企業会計ナビ
太田達也の視点

減価償却制度の改正に対する実務対応

~200%定率法の導入に伴う実務上の論点・留意点~
2012.06.01
公認会計士 太田 達也

200%定率法の導入

平成23年12月2日付で公布された改正税法により、平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産について定率法を適用する場合は、税務上、250%定率法ではなく200%定率法を適用して償却限度額を計算するものとされました。定率法による償却額が償却保証額(取得価額×保証率)を下回る事業年度から、均等償却に移行する仕組みは従来の250%定率法と同じです。

なお、250%定率法の償却率、保証率及び改定償却率は耐用年数省令の別表9に、200%定率法の償却率、保証率及び改定償却率は耐用年数省令の別表10にそれぞれ示されています。

会計上の対応

会計上の対応については、本年2月14日付で日本公認会計士協会から公表された監査・保証実務委員会報告第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」に従うことになります。

会計上は、「法人税法上の減価償却計算に係る規定は、各事業年度の課税所得の計算上、損金算入できる金額の限度額を計算することを目的にしたものであり、会計処理の上で法人税法に基づく減価償却計算が強制適用されるものではない。このため、平成23年度税制改正後であっても、会計上は従来の減価償却方法を引き続き採用することも容認される。」とされています。しかし一方で、会計上250%定率法を引き続き採用すると、減価償却超過額が生じ、税効果会計の対象にもなるため、200%定率法に変更することを検討している企業が多いのではないかと思われますが、後述する会計方針の変更との関係が問題となります。

法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更

会計上、250%定率法から200%定率法に変更する方法としては、第1に平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産から200%定率法に切り替える方法が原則になります。第2に、3月決算以外の企業の場合は、事業年度の途中で切り替えしないで、平成24年4月1日以後に最初に開始する事業年度の期首以後の取得分から200%定率法に変更することも検討の余地があります。この場合の税務上の扱いは、経過措置により申告調整は発生しませんし、届出も不要となっています。

12月決算法人を例にすると、経過措置を適用した場合は、会計上も税務上も次のようになります。

法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更

以上の変更については、会計上、「法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更」として取り扱われます。

「法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更」以外の変更

会計上、既存資産(平成24年3月31日以前に取得した減価償却資産)の減価償却方法については、原則として、平成23年度税制改正前の取扱いが適用されますが、企業の選択により、法人税法上は届出を行って、定率法(250%定率法)から定率法(200%定率法)へ変更することができることとされています。

しかし、法人税法上、上記の定率法(250%定率法)から定率法(200%定率法)への既存資産の減価償却方法の変更は、企業の選択により決定できるものであることから、当該変更を含め、既存資産について減価償却方法を変更する場合には、会計上、「法令等の改正に伴う変更に準じた会計方針の変更」とは認められず、自発的に会計方針の変更を行うものとして取り扱われます。会計方針の変更に係る変更理由の合理性(変更の適時性等)に留意し、単に法人税法の改正を理由とするだけでは正当な理由に該当しないことに留意する必要があります。

実務上の留意点

今回の税制改正については、会計と税務の取扱いが乖離するケースも生じ得ますが、以下にその場合の留意点を説明します。

第1に、会計上会計方針の変更を行わないで、新規取得資産(平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産)について250%定率法を適用する場合、税務上の償却限度額はあくまでも200%定率法によるので、耐用年数の前半において償却超過額が発生します。これは税効果会計における将来減算一時差異に該当します。耐用年数の後半において均等償却に移行すると、200%定率法の均等償却額の方が250%定率法のそれよりも多くなることが考えられるため、逆に償却不足額が発生し、その償却不足額の額だけ前事業年度から繰り越されてきた償却超過額が認容されます。それは将来減算一時差異がその分だけ解消されたことを意味します。

第2に、税務上届出を行うことにより、既存資産について250%定率法から200%定率法に変更した場合、会計上は自発的な会計方針の変更に該当するので、変更理由の合理性、変更の適時性という観点から、正当な理由に該当するかどうかが判断されます。仮に会計上正当な理由に該当しないと判断された場合、従来どおりの250%定率法が継続されるので、会計上の償却額と税務上の償却限度額に差異が生じることになり、先に説明したのと同様に、税効果会計の問題が生じます。

そのほか、税務上の観点からの留意点として、以下のものが挙げられます。

第1に、同一区分の資産をまとめて行うグルーピング計算を行う場合、同一の償却方法による必要があります。250%定率法と200%定率法は償却方法が異なるものになるため、グルーピング計算において、まとめてはいけません。

第2に、平成24年4月1日よりも前に取得した減価償却資産で、事業供用が平成24年4月1日以後になる場合でも、250%定率法を適用できます。ただし、事業供用日までの償却費は、損金算入できない点に留意する必要があります。

第3に、平成24年4月1日以後の資本的支出については、本体資産が250%定率法であっても、資本的支出については200%定率法を適用しなければいけません。平成19年度税制改正により、資本的支出については、本体資産と種類及び耐用年数を同じくする新たな減価償却資産を取得したものとして減価償却を行うことが原則となったからです(法令55条1項)。

第4に、平成19年4月1日以後、かつ、平成24年3月31日以前に取得された資産(本体資産)に対して平成24年4月1日以後にされた資本的支出については、本体部分と資本的支出の償却率が異なることになるため、資本的支出をした事業年度の翌事業年度においてそれらの帳簿価額を合計して一括して償却する特例(法令55条4項)の適用は認められません。

第5に、平成24年4月1日以後に取得された資産(本体資産)に対して同日以後された資本的支出については、本体資産と資本的支出の償却率が同じであるため、資本的支出をした事業年度の翌事業年度において、それらの帳簿価額を合計して一括して償却する特例(法令55条4項)の適用は認められます。

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。


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