団が直面している数々の課題に対応するために、コンバージェンスとアドプション、基準の品質維持と運用、ガバナンスと説明責任といった分野において行われた。
近年、多くの国がIFRSを採用、またはIFRSの採用を検討していることで、IFRS財団は、IFRSを単一のグローバルな会計基準にするという目標に近づきつつある。その目標の達成につなげるため、ガバナンス及び戦略の見直しには、IFRS財団のガバナンスが独立性と説明責任のバランスを適切に保っていることを保証する狙いがある。
モニタリング・ボードが行った見直しでは、モニタリング・ボード、IASB及び評議員会のメンバー構成や役割といった、主にガバナンスの組織面が重視された。一方、評議員会が行った見直しでは、基準設定機関のデュー・プロセスなど、ガバナンスの運用面がより重視された。
報告書の主な内容
モニタリング・ボードのメンバー構成は、本報告書の中でも重要な決定事項である。これには、ガバナンス・レポートで示されているように、資本市場でのIFRSの採用を確約し、かつIFRS財団に資金を拠出している国・地域の代表者にメンバーを限定するという事項も含まれる。さらに、モニタリング・ボードのメンバーは、財務報告の形式及び内容を定める資本市場規制当局に限定されることになる。これにより、(プルデンシャル規制当局など)多くの利害関係者が対象外となる。ただし、バーゼル銀行監督委員会は、引き続きオブザーバーを務めることになる。上記に加え、モニタリング・ボードのメンバーとして、新たに新興国市場のメンバーが迎え入れられるとともに、証券監督者国際機構(IOSCO)との協議を通じて交代制によるメンバーも配置されることになる。
戦略レポートでは、IFRS財団が、IASBの開発したIFRSが改変されることなく、そのままの形により世界中で適用されるという長期目標に向けて尽力することが強調されている。また報告書では、コンバージェンスによる方法は短期的にはアドプションを円滑にさせる可能性があることが認識されているものの、コンバージェンスをアドプションの代わりと考えるべきではないと明確に述べられている。
IASBのメンバーに求められる主な資格は、引き続き、専門的能力及び経験を有していることである。一部の関係者から、IASB又は評議員会のメンバーについて、IFRSを採用している国・地域の者に限定すべきとする要請があったものの、限定しないことが決定された。しかしながら、IFRSの採用を検討している国・地域からの人選を引き続き求めていくことが強調されている。戦略レポートでは、メンバーの属する国・地域が、グローバルな会計基準の採用に関し、何らかの形で確約しているとの前提に基づき報告書を作成したものと思われる。
戦略レポート、4ページ
「(IFRSの採用に関する)確約がなされない場合、本戦略見直し文書(すなわち戦略レポート)の内容を一部再検討する必要が生じ、IFRS財団の評議員会やIASBのメンバー構成について推奨している地理的配分を変更する可能性がある。」
これ以外に、本報告書では、IFRS財団のガバナンス・プロセスの透明性を改善する提言が数多く行われている。例えば、一般向けの報告を増やすことや、評議員会のデュー・プロセス監視委員会がデュー・プロセスの運用面(例:公開協議、アウトリーチ活動、フィールド・テスト、影響評価)について定期的に報告することが挙げられる。また、IASBの中での議長とCEOの役割が分離される。モニタリング・ボードは、IASBの議題を設定することはできないが、引き続き、会計上の論点を評議員会及びIASB議長に照会し、協議することができる。
弊社のコメント
IASBメンバーは十分な専門知識を有していなければならないことを強調した提言や、モニタリング・ボードのメンバーを引き続き資本市場規制当局に限定するといった提言など、本報告書における決定の多くは、コメント提供者からの幅広い支持を受けており、異論が生じるものではない。上記提言は、全体的にみて、独立性と説明責任のバランスを取るうえで重要であるといえる。
最も議論を呼ぶ可能性があるのは、モニタリング・ボードのメンバーに関する新しい要件である。IFRS財団は、自国におけるIFRSの採用の確約を規定で求める代わりに、「IFRSの採用」を判断するための十分な時間を与え、さらに新たな要件でモニタリング・ボードのメンバーを見直すために多くの時間をかけ、その結果、高品質かつ首尾一貫したIFRSの適用を保証することを確約することで、バランスを保とうとしている。
次のステップ
今回のモニタリング・ボードと評議員会の決定事項は、さまざまな方法で実行に移されることになる。IFRS財団の定款に含められる可能性のある事項もあれば、他のガバナンス文書(評議員会とモニタリング・ボードの覚書やモニタリング・ボードの趣意書など)に反映される事項もある。
モニタリング・ボードは、今回の決定事項の実行に関し、行動計画を策定している。これについては以下にまとめている。
| 2012年 |
2013年初め |
2015年末 |
- (モニタリング・ボードのメンバーに関する要件を含む)ガバナンス文書の改訂を起草し、最終決定する。
- モニタリング・ボードの交代制メンバーの選任に関する要件をIOSCOと策定する。
- モニタリング・ボードの新メンバーの候補者を決める。
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- モニタリング・ボードのメンバーを、改訂後の要件に照らして見直す。
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- 2回目のガバナンスの見直しを、評議員会の定款の見直しと共に完了する。
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