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太田達也の視点

ポイントの会計処理と税務との関係
~収益認識基準を適用後の両者の関係~

2018.09.03
公認会計士 太田 達也

ポイントの会計処理

従来の実務では、ポイントについては、将来のポイントとの交換に要すると見込まれる額を引当金として計上する会計処理が一般的でした。収益認識基準では、商品やサービスの提供に付随して付与されるポイントや値引券等は、追加的な財またはサービスを無料または割引価格で取得できる顧客のオプションとして取り扱われるものとされます。追加の財またはサービスを無料または値引価格で取得するオプションには、販売インセンティブ、顧客特典クレジット、ポイント、契約更新オプション、将来の財またはサービスに対するその他の値引き等が含まれます。

既存の契約に加えて追加の財またはサービスを取得するオプションを付与する場合(そのポイントが商品の販売サービスの提供に付随して付与する場合)に、当該ポイントが重要な権利を顧客に提供すると判断される場合、当該ポイント部分について履行義務として識別し、収益の計上が繰り延べられます。顧客に付与するポイントについての引当処理は認められないことになります。

履行義務の識別の例

ポイントは、商品の販売とは別個の履行義務となると考えられ、取引価格を当初販売した商品とポイントにそれぞれの独立販売価格に基づき配分し、それぞれの履行義務を充足した時点、すなわち、商品については販売された時点、また、ポイントについては利用された時(またはそのポイントが消滅した時)に、収益を認識することになります。ポイントは付与した時点では、履行義務を充足していないため契約負債として認識し、ポイントが利用されるに応じて(またはポイントが消滅した時に)、契約負債から収益に振り替える処理になります。

法人税法上認められるための要件

法人税法上は、重要な権利を付与するものとして次の①から④のすべての要件を満たすものについて、継続適用を条件として、先の会計処理が認容されます(法基通2-1-1の7)。

  • その付与したポイントが当初資産の販売等の契約を締結しなければ相手方が受け取れない重要な権利を与えるものであること
  • その付与したポイントが発行年度ごとに区分して管理されていること
  • 法人が付与したポイントに関する権利につきその有効期限が経過したこと、規約その他の契約で定める違反事項に相手方が抵触したことその他の当該法人の責に帰さないやむを得ない事情があること以外の理由により一方的に失わせることができないことが規約その他の契約において明らかにされていること
  • 次のいずれかの要件を満たすこと
  • (イ)その付与したポイントの呈示があった場合に値引き等をする金額が明らかにされており、かつ、将来の資産の販売等に際して、たとえ1ポイントまたは1枚のクーポンの呈示があっても値引き等をすることとされていること
  • (ロ)その付与したポイントが当該法人以外の者が運営するポイントまたは自ら運営する他のポイントで、(イ)に該当するものと所定の交換比率により交換できることとされていること

※ 一定単位数等に達しないと値引き等の対象にならないもの、割引券(将来の資産の販売等の対価の額の一定割合を割り引くことを約する証票をいう)およびいわゆるスタンプカードのようなものは上記(イ)の要件を満たす自己発行ポイント等には該当しない(法基通2-1-1の7(4)イの(注))。

個々の要件のポイントと留意点

①の要件については、会計上、既存の契約に加えて追加の財またはサービスを取得するオプションを付与する場合に、当該オプションが当該契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するときにのみ、そのポイントを独立した履行義務とするため、会計と実質同様の要件であり、問題ないと考えられます。

②の発行年度ごとの区分管理は、通常行われている場合が多いと考えられます。発行年度ごとに区分管理がされ、使用されたポイントと未使用のポイントが分かるように管理されている場合が通常であると考えられます。

③のポイントに関する権利につきその有効期限が経過したこと、規約その他の契約で定める違反事項に相手方が抵触したことその他の当該法人の責に帰さないやむを得ない事情があること以外の理由により一方的に失わせることができないことが規約その他の契約において明らかにされていることについても、ポイントの失効について、有効期限の経過等の法人の責に帰さないやむを得ない事情があることに限定されていることが規約等から明らかであれば、問題ないと考えられます。

④の要件を満たせるのかどうかが重要なポイントになると考えられます。ポイント制度が(イ)の要件である「1ポイントまたは1枚のクーポンの呈示があっても値引き等をすることとされていること」になっていないケースが少なくないと思われます。ただし、そのポイント制度がたとえ(イ)の要件を満たしていなくても、そのポイント制度が1ポイントまたは1枚のクーポンの呈示があっても値引き等をする他社ポイントまたは自社の他のポイントと所定の交換比率により交換できることとされていれば(ロ)の要件を満たすため、これによって結果的に④の要件を満たすことになります。

なお、未行使のポイントについては、商品券の取扱いに準じた取扱いが適用されます(法基通2-1-39の3)。すなわち、原則として、10年経過日の属する事業年度において、非行使部分に係る対価の額のうち益金の額に算入されていない残額を一括して益金算入します。

商品の販売やサービスの提供に付随して付与されるものでない場合

新規会員加入時や来店時にポイントが付与されるケースもあります。このようなポイントの場合は、既存の契約に加えて追加の財またはサービスを取得するオプションを付与する場合(そのポイントが商品の販売サービスの提供に付随して付与する場合)には該当しません。会計上は、企業会計原則注解(注18)の定める引当金の計上要件を満たすことはあると考えられます。会計上引当金を計上する場合は、税務上はもちろん認められません。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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