業種別会計
小売業

第1回:小売業の概要と百貨店業

2016.04.05
新日本有限責任監査法人 小売セクター
公認会計士 衣川清隆

第Ⅱ章 百貨店業

1. 百貨店業とは

わが国の百貨店は、三越をはじめとした呉服店から発展したものと、阪急など電鉄資本によるものが主流をなしています。経済産業省の商業統計上、①従業員50人以上の商業事業所で、②衣食住の商品群の各販売額が小売販売総額の10%以上70%未満であり、③セルフ方式店に該当しない商店が百貨店として分類されています。

百貨店の取扱商品構成としては衣料品が3.4割、食品が2.8割、雑貨が1.5割前後のシェアを占めており(日本百貨店協会平成26年全国百貨店年間商品別売上高)、他の小売業態とは、「都市立地」、「ファッション性」、「非日常性」、長年の歴史・のれんからの「安心・安全」などで差別化を図っています。

2. 百貨店業の特徴

(1) 仕入形態

第Ⅰ章3.にて記載のように百貨店の仕入形態には次の3種類があります。

  • 買取仕入
    仕入先から商品を買い取る仕入形態です。仕入段階で仕入先の瑕疵がない限り返品はできません。百貨店は納入時から在庫リスクを負うことはもちろん、保管責任を負担することになります(完全買取という)。
    なお、商品が売れ残った場合に実質的に返品が許される買取仕入形態もあります(条件付き買取という)。
  • 委託仕入
    仕入先から一定期間、商品を預りその販売を委託される仕入形態です。百貨店は在庫リスクを負担しませんが、保管責任を負担することになります。
  • 売上仕入(消化仕入ともいう)
    貨店の店頭において販売されたときに仕入れたとする取引形態です。百貨店の店頭に存在する商品であっても、販売されるまではその所有権及び保管責任は取引先にあり、商品の販売価格決定権についても原則的に仕入先が有します。百貨店は通常、在庫リスクも、保管責任も負担しないことになります。

(2) 販売形態

販売形態には大部分を占める店舗販売と店外販売の2種類に大別され、店外販売には外商や通信販売、WEB販売などがあります。外商は、法人や特別の個人顧客先に訪問して販売する形態や商社的に法人と取引をする販売形態をいいます。

(3) 代金回収方法

百貨店は、法人・個人など不特定多数の顧客の利便性追求を志向し、その回収方法は現金、商品券等の金券、クレジットカード及び自社クレジットカード(以下、ハウスカード)による掛売りなど多岐にわたっています。多くの百貨店がハウスカードを発行しており、カード会員の多い百貨店ではハウスカード売上の占める割合は高まっています。

(4) 棚卸資産

百貨店の取扱商品は多品種かつ大量であり比較的短期で入れ替わるため、個別商品単位で原価情報を把握するとなるとその管理に膨大なコストがかかります。この点、商品には販売価額(売価)を記した値札(バーコード入りタグ)が付されており、これにより発注から販売・棚卸まで売価にて終始一貫した商品管理を行うことができます。よって商品管理は、値札を管理する店別、部門別、種類別等を単位とした売価により行っていることが多いといえます。

(5) 改装(リニューアルともいう)

百貨店では、重要な販売促進活動の一つとして店舗の改装の頻度が他の小売業態と比して多いことが特徴的です。改装は店舗単位で多額な投資が行われる大規模なものと、テナント単位の小規模なシーズンものがあります。

(6) 商品券

百貨店では自社グループでのみ使用できる商品券及び日本百貨店協会に加盟している百貨店で使用できる商品券(全国百貨店共通商品券)を発行しています。現金と引き換えに商品券を顧客に引き渡し、商品引渡時にこれを対価として回収するといった販売方法をとります。商品券の発行は、顧客の囲い込み戦略の一つです。

(7) 友の会

友の会制度とは、顧客が会員となって一定期間、一定額の積立てを行うと、満期時に積立総額に加えてボーナス分をプラスした「買い物券」を利用できる制度です。例えば、毎月10,000円積み立てるコースを選択した場合には、1年後に12カ月分の積立総額120,000円に加えて1カ月分のボーナス分をプラスした130,000円の買い物券を利用できることになります。友の会制度も顧客の囲い込み戦略の一つです。

3. 百貨店業の業務の流れ

(1) 仕入

  • 買取仕入
    百貨店のバイヤーが商品名、数量を発注システムに登録し、EOS等で仕入先に発注を行うと物流センターや店舗の検品所に商品が納入されます。納入された商品は検品所で物流担当者により検品がなされ仕入計上されます。
  • 売上仕入(消化仕入)
    売上計上されるとともに、予め仕入先と取り決められた仕入原価率に基づいてシステム上自動的に仕入計上される仕組みとなっていることが多いです。

(2) 販売

店舗販売では、顧客が購入商品を選択し、レジにて現金、商品券等の金券(以下、商品券)及びハウスカード又はクレジットカードにて決済が行われます。

外商販売では、外商担当者が商品を持参して顧客宅を訪問し販売する場合もあります。法人向けの場合は、商社的な取引形態が多く、仕入先から法人顧客へ直接納入する場合もあります。

(3) 納金

閉店時の百貨店のレジ金合計は、①翌日釣銭用のレジ元金と②当日売上金からなります。

①翌日釣銭用レジ金は各レジ所定の金庫で保管します。②当日売上金については、閉店後にPOS売上データと照合した上で納金機に入金し、商品券等は別途回収BOX等に保管します。納金機に入金された現金は翌日以降に警備会社の管理の下で銀行口座に入金され、商品券等は事務管理センターに送られ管理システムにより回収処理されます。

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