重要ポイント
- IASBは、IFRS第9号の分類及び測定モデルを限定的に改善するという方針を確認した。
- プロジェクト範囲は、特定の3分野に限定されている。
概要
国際会計基準審議会(以下、IASB又は審議会)は、2011年12月13日の会議において、IFRS第9号「金融商品」の分類及び測定モデルを限定的に改善することを検討するという11月15日の暫定決定を確認した。
このプロジェクトの主な目的は、以下のとおりである。
- 保険契約負債と保険契約対応資産の会計処理の相互関係を考慮する
- IFRS第9号の早期適用企業、及び適用準備のために同基準を詳細に検討した企業によって提起された特定の適用上の問題に対処する
- FASB1の金融商品に関する分類及び測定モデルとの違いを検討する
IASBは、このプロジェクトの範囲を、上記の目的を満たす以下の3つのトピックに限定することを決定した。
- その他の包括利益(OCI)を通じた再測定2又は他のビジネス・モデルの導入
一部の負債性金融商品について、その他の包括利益を通じて再測定することを容認又は要求すべきかどうか。容認又は要求すべきである場合、そうした再測定の基礎
- 金融資産の契約上のキャッシュ・フローの特徴
基準の意図する原則の適用方法に関する追加的なガイダンスを設けるべきかどうか
- 混合金融資産の区分処理
契約上のキャッシュ・フローの特徴テストについて設けた追加的なガイダンスを考慮したうえで、区分処理を再度導入する必要があるか否か。ある場合には区分処理の要件
- 米国財務会計基準審議会
- IFRS第9号では、トレーディング目的以外の資本性金融商品については、その他の包括利益を通じた測定オプションがすでに認められている。取消不能なこのオプションを用いた場合には、配当のみが純損益に計上され、評価損益の「リサイクリング」は行われない。
IASBはまた、これらのトピックを取り扱うことにより、IFRS第9号のモデルをFASBの暫定的な分類及び測定モデルに、より整合させることを検討する機会がもたらされるとも述べている。
範囲を限定したのは、それによりIFRS第9号をすでに適用している企業、又は間もなく適用する企業に生じる混乱を最低限にとどめ、また、プロジェクトを適時に完了するためである。
IASBは、変更により、開示、経過措置、減損会計といった他の分野にも影響が派生する可能性が高いことを認識しており、それについて考慮しなければならないとしている。
またIASBは、この見直しの中では、資本性金融商品に対する投資(及びそれらの金融商品で現物決済されるデリバティブ)について、活発な市場における公表価格がなく、公正価値を信頼性をもって測定できない場合には、それらの投資を取得原価で測定することを認めるというIAS第39号の免除規定に類似する規定をIFRS第9号に設けないことを決定した。代わりに、そのような投資の測定については、IFRS第13号「公正価値測定」について作成される教育マテリアルで取り上げることになる。
さらに、この見直しでは、その他の包括利益を通じて公正価値で測定される資本性金融商品に対する投資の認識中止時に、実現損益のリサイクリングを認めるという修正も行われない。IASBは、資本性金融商品をその他の包括利益を通じて測定するという取消不能な選択は、元々は、「政策的」投資を有する企業が、そのビジネス・モデルを適切に反映できるように設けられたものであり、この選択は一般的にはあまり適用されないだろうと考えられていた点に留意した。また、IFRS第9号を早期適用した一部の関係者は、概して資本性金融商品について、その他の包括利益を通じて測定するという選択ができるという点を踏まえた上でその適用を決定しているため、この選択の範囲を変更すると、これらの作成者に重要な影響が及ぶ可能性があることも関係している。
保険契約プロジェクトとの相互関係
2010年7月に公表された公開草案「保険契約」では、保険負債は純損益を通じて再測定しなければならないと提案されていた。このため、それらの保険負債へ対応するように保有されている資産が償却原価で測定される場合には、この提案により会計上のミスマッチが生じる可能性がある。さらにIASBは、保険契約負債の変動のうち、割引率の変動から生じる影響を他の変動から分離し、その他の包括利益に表示するといった方法を検討してきた。
こうした経緯から、IASBは、主に保険契約に対応した一部の金融資産を、純損益ではなく、その他の包括利益を通じて再測定する可能性について再検討するよう要請された。
これについては、近く刊行するIFRS Developments for Insurersで詳しく説明する。
弊社のコメント
その他の包括利益の使用を広げる、又は別のビジネス・モデルの導入を検討するというIASBの決定は、保険契約プロジェクト及び金融商品プロジェクトにとって重要な展開である。その他の包括利益に関する決定によっては、保険プロジェクトにおいて長らく行き詰っていたボラティリティに関する問題が打開され、保険プロジェクトが大きく前進する可能性がある。
また、保険以外の業界が直面していた特定の適用上の論点、たとえば、銀行が流動性リスクを管理するために保有するポートフォリオから生じる潜在的な業績のボラティリティの問題についても解消される可能性がある。このようなポートフォリオ(一般的に「流動性バッファー」と呼ばれる)は、多くの場合、IFRS第9号の「ビジネス・モデル」テストを満たさない。というのも、これらのポートフォリオは、しばしば規制により、流動性があることを示すために、頻繁に売却することを要求されるからである。その結果、これらのポートフォリオ中の資産は、純損益を通じて公正価値で測定され、業績のボラティリティを創出することになる。
その一方で、その他の包括利益の使用拡大は、IASBに対し、検討及び対処しなければならない多くの難しい問題を課すことになる。たとえば、このモデルの適用は任意なのか強制なのか、また、保険会社のみ利用可能とするか、あるいはすべての企業が利用できるとするか。この区分に分類される金融商品について、減損をどのように測定し、認識すべきか。そして、実現損益を純損益を通じてリサイクリングすべきなのかといった疑問である。
アーンスト・アンド・ヤングは、影響を受ける企業に対し、その他の包括利益に関する審議に積極的に参加し、IASBに意見を提示することを検討することを推奨している。