銀行およびその他金融機関が、FATCAが有効となる2013年初旬より前に、どのように効率的にFATCAの重大な課題に取り組むべきかご紹介いたします
米国が新たに施行する「外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act, FATCA)」は、世界各国の金融機関に対し、顧客の詳細な情報を米国の税務当局である「内国歳入局(IRS)」に提出する事を求めています。同法は2013年以降の支払いに適用され、金融サービス業界は大きな負担を強いられることになります。
FATCAに適切に対応するには、以下に挙げた11の課題に取り組む必要があります。
- プログラムのガバナンスおよび責任所在の明確化
ビジネス、オペレーション、コンプライアンスおよび税務の各分野にまたがる全社的な取り組みとして、人や予算を割当て、プロジェクトの責任所在を明確化
- 事業体分析
FATCAの観点から課題となり得る法人の状況(内外子会社の事業内容、ファンド等の有無等)を把握
- 既存口座情報
既存の顧客確認(Know Your Client, KYC)情報で十分である、あるいはKYC情報を多少補強すれば良いという誤った認識が存在する
- 顧客データの集中管理
口座保有者の特定に必要な情報が集中管理され、すぐに利用できる状態にある金融機関は少数である
- タイミング
FATCA対応に残された時間は少なく、今すぐにでも初期対応に必要な作業を開始すべきである。最終規則は未だ発表されていないが、米財務省とIRSは規則案を作成中である
- テクノロジー
新たな報告および源泉徴収義務を、外国金融機関(FFI)と米国金融機関(USFI)のそれぞれのレベルで遂行できるよう、現在連携のない複数システムを見直し・変更する
- 教育
一般に、FATCA制度やこれに伴う義務、さらにはビジネスに与える影響は十分に認識されていない。早期の段階から幹部クラスが関与し、関連する部署への周知徹底を図る
- ベンダー管理
ベンダー側のFATCA対応能力を評価し、協力体制を構築する
- パススル―支払
FFIはパススルー支払割合を四半期毎に公表することが求められるため、定期的に米国資産を特定し計算作業を行う必要がある
- プライベートバンキング
FFIはプライベートバンキングサービスを利用する顧客との関係を特定し、リレーションシップマネージャー向けのトレーニングを実施する
- 口座のガバナンス
担当執行役員は、2011年5月9日時点において米国口座特定手続について管理体制が整備されていることを証明することが求められる
今後の対応策
対応に残された時間は限られています。しかしながら、この新規法令を詳細に理解し、自社のオペレーションモデルにもたらす影響をしっかりと分析する事が肝要です。
金融機関は、数年後の自社ビジネスが有るべき姿、さらには新たな環境における自らの位置付けを明確に理解する必要があります。
以下はFATCA対応の重要なステップを実施順にまとめたものです:
- FATCAを理解する
外部専門家によるワークショップやコンサルティングを活用し、新規法令の内容や事業活動への影響を理解する
- 戦略的意思決定を行う
金融機関は、米国人を顧客として維持するのか、また、米国有価証券を商品構成に入れるか否かを判断する。今後も米国人を顧客とし米国有価証券を取り扱うと決定した場合には、IRSとFFI契約を締結する
- 導入ガイダンスを分析する
FATCA導入ガイダンスおよび導入に伴う義務の詳細を継続的に分析し、自社のオペレーションモデルをこれに適応させる。これによりFATCA遵守の準備を万全に整えておく事が可能となる
- FATCAの導入
QI(適格仲介人)制度とEU課税の経験に基づき、自社のプロセスやシステムを新規法令に適応させるのには約18カ月を要する事が予測される。また、導入後の円滑な運営を担保するには、FATCA適用開始の3か月前までに、システムの稼働準備を完了(ITフリーズ)することが理想である