その他有価証券評価差額に係る繰延税金資産の回収可能性

2019年5月9日
カテゴリー 会計実務Q&A

Question 

過年度にその他有価証券の減損処理を実施(損益計算書で評価損を計上)しました(税務上は有税処理)。その後、当該その他有価証券の市場価格(時価)が上昇して、その他有価証券評価差額(評価差益)が発生した場合には、繰延税金負債を計上することになりますか。

Answer 

有価証券の減損処理には、減損損失の金額につき税務上も損金に算入できる無税処理の場合と、税務上は損金に算入できない有税処理とがあります。

減損損失金額につき無税処理を行った場合には、減損処理直後の会計上の帳簿価額と税務上の帳簿価額は一致しますが、その後の市場価格(時価)の上昇により、時価法を採用しているその他有価証券の会計上の帳簿価額と税務上の帳簿価額とが乖離(かいり)するため、将来加算一時差異が生じ繰延税金負債が計上されます。

これに対して、減損損失金額につき有税処理を行った場合には、減損処理を行った後も、税務上の帳簿価額は減損処理以前の金額のままです。このため、減損処理直後においては、会計上の帳簿価額と税務上の帳簿価額に乖離が生じ、将来減算一時差異が生じます。その後の市場価格(時価)の上昇により、時価法を採用しているその他有価証券の会計上の帳簿価額は減損処理時点よりも上昇し、税務上の帳簿価額との乖離を縮小する方向に動きます。同時に将来減算一時差異の額が減少してゆきますが、繰延税金負債が計上されるのは、時価が税務上の帳簿価額を上回り、将来減算一時差異が解消して、将来加算一時差異が生じるところからとなります。

図 その他有価証券評価差額に係る繰延税金資産の回収可能性

根拠条文

  • 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」第38項なお書き、[設例2]

この記事に関連するテーマ別一覧

税金・税効果

企業会計ナビ

企業会計ナビ

会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。 

一覧ページへ