企業会計ナビ
太田達也の視点

100%子会社の整理に伴う会計・税務上の論点

~さまざまなパターンを想定し、税務上の有利・不利を要検討~
2011.08.01
公認会計士 太田 達也

100%子会社の整理と税制改正の影響

成長分野を見込んで子会社を新設し事業進出する場合がある一方で、業績が伸び悩む子会社を整理する場合も見られます。子会社の整理の方法としては、解散・清算、合併、株式の売却、事業譲渡など、さまざまです。昨年度の税制改正により、完全支配関係がある子会社を解散・清算した場合に、子会社の未処理欠損金額を親会社に引き継ぐことができる税制が創設されたことから、今後はこの新しい税制を前提にしたスキームの検討が必要になります。

以下、100%子会社の整理を前提として、解散・清算による方法と合併による方法を比較します。

解散・清算の場合

100%子会社を解散・清算する場合、残余財産の確定に至れば子会社の未処理欠損金額を親会社に引き継ぐことができます(法法57条2項)。もちろん適格合併と同様に、税務上の支配関係の継続要件(原則として5年)を満たしていないときは、一定の制限を受けることになります。一方、親会社の有する(完全支配関係がある)子会社株式については、その消却損は損金不算入扱いとなりました(法法61条の2第16項)。

実務では、解散・清算する際、親会社が子会社に対して貸付金を有している場合、それを清算中に債権放棄するスキームがとられますが、法人税基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)または法人税基本通達9-6-1から9-6-3の貸し倒れの要件を満たさない債権放棄であるときは、親会社における寄付金及び子会社における受贈益になります。その場合、子会社において受贈益がいったん認識されますが、完全支配関係がある法人間の寄付金ですから、親会社の寄付金の全額が損金不算入(法法37条2項)、子会社の受贈益の全額が益金不算入になります(法法25条の2)。子会社における受贈益が益金不算入の場合、未処理欠損金額に手を付けないで、温存した状態で親会社に引き継がれることになります。

会計上、親会社の有する子会社株式は、清算結了により消滅するので、子会社株式消却損が計上されるものと考えられますが、税務上は、子会社株式の帳簿価額相当額について資本金等の額を減額するので(法令8条1項19号)、子会社株式消却損について別表4で加算(留保)の調整を入れ、併せて別表5(1)において別表4で加算した金額と同額について利益積立金額の増加、資本金等の額の減少の調整を入れることになります。別表5(1)に残高が残ることになりますが、永久に解消しないものであるため、税効果会計の対象にならないものと解されます。

合併の場合

親会社が100%子会社を吸収合併する場合は、基本的に適格合併に該当します。

適格合併であれば、子会社の未処理欠損金額を親会社に引き継ぐことになります(もちろん税務上の支配関係の継続要件(原則として5年)を満たしているかどうかの確認は必要です)。親会社の貸付金については、債権放棄しても先と同様の結果になりますが、債権放棄を特にしなくても、合併により親会社の貸付金と子会社の借入金が混同により消滅するものと考えられます。

また、親会社が有する子会社株式(抱合せ株式)については、税務上は、その帳簿価額相当額について資本金等の額を減算する処理を行います(法令8条1項5号)。会計上は、共通支配下の取引に該当します。その場合、親会社の有する子会社株式の帳簿価額と子会社の株主資本との差額を抱合せ株式消滅差損益として特別損益に計上する処理になるので、抱合せ株式消滅差損益については別表4で加減算の調整を行うことになります。

以上のように、100%子会社である場合には、解散・清算によるか合併によるかで税務上はほとんど違いが生じません。

また、子会社株式の帳簿価額相当額について資本金等の額の減算処理が発生する点は共通します。適格合併の場合は、被合併法人の最後事業年度終了の時における資本金等の額から抱合せ株式の帳簿価額を減算した金額について、合併法人(この場合は親会社)の資本金等の額を増加させる処理を行うので、法人住民税の均等割が一見増加するように思われますが、子会社株式の取得が子会社の設立時の出資によるのみである場合は、被合併法人の資本金等の額と抱合せ株式の帳簿価額(子会社株式の帳簿価額)が同額になっていることも考えられるため、増加しない場合も少なくないと考えられます。抱合せ株式の帳簿価額が被合併法人の最後事業年度終了の時の資本金等の額を上回る場合は、法人住民税の均等割が逆に減少します。それは、M&Aにより株式を取得し、子会社化したような場合に起こり得るケースです。

100%以外の子会社の場合はどうか

100%以外の子会社を整理する場合は、解散・清算によるか合併によるかによって、税務上の取扱いが異なってきます。親会社が100%以外の子会社を合併する場合にも違いは出てきますが、子会社が完全支配関係にない他の子会社を合併するような場合にも違いが出てきます。

第1に、解散・清算による場合は、親会社と子会社との間に完全支配関係がないときは、子会社の未処理欠損金額を引き継げません。代わりに、子会社株式の消却損が損金算入されます。

第2に、100%でない子会社を合併する場合、持株割合が50%超であれば、他の適格要件さえ満たしていれば、適格合併になります。そこで、存続会社が消滅会社の未処理欠損金額を引き継ぐことになります。一方、消滅会社株式の消却損については損金不算入となり、資本金等の額の減算処理になります。

会計上は、100%以外でも、親会社と子会社、子会社同士の合併は共通支配下の取引に該当するので、先に説明した抱合せ株式消滅差損益を認識することになります。


当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。


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