(1) 映画制作費の計上科目
我が国においては、映画・映像作品に関する固有の会計基準が存在しないため、会計慣行の範囲内で各社各様の処理が行われているのが現状となっています。
我が国の会計慣行上、認められている計上科目とその論拠を整理すると以下のようになると考えられます。
| 科目 |
根拠 |
| 棚卸資産 |
- 映像作品は収益を獲得するために制作されるものであるため、棚卸資産に該当する。
- 映像作品は、 販売活動において短期間に消費されるものであるため、棚卸資産に該当する。
- 転売目的で保有する
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| 無形固定資産 |
- 映像作品は、無形であり、かつ、それ自体を直接販売することにより収益が獲得されるのではなく、「利用」することにより収益が獲得されるため、無形固定資産に該当する。
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| 有形固定資産 |
- 映像作品は、それを直接販売することにより収益が獲得されるのではなく、「利用」することにより収益が獲得されるため、固定資産に該当する。
- フィルム等に複写された映像作品は物的実体を伴う(有形である)。
- 映像作品は、法人税法上、「器具備品」(有形固定資産)に区分されるため、企業会計上も同様に有形固定資産に該当する。
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| 投資有価証券、出資金 |
- 純粋な投資目的で映像作品に投資している場合は、投資有価証券、出資金等で処理するのが妥当である。
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① 棚卸資産として計上するケース
映画・映像作品の制作費を棚卸資産として計上する実務は、比較的歴史のある上場映画会社において多く見られるもので、当該処理が継続して採用されるうちに、一つの公正な会計実務として定着したものと考えられます。
映像作品の制作費を棚卸資産とする根拠は、映像作品が収益を獲得する目的で制作される点にあると考えられます。すなわち、映像作品は、収益を獲得することを目的として保有しているという点で、棚卸資産の典型である一般的な商製品と変わるところはないという解釈がなされてきたものではないかと考えられます。また、映像作品は、販売過程において短期間のうちに消費される資産と理解する場合も、同様に棚卸資産に該当すると考えられます。
転売目的で権利や映像マスターを保有する場合は、販売を目的として保有する資産となり、典型的な棚卸資産といえます。
② 無形固定資産として計上するケース
この処理の根拠は、映画・映像作品は、収益獲得を目的として制作されるものの、それを直接販売することによって収益が獲得されるのではなく、映画・映像作品を「利用」することによって収益が獲得されるという点にあると考えられます。すなわち、映像作品は、商製品のようにそれを直接販売することにより収益を獲得することが目的ではなく、興行や映像作品を複写したDVDの販売等、映画・映像作品を「利用」することにより収益が獲得される点に着目し、その性質が無形固定資産と解釈されたものと考えられます。
③ 有形固定資産として計上するケース
少数派ではありますが、映画・映像作品制作費を有形固定資産として処理しているケースも見受けられます。映画・映像作品制作費を棚卸資産ではなく固定資産とする根拠は、無形固定資産とする場合と同様に、映画・映像作品はそれを「利用」することによって収益を獲得すると解釈されていることによるものと考えられます。
無形固定資産ではなく、有形固定資産とする根拠は、法人税法上、映画フィルムが有形固定資産の「器具及び備品」に区分されていることや、映画・映像作品は通常、フィルムやディスク等のメディアに保存されていることから、外観上、物理的な実態がある点に着目したものと考えられます。
④ 投資有価証券、出資金として計上するケース
製作委員会等に出資は行うものの、純粋に分配金の受取りのみが目的である場合があります。そのようなケースにおいては、当該出資は、投資有価証券または出資金等として処理されるのが通常です。出資金が、金融商品取引法上の「有価証券」に該当する場合は投資有価証券、それ以外の場合は出資金等で処理することになると考えられます。
⑤ パッケージ製品の計上科目
映像作品をDVDやビデオ等に複写して販売する場合のDVD-ROMやビデオテープ等のメディア代、複写費用、パッケージ印刷費、梱包費等については、販売を目的として保有する資産である点で、典型的な棚卸資産といえます。そのため、これらの費用は棚卸資産として処理されるのが通常であると考えられます。
(2) 映画制作費の資産計上のタイミング
我が国における実務
映画制作費について資産計上を開始するタイミングについても、我が国の会計基準上明確になっておらず、資産計上開始のタイミングの判断は、各社に委ねられているのが現状です。
各企業において、費用収益対応の原則の観点から、取引実態に合わせて、制作費に資産性が認められるようになった時点から資産計上が開始されていると考えられます。そのため、各企業間で判断基準が統一されていない可能性ばかりでなく、同一企業においても各プロジェクトによって資産計上の開始時点が異なっている可能性もあると考えられます。
我が国における主な実務を整理すると、資産計上を開始するタイミングとしては、以下のような3つのパターンが考えられます。