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太田達也の視点

消費税法の改正と会計処理

~95%ルールの見直しと会計処理上の論点~
2011.10.03
公認会計士 太田 達也

消費税法の改正

従来、課税売上割合が95%以上の課税事業者については、消費税の課税仕入れ等に対する消費税額の全額を課税標準額に対する消費税額から控除できるものとされていました。ところが、本年6月30日に公布された消費税法の改正によれば、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から、課税売上高が5億円を超える事業者は95%ルールの適用対象外とされたため、課税仕入れ等に対する消費税額の全額の仕入税額控除は認められず、個別対応方式または一括比例配分方式で仕入税額控除額の計算をすることとなりました。この改正により、控除対象外消費税額が生じますので、仕入税額控除額が従来よりも少なくなります。

個別対応方式と一括比例配分方式

個別対応方式とは、課税仕入れについて、①課税資産の譲渡等のみに係る課税仕入れ等、②その他の資産の譲渡等のみに係る課税仕入れ等、③両方に共通して係る課税仕入れ等に区分できる場合に認められる方式です。次の算定式により計算される額が、仕入税額控除額となります。

仕入税額控除額=
①に係る課税仕入れ等の税額+(③に係る課税仕入れ等の税額×課税売上割合)

一方、一括比例配分方式とは、仕入税額控除額の計算において個別対応方式を適用できない場合、または個別対応方式を適用できる場合であっても一括比例配分方式を選択した場合に適用されます。課税仕入れ等の税額に課税売上割合を乗じて計算するという単純な内容です。

仕入税額控除額=課税仕入れ等の税額 × 課税売上割合

会計処理の検討

従来、税抜方式で経理処理をしている法人の場合、仮払消費税等と仮受消費税等をそれぞれ計上し、決算のときにそれらを相殺して未払消費税等(または未収消費税等)を計上するという比較的単純な実務処理で対応してきました。課税売上割合が95%以上の場合、課税仕入れ等に対する消費税額の全額について仕入税額控除ができるとされていたため、仮払消費税等と仮受消費税等を相殺した額が未払消費税等(または未収消費税等)に一致し、端数処理の誤差が生じる程度でした。
改正後は、個別対応方式を選択する法人が多くなることが予想されますが、その場合、仮払消費税等の会計処理(仕訳)の段階において、①課税資産の譲渡等のみに係る課税仕入れ等、②その他の資産の譲渡等のみに係る課税仕入れ等、③両方に共通して係る課税仕入れ等に区分しておくことが望ましいと考えられます。その区分を前提として、決算の段階においては、未払消費税等の計上額を基本的には申告ベースの数値にできる限り合わせる必要があると考えられます。

控除対象外消費税等の会計処理

個別対応方式を選択した場合、先の①課税資産の譲渡等のみに係る課税仕入れ等の税額は全額仕入税額控除の対象になりますが、③両方に共通して係る課税仕入れ等の税額については課税売上割合を乗じた額しか仕入税額控除の対象とならないため、消費税法上で一部控除できない部分が生じます。この控除できない消費税等を「控除対象外消費税等」といいます。控除対象外消費税等は、企業会計上も費用、税務上も法人税の所得計算において損金の額に算入されます。

(注)課税売上割合が80%以上の事業年度については、経費に係る控除対象外消費税、資産に係る控除対象外消費税、いずれも損金経理を要件として、損金の額に算入される(法令139の4第1項)。

課税売上割合は課税期間が終わらないと計算できないため、当初の会計処理において課税仕入等の税抜きの対価の5%相当額を仮払消費税等に計上している場合は、決算時に控除対象外消費税等の部分について仮払消費税等から租税公課(消費税)に振り替える必要が生じます。
日本公認会計士協会(消費税の会計処理に関するプロジェクトチーム)が公表した「消費税の会計処理について(中間報告、平成元年)」では、控除対象外消費税を期間費用とする場合の仕訳を次のように示しています。

租税公課(消費税)  XXX  /  仮払消費税   XXX

ただし、法人税の申告実務においては、控除対象外消費税等に交際費に係るものがあるときは、交際費の額に加算した上で、交際費の損金不算入額を計算する必要がある点に留意が必要です。

四半期決算における対応

四半期決算については相応の迅速性が重視されるため、四半期決算における未払消費税等の計上方法については事務負担が発生しないような対応を別途検討する余地もあります。例えば、四半期決算においては、一括比例配分方式の方法(またはそれに準ずる方法)を用いて未払消費税等を計上しておいて、年度決算においては個別対応方式に基づいた申告納税額を未払消費税等に計上するという対応も考えられます。また、控除対象外消費税等の額に重要性が乏しい場合には、従来と同様の方法によった場合であっても、結果として未払消費税等の計上額に係る誤差も重要性が乏しいことが考えられます(簡便的な処理についての実際の適用の可否に係る判断に当たっては、監査人と事前にご相談されることをお薦めします)。控除対象外消費税等の額の影響を考慮して、会計処理を行う必要があると考えられます。

(注)消費税の中間申告において、予定納税を行うよりも仮決算による中間申告をした方が有利になる場合がありますが、そのような場合に一括比例配分方式を適用したとしても、確定申告において個別対応方式を適用することは認められます。


当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。


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