業種別会計
ソフトウェア業

第3回:自社利用ソフトウェア(制作取得費の会計処理、減価償却、減損)

2016.11.04
新日本有限責任監査法人 ソフトフェアセクター
公認会計士 吉田陽介

1. 自社利用のソフトウェアの定義

「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第12号、以下、ソフトウェア実務指針)では、自社利用のソフトウェアを以下のように分類しています。

利用目的
社内業務を効率的又は効果的に行う目的 社内の業務処理に利用している以下のようなソフトウェア
  • 財務会計ソフトウェア
  • 固定資産管理ソフトウェア
  • 販売管理ソフトウェア等の社内業務の基幹系ソフトウェア
第三者への業務処理サービス等の提供目的
  • 給与計算業務を受託している場合の給与計算ソフトウェア
  • 経理業務を受託している場合の財務会計ソフトウェア
  • クラウド・サービスに提供しているソフトウェア

上記のように自社利用のソフトウェアは、自社の管理業務等の内部業務に使用されるものだけでなく、得意先等の外部にサービスを提供するために利用するソフトウェアも含まれることになります。

2. 取得費・制作費の会計処理

(1)自社利用のソフトウェアの取得形態

自社利用のソフトウェアの取得形態には、以下の場合があります。

  • 外部から購入する場合
  • 外部に制作を委託する場合(外注制作)
  • 自社で制作する場合

このうち、外部から購入する場合及び外注制作の場合は、通常、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められることから、取得に係る支出は資産計上することになります(研究開発費等に係る会計基準四3)。一方、自社で制作する場合には、その会計処理にあたっては、将来の収益獲得又は費用削減が確実かどうか、判断することが求められます。

(2)資産計上される場合

「ソフトウェア実務指針」では、将来の収益獲得又は費用削減が確実である自社利用のソフトウェアの取得費・制作費は、無形固定資産として計上することとされています。将来の収益獲得又は費用削減効果が見込まれる程度と会計処理との関係は以下のとおりです。

将来の収益獲得又は費用削減 会計上の取扱い
確実であると認められる場合 資産計上
不明な場合 費用処理
確実であると認められない場合 費用処理

(3)将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合

将来の収益獲得又は費用削減効果が確実であると認められる場合について、「ソフトウェア実務指針」では、具体的な態様は様々であり、自社利用のソフトウェアの資産計上要件を包括的に掲げることは困難とされていますが、資産計上される場合として以下のような具体例が示されています。

例示 見込まれる効果
(1) 通信ソフトウェア又は第三者への業務処理サービスの提供に用いるソフトウェアを利用し、会社が契約に基づいて情報等の提供を行い、受益者からその対価を得る場合
  • サービスの受益者から獲得される収益
(2) 自社で利用するためにソフトウェアを制作し、当初意図した使途に継続して利用することにより、会社の業務を効率的又は効果的に遂行することができると明確に認められる場合(ソフトウェア制作の意思決定段階からの制作の意図・効果が明確)
  • 間接人員削減による人件費削減効果
  • 複数業務を統括するシステム採用による入力作業等の効率化
  • 従来なかったデータベース・ネットワーク構築による業務の効率化又は有効性の向上
(3) 市場で販売されているソフトウェアを購入し、かつ、予定した使途に継続して利用することによって、会社の業務を効率化又は効果的に遂行することができると認められる場合
  • ソフトウェアを利用することによる会社の業務の効率化、有効化

(4)実務上の取扱い

実務上、将来の収益獲得又は費用削減効果の検討にあたっては、以下の項目について検討することが必要になるものと考えます。

a. ソフトウェアの目的適合性の検討
b. ソフトウェアに係る便益の発生可能性の検討

a. ソフトウェアの目的適合性の検討

将来の収益獲得又は費用削減の効果の有無を判断するためには、第一にソフトウェアの仕様や機能が会社の意図する目的に適合しているかを検討する必要があります。ソフトウェアの仕様や機能が、会社の意図する目的にそぐわない場合や、目的を達成するのに不十分な場合には、将来の収益獲得又は費用削減を合理的に期待することができないことも考えられます。 制作又は購入するソフトウェアが、会社の収益獲得又は費用削減という目的を達成できるのかについて十分に吟味することが必要と考えます。

