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太田達也の視点

連結子会社の未認識項目に係る連結上の処理
~改正退職給付会計基準の適用2期目における留意点~

2014.11.04
公認会計士 太田 達也

連結子会社の未認識項目

退職給付会計基準の改正により、平成25年4月1日以後に開始する事業年度の年度末に係る財務諸表について、未認識数理計算上の差異や過去勤務費用等の未認識項目を即時認識するものとされました。連結財務諸表のみ適用とされています。

連結子会社に少数株主※1が存在する場合、連結子会社の未認識項目のうち少数株主持分割合に対応する額を少数株主持分に振り替えます。その結果、親会社持分相当額のみがその他の包括利益累計額である「退職給付に係る調整累計額」に計上されることになります。

適用2期目の処理

適用初年度は、未認識項目についてその他の包括利益を通さないで、直接純資産の部のその他の包括利益累計額に計上するものとされていました。しかし、適用2期目からは、その他の包括利益を通して、純資産の部のその他の包括利益累計額に計上することになる点に留意が必要です。また、連結子会社に少数株主が存在する場合は、親会社持分相当額のみがその他の包括利益累計額に計上され、少数株主持分相当額は少数株主持分に計上されることになります。

具体的な設例

以下、具体的な設例に基づいて、説明します。

設例 連結子会社の未認識項目に係る連結上の処理

前提条件
連結子会社S社(親会社の持分割合80%)の個別財務諸表上の退職給付引当金は20です。個別上の退職給付引当金には前期末までに発生した未認識項目のうち費用処理されていない部分および当期に新たに発生した未認識項目が反映されていません。前期末までに発生した未認識項目のうち費用処理されていない部分が25、当期に新たに発生した未認識項目が10であるとします。

個別上の負債と連結上の負債との関係

個別上の負債と連結上の負債との関係

また、連結子会社S社の未認識項目に係る当期の費用処理額が5であったとします。
繰延税金資産の回収可能性はあると判断され、法定実効税率を40%とします。個別財務諸表上、繰延税金資産が8(20×40%)計上されているものとします。

解 答

当期に発生した未認識項目(税効果調整後)は、「退職給付に係る調整額」を通じて純資産の部のその他の包括利益累計額の「退職給付に係る調整累計額」に計上されますが、少数株主持分相当額を「少数株主持分」に振り替えるため、「退職給付に係る調整累計額」として計上されるのは親会社持分相当額のみです。
以下は、連結修正仕訳です。

1. 未認識項目に係る仕訳

前期末までに発生した未認識項目のうち費用処理されていない部分について、改めて連結上計上します。

退職給付に係る調整累計額 25 退職給付に係る負債 25

当期に発生した未認識項目10を連結上認識します。そのとき、個別上の退職給付引当金も連結上の退職給付に係る負債に振り替えます。

退職給付引当金 20 退職給付に係る負債 30
退職給付に係る調整額 10

以下は、税効果に係る調整です。

繰延税金資産 10 退職給付に係る調整累計額 10

※「退職給付に係る負債」計上額25×40%=10

繰延税金資産 4 退職給付に係る調整額 4

※当期に新たに発生した未認識項目10×40%=4

結果的に、連結上は繰延税金資産が22(55×40%)計上されることになります。
また、退職給付に係る調整累計額・借方15(25-10)のうち、少数株主持分割合20%を乗じた3について、少数株主持分に振り替えます。

少数株主持分 3 退職給付に係る調整累計額 3

なお、当期に新たに発生した未認識項目について、退職給付に係る調整額が借方6(10-4)計上されていますが、連結貸借対照表上(純資産の部の)退職給付に係る調整累計額に4.8、少数株主持分に1.2反映されます(いずれも借方=マイナス)。

以下は、未認識項目に係る当期の費用処理額5についての組替調整に係る仕訳ですが、これについても連結修正仕訳で行います。

2. 組替調整に係る仕訳

① 個別の振戻し

退職給付に係る負債 5 退職給付費用 5
法人税等調整額 2 繰延税金資産 2

② 費用処理の仕訳

退職給付費用 5 退職給付に係る調整額 5
退職給付に係る調整額 2 法人税等調整額 2

なお、組替調整により、退職給付に係る調整額が貸方3(5-2)計上されていますが、連結貸借対照表上(純資産の部の)退職給付に係る調整累計額に2.4、少数株主持分に0.6反映されます(いずれも貸方=プラス)。

  1. ※1平成27年4月1日以後に開始する事業年度の期首から、非支配株主と用語が変更されますが、適用時期が到来していないため、改正前の用語を用います(以下同様)。
当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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