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太田達也の視点

子会社株式の一部売却に係る会計処理

~支配の喪失に伴う売却損益・のれんの修正・資本剰余金の処理等~
2014.07.01
公認会計士 太田 達也

連結会計基準の改正

「連結財務諸表に関する会計基準」の平成25年9月13日付改正により、子会社株式を一部売却した場合の会計処理が変更されました。すなわち、親会社と子会社の支配関係が継続している場合は、売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し非支配株主持分を増額しますが、そのとき売却による親会社の持分の減少額と投資の減少額との間に生じた差額を子会社株式の売却損益の修正として処理するルールから資本剰余金とするルールに改められました。また、このときのれんの未償却額を減額するルールから減額しないルールに改められました。

連結子会社株式の一部売却により支配を喪失する場合の処理

上記の説明のように、株式を売却しても支配が継続する場合は、連結上は子会社株式売却損益を計上しないで、親会社の持分の減少額と投資の減少額との差額を資本剰余金として処理するわけですが、株式の売却により支配を喪失する場合(連結子会社が子会社でなくなる場合)の処理は異なります。

支配を喪失した場合は、個別財務諸表上の子会社株式売却損益を連結財務諸表上の売却損益に修正する処理が必要になります(「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(以下、「資本連結実務指針」)45項)。

また、株式の一部売却により連結子会社が関連会社となった場合は、親会社が保有する当該株式の帳簿価額が持分法による評価額となるように修正する処理が必要となります。

株式の一部売却後におけるのれん償却費の取扱い(支配が継続しない場合)

すでに説明しましたように、子会社株式の一部を売却した場合(かつ支配が継続する場合)は、のれんの減額は行われないものと改められました。そのため、のれんに対応する持分比率と実際の持分比率に差が生じることとなり、その後の子会社株式の一部売却により、子会社に対する支配を喪失して関連会社となった場合における減額するのれん(持分法評価額に引き継がれるのれん)の額が論点となります。

この点については、支配獲得後の持分比率の推移等を勘案し、のれんの未償却額のうち、①支配獲得時の持分比率に占める関連会社として残存する持分比率に相当する額を算定する方法(方法1)や②支配喪失時の持分比率に占める関連会社として残存する持分比率に相当する額を算定する方法(方法2)などの中から、適切な方法に基づき、関連会社として残存する持分比率に相当するのれんの未償却額を算定することとされました(資本連結実務指針45-2項、66-5項)。

ケース1:追加取得後に支配を喪失した場合
(前提条件:60%→80%→30%と持分比率が推移した場合)

方法1によった場合 のれんの未償却額のうち、60分の30を減額する(分母:取得当時の親会社持分、分子:売却持分から追加取得持分を控除)
方法2によった場合 のれんの未償却額のうち、80分の50を減額する(分母:売却直前の親会社持分、分子:売却持分)

ケース2:支配の喪失を伴わない一部売却後に支配を喪失した場合
(前提条件:80%→60%→30%と持分比率が推移した場合)

方法1によった場合 のれんの未償却額のうち、80分の50を減額する(分母:取得当時の親会社持分、分子:売却持分に過去の一部売却持分を加算)
方法2によった場合 のれんの未償却額のうち、60分の30を減額する(分母:売却直前の親会社持分、分子:売却持分)

設例 子会社株式の一部売却により関連会社となった場合の会計処理

前提条件
P社(3月決算会社)は、X1年3月31日にS社株式80%(80株)を800で取得し、子会社化しました。S社のX1年3月31日現在の資本金は500、利益剰余金は400でした。のれんの償却期間は10年とします。

親会社は、X2年3月31日にS社株式50%(50株)を540で売却し(子会社株式売却益40)、その結果持分法適用会社になったものとします。一部売却時のS社の純資産は、資本金500、利益剰余金450(当期純利益50)とします。X2年3月期の連結処理を示してください。

なお、子会社の資産・負債に係る時価評価差額はなかったものとします。

解答

1. 資本連結の処理(投資と資本の相殺消去)

1. 資本連結の処理(投資と資本の相殺消去)

2. 非支配株主損益の計上

2. 非支配株主損益の計上

3. のれんの償却

3. のれんの償却

4. 親会社株主持分から非支配株主持分への振替

4. 親会社株主持分から非支配株主持分への振替

5. 親会社持分の減少額と売却投資額の相殺消去の戻し

5. 親会社持分の減少額と売却投資額の相殺消去の戻し

4と5の仕訳をまとめると、次のようになります。

表6

6. 連結子会社から持分法適用会社への移行に係る処理

S社は連結子会社ではなく持分法適用会社になったため、投資と資本の消去に係る連結修正仕訳をすべて取り消します。

6. 連結子会社から持分法適用会社への移行に係る処理

追加取得や一部売却の際に計上された資本剰余金のその後の取扱い

子会社株式の追加取得および一部売却等によって生じた資本剰余金は、その後当該子会社株式を売却などした結果、子会社に対する支配を喪失して連結範囲および持分法適用範囲から除外されたとしても、過去の追加取得または一部売却取引で計上された資本剰余金を純損益や利益剰余金に振り替えることなく、そのまま資本剰余金に計上するものとされました(資本連結実務指針49-2項)。

それは、支配継続中の一部売却等の取引は、親会社と子会社の非支配株主との間の取引であり、当該取引によって生じた資本剰余金は子会社に帰属するものではないためであると考えられます(資本連結実務指針68-2項)。


当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

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