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太田達也の視点

ポイントと返品権付販売の会計処理と実務上の論点
~収益認識基準案の公表に伴い、新たな論点が浮上~

2017.09.01
公認会計士 太田 達也

現行の実務では、ポイントについては、将来のポイントとの交換に要すると見込まれる額を引当金として計上する処理が多く採用されています。

「収益認識に関する会計基準(案)」(以下、「基準案」)では、商品やサービスの提供に付随して付与されるポイントや値引券は、追加的な財またはサービスを無料または割引価格で取得できる顧客のオプションとして取り扱われます。ポイント制度等において、当該ポイントが重要な権利を顧客に提供すると判断される場合、引当金の計上はされず、当該ポイント部分について履行義務として識別し、収益の計上が繰り延べられます。顧客に付与するポイントについての引当処理は認められなくなる点に留意する必要があります。

また現行の実務では、商品・製品の返品が見込まれる場合に返品調整引当金が計上されることがありますが、基準案ではこの引当計上も認められなくなりますので、あわせてご説明します。

1. ポイントの会計処理

商品の販売とは別の履行義務と識別される場合、取引価格を当初販売した商品とポイントにそれぞれの独立販売価格に基づき配分し、それぞれの履行義務を充足した時点、すなわち、商品については販売された時点、また、ポイントについては利用された(または消滅した)時点で、収益を認識することになります。

引当金を計上する現行の実務と比較して、収益の計上額が異なることとなる点に留意する必要があります。以下の設例を参考にしてください。

設例 ポイントの会計処理

前提条件

顧客に対して売上10円に対して1ポイントを付与し、次の買い物から1ポイント1円で利用できる制度を当期から導入した。

当期の売上高は100,000円、当期末までに付与したポイントは10,000ポイントであるが、翌期以降に利用される見込みのポイントは、8,000ポイントと見積もられた。当該商品の独立販売価格は100,000円、ポイントの独立販売価格は8,000円とします。

翌期の売上高は120,000円、翌期に実際に利用されたポイントは7,000ポイントでした。当期と翌期の会計処理を示してください。

(1)現行の処理(ポイント引当金を計上する処理を前提とします)

図1

(2)基準案ベース

図2
  • 現行の処理との比較

現行の処理においては、収益の計上額が、当期は100,000円、翌期は120,000円となっています。これに対して基準案ベースの処理における収益の計上額は、当期が92,593円、翌期が119,481円(113,000円+6,481円)となります。収益の計上額に差異が生じる点に留意が必要です。

  • 実務上発生する論点

税務上の取扱いがどのようになるかは、今後の税制改正による法令改正または通達の手当に委ねられます。

法人税法上は、会計上の収益の額とあえて異なる取扱いを設ける実益があまりないと思われますので、会計処理を認容する取扱いになる可能性が十分考えられます。

一方、消費税法上の消費税の税額計算の基礎となる課税標準の額は、課税資産の譲渡等の対価の額と規定されており、課税資産の譲渡等の対価の額は、対価として収受するまたは収受すべき一切の金銭および金銭以外の物、もしくは権利その他経済的な利益の額とされています。

先の設例の当期の処理でみると、法人税法が会計に合わせて収益の額を92,593円と認容した場合であっても、消費税法上の課税資産の譲渡等の対価の額は収受された金銭の額である100,000円とされることが考えられます。このような内容になるかどうかは、今後の税制改正によって決まる問題ですが、場合によってはシステムの改訂が必要になるという点は、念頭に置いておかなければならないと考えられます。

2. 返品権付販売の会計処理

現行の実務では、商品・製品の返品が見込まれる場合、過去の返品実績等に基づき返品調整引当金が計上され、その引当金の繰入額については売上総利益の調整として表示される場合があります。

基準案では、返品権付の商品または製品(および返金条件付で提供される一部のサービス)を販売したときは、次の処理をするとされています(適用指針案85項)。返品調整引当金の計上は認められない点に留意する必要があります。

① 企業が権利を得ると見込む対価の額(返品されると見込まれる商品または製品の対価を除く)で収益を計上する。
② 返品されると見込まれる商品または製品については、収益を認識せず、当該商品または製品について受け取ったまたは受け取る額で返金負債を認識する。
③ 返金負債の決済時に顧客から商品または製品を回収する権利について返品資産を認識する。

設例 返品権付販売の会計処理

前提条件

製品50個を500,000円(@10,000円)で顧客に販売しました。その原価は@6,000円です。顧客が未使用の製品を返品した場合、全額の返金が認められているものとします。製品3個(30,000円)が返金負債として見積もられ、対応する原価18,000円が返品資産として見積もられたとします。

図3

この返品資産は、返金負債の決済時に顧客から製品を回収する権利を表しています。

この場合も、先の問題と同様に、会計上の収益の額は470,000円ですが、消費税法上の課税資産の譲渡等の対価の額は500,000円とされることが考えられ、その場合には不一致が生じます。

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