b. ソフトウェアに係る便益の発生の可能性の検討

当該ソフトウェアに係る便益の発生可能性、すなわちソフトウェアを利用することで、具体的にどのような形でどの程度の便益が発生するかの検討が必要になると考えます。

自社利用のソフトウェアでは、制作を開始する時点や、外部からの購入を決定する時点で、社内稟議や取締役会決議等の承認手続きを経るのが通常と考えられます。その際、将来の収益獲得又は費用削減効果の内容と程度につき、客観的な資料に基づき、可能な限り定量的・具体的に明らかにした上で承認を得ることが必要と考えます。

(5)資産計上の開始時点及び終了時点

a. 資産計上の開始時点

「ソフトウェア実務指針」では、自社利用のソフトウェアに係る資産計上の開始時点は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点であり、開始時点はそのことを立証できる証憑に基づいて決定することとなります。これは、無形の資産である自社利用のソフトウェアについては、資産計上の開始時点を恣意的に操作される可能性もあることから、客観的な証憑に基づき判断することを要請しているものと考えられます。

具体的な証憑としては、以下の例があげられています。

  • ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書
  • ソフトウェアの制作原価を集計するためのプロジェクトコードを記入した管理台帳

b. 資産計上の終了時点

「ソフトウェア実務指針」では、資産計上の終了時点は、実質的にソフトウェアの制作作業が完了したと認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定することとなります。終了時点も客観的な証憑に基づいて判断することが求められています。

具体的な証憑としては、以下の例があげられています。

  • ソフトウェア作業完了報告書
  • 最終テスト報告書

3. 自社利用のソフトウェアの減価償却

(1)自社利用のソフトウェアの原価償却方法

「ソフトウェア実務指針」では、自社利用のソフトウェアについては、各企業がその利用事態に応じたて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきものですが、市場販売目的のソフトウェアに比し収益との直接的な対応関係が希薄な場合が多く、また物理的な劣化を伴わない無形固定資産の償却であることから、一般的には定額法による償却が合理的であるとされています。

ただし、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」においては、自社利用のソフトウェアでもサービス提供に用いるソフトウェアで将来の獲得収益を見積ることができるものなど、見込販売収益に基づく減価償却を行うほうが費用・収益の対応の観点からより合理的な場合もあることが示されています。

(2)自社利用のソフトウェアの耐用年数

「ソフトウェア実務指針」では、自社利用のソフトウェアの償却の基礎となる耐用年数は、当該ソフトウェアの利用可能期間によるべきですが、原則として5年以内の年数とし、5年を超える年数とするときには、合理的な根拠に基づくことが必要としています。

(3)実務上の取扱い

実務的には、以下のような減価償却方法が採用されることが一般的です。

ソフトウェアの利用目的 収益との対応 減価償却の方法 耐用年数
第三者への業務処理サービスの提供目的 明確でない 定額法 5年ないし市場販売目的のソフトウェアに準じて3年
明確 市場販売目的のソフトウェアと同様の方法(販売見込数量(収益)に応じて償却)
社内業務を効率的又は効果的に行う目的 明確でない 定額法 5年

(4)開示

自社利用のソフトウェアの減価償却の方法については、重要な会計方針として以下の2項目を開示する必要があります。

  • 自社利用のソフトウェアに関して採用した減価償却の方法
  • 見込利用可能期間(年数)

4. 自社利用のソフトウェアの減損

(1)「固定資産減損会計基準」の適用範囲の考え方

「固定資産の減損に係る会計基準」(以下、固定資産減損会計基準)では、固定資産に関して、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失として計上します。ここでいう固定資産には、無形固定資産も含まれますが、他の会計基準に減損処理(減損処理に類似した会計処理を含む)に関する定めがある場合は対象資産から除かれます。

(2)自社利用のソフトウェアと「固定資産減損会計基準」の適用

自社利用のソフトウェアに関しては、市場販売目的のソフトウェアと異なり、減損に類似した収益性の低下を反映する会計処理は規定されていないため、「固定資産減損会計基準」及び同適用指針の適用対象になるとされています。


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