1.減価償却

(1)減価償却の種類

電気事業における減価償却費は、規則別表第1において、普通償却費・特別償却費・試運転償却費に区分して整理することが定められています。

(2)普通償却費

電気事業固定資産の減価償却は、現状多くの場合、定率法が採用されています。ただし、送電設備・配電設備・業務設備については、一部の資産について、取替法が採用されています。

(3)特別償却費

特別償却とは、租税特別措置法に規定される特別償却(一時償却および割増償却)のことであり、法人税法上、一定の要件を満たす企業が通常の減価償却とは別枠で償却することを認める制度です。特別償却は産業の振興など政策的な見地から設けられたものであり、その趣旨から非常に多くの種類がありますが、電気事業においては「エネルギー需給構造改革推進設備等の特別償却」などが広く利用されています。

特別償却費の会計上の取り扱いについては、「減価償却に関する当面の監査上の取扱い(監査・保証実務委員会報告第81号)」において、「租税特別措置法に規定する特別償却(一時償却及び割増償却)については、一般に正規の減価償却に該当しないものと考えられる」と定められています。よって一般事業会社においては、通常、特別償却費は減価償却費として費用処理されるのではなく、剰余金処分方式による会計処理がなされるものと考えられます。

一方、電気事業者においては、前述のとおり、規則において特別償却費も減価償却費に含まれると定められていることから、会計上も減価償却費として費用処理がなされます。

【図表9:特別償却の仕訳例】

一般事業会社の仕訳例

(借) 減価償却費 300
(普通償却分)
(貸) 減価償却累計額 300
(普通償却分)
(借) 繰越利益剰余金 100
(特別償却分)
(貸) 特別償却積立金 100
(特別償却分)

電気事業会社の仕訳例

(借) 減価償却費 400
(普通+特別)
(貸) 減価償却累計額 400
(普通+特別)

2.資本的支出と収益的支出

固定資産に関する支出を、通常、新設・増設の場合には資本的支出として、改修・修繕の場合には収益的支出として処理すべき点は、一般事業会社と電気事業会社において同様の取り扱いとなります。電気事業会社においては、資本的支出に関連して次の点で一般事業会社と異なります。

一般事業会社においては、付加・取替の場合に資本的支出と収益的支出のいずれに分類するかについて、固定資産の価値を高めたり耐久性を増したりするかどうかという実態判断に照らして分類されます。

電気事業会社においては、この点さらに前述の資産単位物品表に挙げられている物品か否かという明確な水準に照らして分類されます。これは、固定資産に関する支出の実態判断に当たって、恣意(しい)性を排除するためです。これを逆の観点から捉えると、資本的支出として処理すべき一定単位の物品をとりまとめたものが、資産単位物品表ということになります。

電気事業会社における資本的支出と収益的支出の判断についてまとめると、図表10のようになります。

【図表10:電気事業会社における資本的支出と収益的支出の判断】
支出の例 資産単位物品 非資産単位物品
新設・増設 資本的支出
付加・取替 資本的支出(例外:収益的支出) 収益的支出(例外:資本的支出)
改修・修繕 収益的支出

3.固定資産仮勘定

(1)固定資産仮勘定の種類

建設仮勘定と除却仮勘定を総称して、固定資産仮勘定といいます。建設仮勘定には、一般事業会社同様、使用開始前の設備に係る支出が整理されます(規則第5条)。除却仮勘定には、設備が停止してから除却完了するまでの間、当該設備の帳簿価額が整理されます(規則第20条)。

設備の建設だけでなく除却においても、稼動停止から設備の除却完了までに長期間を要し、仮勘定の整理を要するという点に、電気事業の特徴があります。

(2)建設仮勘定

  • 建設仮勘定の種類

    建設仮勘定は、建設準備口と建設工事口に細分されます(規則別表第1)。建設準備口には、工事の実施が決定する前における支出(調査費用など)が整理されます。建設工事口には、工事の実施が決定した後の、当該工事に係る支出が整理されます。

    すなわち、工事計画など着手段階においては、建設準備口に支出を整理し、監督官庁(経済産業省)の認可を受けるなど工事の実施が確定した段階で、建設準備口から建設工事口への振り替えが行われることとなります。

  • 建設仮勘定から設備勘定への振り替え

    建設仮勘定から設備勘定への振替方法については、電気事業法第5条に規定されています。基本的に設備の使用を開始したときに振り替えが行われますが、使用開始時点における状況によって、図表11のように処理方法が区分されます。

【図表11:建設仮勘定の振り替え】
図表11:建設仮勘定の振り替え

図表11において、落成とは建設工事が完了することをいい、精算とは前述した総係費の集計・配賦など関連費用の計算まで完了することをいいます。

設備勘定に振り替えるタイミングとは、言い換えれば、減価償却計算を開始するタイミングであり、適正な損益計算のために重要です。

(3)除却仮勘定

固定資産の除却に係る費用を、固定資産除却費といい、除却損と除却費用に区分されます(規則別表第1)。除却損には、固定資産の帳簿価額から、庫入価額(別の用途に転用されるため貯蔵品等に振り替えられる部分)を控除した額が整理されます。除却費には、除却のための工事に要した額が整理されます。

電気事業における除却処理の特徴的な点は、期中に資産を除却した場合の減価償却費の取り扱いです。一般事業会社では、期首から除却時点までの減価償却費を計上しますが、電気事業会社においては、月割りの減価償却費を計上せず当該資産が除却された事業年度の直前の事業年度までの金額により除却処理することと定められており(規則第16条)、実質的に期首に除却が行われたものと見なし、会計処理をします。

ただし、電気事業会社においては、除却損・除却費用はともに固定資産除却費として営業費用の区分に計上されるため(一般事業会社においては除却損は通常特別損失)、上記の相違が営業損益に与える影響はありません。