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太田達也の視点

退職給付会計基準の改正に伴う期首剰余金の増減に係る税効果と申告調整

~期首剰余金の増減に伴う実務上の諸問題~
2014.08.01
公認会計士 太田 達也

期間帰属方法の変更等による期首剰余金の変動

退職給付会計基準の改正により、平成26年4月1日以後に開始する事業年度の期首から、退職給付見込額の期間帰属方法として、期間定額基準または給付算定式基準のいずれかを選択し、選択した方法については継続適用が原則とされました。期間帰属方法を適用初年度の期首から、期間定額基準から給付算定式基準に変更する場合の会計方針の変更の影響額については、期首の利益剰余金に加減することになります(退職給付会計基準37項)。

また、期間帰属方法の問題とは別に、割引率を見直した場合の影響額は本来、数理計算上の差異に含めて、企業の採用する費用処理方法および費用処理年数に従って処理されますが、この適用初年度の期首における場合には、会計基準等の適用に伴う会計方針の変更の影響額に含めて、期首の利益剰余金に加減する取扱いも認められると考えられるとされています(「企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び同適用指針の解説」の脚注4ご参照)。

以上の二つの観点から、適用初年度の期首の利益剰余金の増減が生じた企業が多いと思われます。

税効果会計への対応

適用初年度の期首から期間帰属方法を期間定額基準から給付算定式基準に変更したものとします。当該期首時点における期間定額基準を適用した場合の退職給付債務(PBO)と給付算定式基準を適用した場合の退職給付債務(PBO)が、それぞれ次の数値であったものとします。

期間定額基準 給付算定式基準
500 460

繰延税金資産の回収可能性があると判断されるものとし、法定実効税率を35%と仮定しますと、期首の退職給付引当金が変動することにより、期首の時点において税効果会計に係る将来減算一時差異が同額変動することになります。従って、繰延税金資産を計上している場合は、繰延税金資産の修正が必要になります。期首における繰延税金資産の修正ですので、相手勘定は法人税等調整額ではなく、繰越利益剰余金となる点に留意が必要です。

(適用初年度の期首の日付)
退職給付引当金 40 (注1) 繰越利益剰余金 40
繰越利益剰余金 14 (注2) 繰延税金資産 14
(注1)会計基準変更前のPBO(500)-会計基準変更後のPBO(460)
(注2)(注1)の金額×35%

この会計方針の変更による影響額は、すでに説明しましたように、適用初年度の期首における利益剰余金の加減で処理することになります。

法人税申告書の別表調整

期首の利益剰余金や退職給付引当金が増減しますが、会計上の数値が変動しただけであり、税務上の数値にまったく変動はありません。税務上は、退職給付引当金の帳簿価額はもともとゼロであって、ないものとして取り扱われますし、また、税務上の利益積立金額にも変動は生じません。従って、法人税申告書の別表5(1)上の「利益積立金額の計算に関する明細書」における調整が必要になります。

別表五(一) 利益積立金額および資本金等の額の計算に関する明細書
Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書
区分 期首現在利益積立金額 当期の増減 差引翌期首現在利益積立金額
①-②+③
 
退職給付引当金 XXX
△40
XX XX XXX
繰延税金資産 △XXX
14
XX XX XXX
 
繰越損益金 XXX
26
  XX XXX

上記のように、過年度遡及(そきゅう)会計基準における遡及適用の場合と同様に、別表5(1)の期首現在利益積立金額の箇所に、会計上の数値の変動額についての調整を記載することになると考えられます。

なお、期首現在利益積立金額の箇所にもともと記載していた数値と分けて2段書きで記載していますが、もともとの数値と調整額を合算した数値を一段で記載しますと、前期の申告書別表5(1)の翌期首現在利益積立金額の数値との連続性がなくなりますので、あえて分けて記載しています。調整内容が分かるように、過年度遡及会計基準における遡及適用の場合と同様に、調整についての説明資料を添付することも考えられます(国税庁『法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について』問9ご参照)。

剰余金の変動による剰余金の分配可能額への影響

期首の剰余金が変動することにより、会社法上の剰余金の分配可能額との関係が問題となります。

会社法上の剰余金の分配規制は効力発生日基準ですので、期末日の剰余金の額から剰余金の配当等の効力発生日の剰余金の額に置き換えるために、その間の期中の変動要因を加減するものとされています。しかし、会計方針の変更による期首の剰余金の変動については、加減すべき変動要因として会社法および会社計算規則に規定されていませんので(会社法446条、会社計算規則150条)、加減しないことになります。

従って、例えば3月期決算の場合、平成26年4月1日(平成27年3月期期首)における利益剰余金の増減は、平成27年3月期の決算が確定することにより、「最終事業年度の末日における剰余金の額」に含まれることになりますので、平成27年3月期に係る期末配当を行うに際しての剰余金の分配可能額に反映されることになります。


当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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