I. プラントエンジニアリング事業の特色

1. プラントエンジニアリング業とは

プラントエンジニアリング業とは、プラントの企画、設計、調達、建設工事、施工管理、保守等の一連の業務を一括または部分的に請け負うサービスを提供する業種のことをいいます。プラントとは、製造設備一式を指しますが、多種の機器装置が有機的に結合して、一定の機能を有する設備一式であり、石油精製、化学、発電、製鉄、環境衛生、その他産業プラント(工場)等様々な種類があります。

企業数は少ないですが、主としてエネルギー関連のプラントを中心に扱う専業エンジニアリング会社をはじめとし、鉄鋼会社を親会社に持ち製鉄プラントや貯蔵設備・環境プラント等を扱う鉄鋼系エンジニアリング会社、造船・重機・重電会社を親会社に持つ環境・発電・産業プラント等を扱う造船・重機・重電系エンジニアリング会社等、各社が得意とする技術領域で事業を展開しています。

2. プラントエンジニアリング業を取り巻く環境

顧客の設備投資需要や為替、資源価格、地域の政治経済や社会情勢等の影響を受けるため、受注には波があります。プラントエンジニアリング業界を取り巻く状況は以下のとおりとなっています。

(1)近年のエンジニアリング受注状況は、世界的な景気悪化を受け、投資計画の中止や延期が相次ぎ、国内海外ともに低調となっています。海外を中心に潜在的な投資需要はあり回復の兆しはありますが、本格回復には至っていません。

(2)業界全体では受注高の7割程度は国内ですが、国内公共投資の削減や国内民間企業の海外進出を背景に国内設備投資が減少傾向にあり、プラントエンジニアリング各社は海外事業の拡大を活発化しています。

(3)価格競争力を武器に韓国・中国等のプラントエンジニアリング会社が台頭してきており、海外案件の受注競争が非常に激しくなっています。

(4)自社の得意領域だけでなく、収益基盤を強化すべく、環境に優しい次世代エネルギーである石油代替燃料や太陽光発電等の新エネルギー関連、水処理・鉄道等の社会インフラ関連、CO2排出削減などの環境対策関連等へ進出し事業領域の拡大を図っています。

(5)設計・調達・建設を一括して受注する以外にも、収益の安定化を目的とし、プロジェクト管理業務、技術コンサルティング、完成後のメンテナンス等に業務拡大を図っています。

3. プラントエンジニアリング業の特徴

プラントエンジニアリング業のビジネスの特徴を挙げると以下のとおりです。

(1)大規模プロジェクト

1件あたりの受注金額が会社規模に比べて大規模になることがあります。プロジェクトを受注して完成するまで、長いものだと3年以上を要することもあります。こうした大型プロジェクトは工事作業者が数千人規模になります。

(2)性能保証

プラントは、ビルやマンションとは異なり、単に物理的に完成するだけでなく、技術的な性能を達成することが求められ、契約上、性能保証義務を負うケースがあります。

(3)多様な契約形態

① 役務範囲による分類

設計、調達、工事を一括で請け負うケースが多いですが、それぞれを単独またはいくつかの組み合わせで請け負うケースもあります。プロジェクト管理業務や運転保守業務を請け負う場合もあります。

② 価格決定方式による分類

  1. ア.ランプサム契約(固定価格による一括請負契約)
    契約締結時に受注金額を確定する契約です。プラントが鍵を回して操業可能な状態まで責任を持って遂行するターンキー・ランプサム契約が代表的です。受注金額が大きく、順調に完成すれば利益も大きいですが、リスクも大きく赤字になることもあります。遂行中に資機材等の物価上昇があった場合、契約金額の調整を行うエスカレーション条項が付くケースもあります。
  2. イ.コスト・レインバース契約、コスト・プラス・フィー契約(実費償還契約)
    かかったコストに応じて収入金額が変動する契約です。コストの実費精算額に、フィーが上乗せされます。客先の指定する工期・予算・安全等を達成した場合の成功報酬が契約上定められる場合もあります。

