I.はじめに

第3回目の今回は、物流・倉庫業の会計処理・表示の特徴について説明します。

なお、本稿において意見にわたる部分は執筆担当者の私見であることを予めお断りしておきます。

II.物流・倉庫業の会計処理・表示の特徴

1.会計処理の特徴

(1)収益計上基準

一般に収益計上は、役務提供を完了した時点で行うことが原則とされていますが、物流業においては、短期間に貨物を大量輸送し同質のサービスを反復継続している実務慣行に基づき、会社が合理的と認める収益計上基準を継続して適用しているケースがあります。

また、倉庫業においては、通常、取引慣行として1ヶ月の売上を10日ごとに分割して計上するいわゆる3期制が採用されています。

【収益計上基準の事例】

○トラック輸送
トラックへの積込完了時に収益に計上する方法。

○倉庫の入出庫作業
倉庫の入・出庫完了時に収益に計上する方法。

○倉庫の保管業務
1期(10日)終了時に収益に計上する方法。

なお、法人税法においても、業界の実務慣行を考慮した次のような取り扱いを定めています。

【法人税基本通達2-1-13】

①発売日基準
乗車券等を発売した日(自動販売機によるものは集金した日)に、その販売に係る運送収入の額を計上する方法。

②積切出帆日基準
船舶、航空機等が積地を出発した日に当該船舶、航空機等に積載した貨物に係る運送収入の額を計上する方法。

③航海完了基準
一航海に要する期間がおおむね4ヶ月以内である場合、当該航海に係る運送収入の額を航海完了日に計上する方法。

④日割・月割基準
運送に要した期間または通常要する期間の経過に応じて、日割または月割等により運送収入の額を計上する方法。

(2)売上債権貸倒時の債権回収手段

民法第174条において、運送賃に係る債権は1年間の短期消滅時効となる旨が定められています。これは、日常的に頻繁に行われている契約に基づく債権について、権利関係を単純化する趣旨で設けられているものですが、物流・倉庫業においては本条の適用を受けることを踏まえ、一般事業会社と比較してより厳密な債権管理を行う必要があります。

物流・倉庫業において売上債権の貸し倒れが発生した場合、債権回収の手段として留置権の行使が有効です。留置権には民法第295条で定める民事留置権と、商法第521条で定める商事留置権があります。

民事留置権とは、他人の物の占有者がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、その物を留置する権利をいいます。一方、商事留置権とは、債権者、債務者ともに商人である場合、商行為によって生じた債権の弁済を受けるまで、債権者が商行為によって占有するに至った債務者所有の物または有価証券を留置する権利をいいます。

民事留置権においては、債権と物との間に個別関連性が必要とされますが、商事留置権においては、債権と物との間に個別関連性が必要とされていないことから、物流・倉庫業の債権回収においては、商事留置権の行使がより有効な手段であるといえます。

(3)本支店会計の適用

前述のとおり、物流・倉庫業においては、事業所が散在しており、また事業所間の取引が比較的多いという特徴があります。そのため、事業所間で本支店会計を適用しているケースが見受けられます。