1.はじめに
このシリーズでは不動産業について以下の予定で解説します。なお文中、意見にわたる部分は研究会の私見が含まれることをあらかじめご了承ください。
- 第1回:不動産業の事業と会計の概要
- 第2回:不動産分譲業の事業と会計の特徴
- 第3回:不動産賃貸業の事業と会計の特徴
- 第4回:保有目的の変更・不動産の時価
2.不動産業とは
不動産とは、民法第86条で、「土地及びその定着物」とされており、不動産以外のものはすべて動産とされています。土地の定着物とは、土地に永続的に固着し、撤去の困難なものを意味し、樹木等の自然物のほか、人工の定着物である各種の構築物も含むと解されています。不動産業については、宅地建物取引業法において不動産業を行うものとして宅地建物取引業者が定められていますが、不動産業者には、旧財閥系、鉄道系、ゼネコン系、金融・商社系、独立系、メーカー系や個人事業者などさまざまな業者がいます。
投資という観点から見ますと、不動産業には、不動産の開発・分譲業や不動産賃貸業など不動産に資金を投下して行う事業(言い換えれば不動産を商品とする事業・アセット型事業)と流通、管理など不動産に直接資金を投下しないで、不動産に関連したサービスを行う不動産関連サービス業(ノンアセット型事業)に分類することもできます。
3.不動産業の特徴
(1)取扱商品が高価な資産であること
不動産はビジネスや居住といった人間が日常生活を送る上での基盤であり、不可欠なものとなっています。地球上の陸地は有限であり、特に国土の狭い日本においては高価な資産です。
(2)長期にわたって使用できること
消費財や器具備品などは、消費され、減耗・劣化しますが、土地はよほどの天変地異がない限り、永続的に存在します。建物についても建築基準法などによる耐久性を満たしていれば長期間にわたり使用することができます。このため、一度取得すれば長期にわたって使用が可能であり、頻繁に購入するものではありません。そのため資産の維持管理が必要となります。
(3)反復・継続しない取引であり、掛け売りが少ないこと
不動産には一つとして同じものがなく一つ一つに個性があり、金額も高額です。不動産業者でない限り、個人も法人もたびたび購入するものではないため、不動産業者においては消費財や原料メーカーのように継続して同じ相手と取引するわけではありません。不動産の買手とは一度限りの取引ということになりますので、与信をして掛け売りするということは通常考えられません。
(4)取引に関連するさまざまな規制があること
不動産が高価な資産であるため、その取引が健全に行われるため、あるいは開発が計画的に行われるためなど、さまざまな要因・目的から、不動産登記法、国土利用計画法、都市計画法、宅地建物取引業法、建築基準法などの法規制がなされています。このような法規制が多いことは不動産業の事業のリスクにもつながってきますので注意が必要です。
(5)さまざまな不動産関連税制があること
不動産については安定税収確保等の観点から、不動産取引には取得・保有・賃貸・売却などの取引局面において、不動産取得税、登録免許税、固定資産税、売却益への課税など、さまざまな税金が課されます。
(6)土地価格(地価)制度の存在
土地の価格は「一物四価」などといわれるように、公的な地価指標だけでも、一般の土地取引の指標とするための公示価格、公示価格を補うものとしての都道府県基準地価格、相続税評価の基準となる相続税評価額(路線価)、固定資産税課税の基準となる固定資産税評価額等さまざまな基準価格が存在しています。このほか、不動産の価格には、実際に取引された価格を示す実勢価格や販売可能見込額、収益還元価額などの試算価格があります。
(7)参入障壁が低く、規模のメリットも薄いこと
不動産業を営むに当たっては、宅建業免許等の規制はあるものの、製薬会社のように研究開発の蓄積が必要であったり、金融業のように厳しい規制があるわけではないため、資金さえあれば比較的参入しやすい事業であると考えられます。従って、製造業や運輸業等を本業とする企業が、余資運用のために不動産投資や不動産事業を行うこともあります。
(8)不動産は棚卸資産にも、固定資産にも、有価証券にもなり得ること
一般的な製造業や商業を営む企業にとって、不動産は、通常、製造設備や店舗、会社事務所などとして固定資産に分類されることになります。これに対して不動産分譲業を営む企業では不動産は売り物であり、棚卸資産としての性質を有します。
さらに、近年の不動産の証券化技術と制度の発展に伴い、現物不動産への投資だけでなく、証券化された不動産への投資も活発になっており、不動産を証券として保有する形態も多くなってきています。
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