③ 受注形態による分類

単独で受注する他、他社と共同でジョイント・ベンチャーやコンソーシアムを組成して受注するケースもあります。

  1. (ア)事業リスク
    これについては4.で説明いたします。
  2. (イ)契約変更
    プラントは予め仕様を合意するものの、遂行途中でも設計変更、役務範囲や工事物量の変更などが少なくありません。その度に下請先や顧客との対価の変更交渉が行われます。
  3. (ウ)プロジェクト・マネージャー
    プラントエンジニアリング会社では、プロジェクト・マネージャーが任命され、損益も含めてプロジェクト遂行の責任と権限を持ち、スケジュール・コスト・品質を管理します。

4. プラントエンジニアリングの事業上のリスク

プラントエンジニアリング会社はプロジェクトを遂行するにあたって、様々なリスクに直面しています。長期間を要する大規模プロジェクトについては、リスクも大型化します。

(1)技術的リスク・品質リスク

プラントは完成して性能が確認できるまでは、技術的な問題や品質問題が発生するリスクがあり、問題が発生した場合は手直しが必要になります。

(2)発注者に関するリスク

発注者の経営状況の悪化等により、契約代金の入金が遅延し、プロジェクトの工期が遅れたり、中断する場合があります。

(3)調達先・下請業者に関するリスク

特に海外の調達先や下請業者の場合、機器や作業の低品質、納期・工期遅延、労働者確保が困難となるリスクがあり、コストの増加をもたらします。

(4)物価変動リスク

原油等資源価格・鋼材価格の変動により、資機材調達コストや建設コストの変動リスクがあります。見積入札時の想定を超えて急激に上昇した場合、採算が悪化します。受注契約にエスカレーション条項をつけることでヘッジするケースもあります。

(5)為替リスク

海外案件については契約金額が外貨建となる場合が多く、大規模プロジェクトだと完成まで長期間を要するため、為替変動により損益に大きな影響を与えます。複数通貨での契約、工事代金と同一通貨建での発注、為替予約等によりヘッジしています。

(6)カントリーリスク他

海外案件の場合、法規制、税制、政治情勢、ストライキ、自然状況等により、プロジェクトのスケジュールやコストに影響を与える場合があります。

5. プラントエンジニアリング事業のビジネスの流れ

プラントエンジニアリング事業におけるビジネスの流れについては、一般的に以下のプロセスを経て行われます。

  1. 提案・見積・入札
    顧客のニーズに応じた仕様を提案します。コストを積算し、見積価格を提示します。海外案件の場合は、競争入札が多いですが、入札を行わない随意契約のケースもあります。
  2. 受注
    受注が決まり、契約締結をします。プラントの契約は、個別性が強く契約ごとに内容が異なります。
  3. 設計
    基本設計、詳細設計の順で行います。基本設計は、主要機器等の仕様を決定し、プラントの基本性能や配置を決定します。詳細設計では、設備の構成要素の詳細な仕様や配置を決定し、工事の図面を作成します。
  4. 調達
    調達先(ベンダー)を選定し、発注します。プラントに必要な主要な機器は特注製作品が大半です。ベンダーの作成する図面や仕様書の確認を行い、製作工程管理、納期管理、輸送計画の策定、輸送手配を行います。発注条件に従い受渡が行われ、現場搬入時に受入検査を行います。
  5. 建設工事・施工管理
    下請業者(サブコントラクター)を起用し、請負契約を締結します。土建工事から始まり、機器の据付、電気配管工事等へと進みます。工程管理、作業者の労務管理や安全品質管理を行います。
  6. 試運転
    プラントが完成した後、仕様どおりの性能が出るか試運転を行ってテストします。
  7. 引渡
    試運転に合格すると、引渡が行われます。引渡時点から瑕疵担保保証期間が開始されます。
  8. 運転・保守管理(メンテナンス)
    通常、運転保守管理は発注者が行いますが、契約によっては、工事請負契約とは別に、運転業務や保守管理業務を請け負うケースもあります。

プラントエンジニアリング会社のビジネスの流れと会計の関係

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