III. 消費収支計算書の読み方

この章では、学校法人の計算書類の1つである消費収支計算書の構造とその読み方について解説します。

学校法人は、貸借対照表、消費収支計算書、資金収支計算書の3つの計算書類の作成を行いますが、その中の貸借対照表と消費収支計算書の関係は、消費収支計算書における一年間の収入と支出の差額である「消費収支差額(※1)」が貸借対照表の「繰越消費収支差額」に連動しているため、先に述べたとおり、企業会計における貸借対照表と損益計算書の関係と同様であるということができます。

しかしその一方で、企業会計の損益計算書とは大きく異なる点があります。それは消費収支計算の結果である消費収支差額は「あくまで一年間の収入と支出の差額であり、企業会計における一年間の損益とは異なるものである。」ということです。

この大きな相違点、学校会計の「収入と支出の差額」と企業会計の「損益」の違いについて理解することが、学校会計における消費収支計算の仕組みや、「収支均衡」の意味、そして消費収支計算書の正しい理解につながると考えられます。

この学校会計の「消費収支差額」と企業会計の「損益」との違いについて、消費収支計算書の構造や収入支出の各科目の計上方法に触れながら、解説します。

(※1)便宜上、当年度の消費収入と消費支出の差額である「当年度消費収入超過額または当年度消費支出超過額」を「消費収支差額」と表記します。

1. 消費収支計算書の構成

(1)帰属収入

消費収入を計算するに当たっては、まず「帰属収入」を計算します。帰属収入とは、図4のとおり、学生生徒等納付金や補助金、寄付金など学校における主要な収入のことです。そのため、借入金のように入金はあるものの外部への返済義務があるような収入は含まれません。

帰属収入は原則として発生主義により会計処理を行います。たとえば、翌年度の授業料を当年度に収受した場合には、当年度は「前受金」として計上し、翌年度に「学生生徒等納付金」に振り替えることになります。

この帰属収入は企業会計における売上高などの収益と同等のものと考えることができます。すなわち、帰属収入とは、学校が一年間に得た学校の提供するサービスの対価であり、教育や研究を行うための返済義務のない財源ということができます。

図4 消費収支計算書の例(図2より抜粋)

学生生徒等納付金180
手数料20
寄付金50
補助金50
資産運用収入20
資産売却差額10
事業収入10
雑収入10
 帰属収入350
 基本金組入額△50
 消費収入300
人件費120
教育研究経費100
管理経費50
借入金等利息10
資産処分差額10
徴収不能引当金繰入額10
 消費支出300
 消費収支差額0

(2)基本金組入額

次に図4のとおり、この帰属収入から学校法人会計特有の考え方である「基本金組入額」を差し引いて、「消費収入」を計算します。

前章でこの金額の算定には学校法人の消費収支計算書を理解する上でとても重要な2つのポイントがあると説明しました。第1に、基本金組入額は、固定資産等への支出金額のうち、新規購入の場合はその取得価額全額を組入れ、取替更新の場合には取替前と取替後の資産の取得価額の差額を差額補充的に計算するということです。第2に、基本金に組入れるのは、帰属収入を財源とするものに限られることです。たとえば借入金を財源として購入した場合は、帰属収入から得られた自己資金で返済したタイミングで返済金額を基本金に組入れるということです。

(3)消費支出

消費支出とは、学校法人が教育研究等のサービスや管理を行うために必要な学校運営のためのコストです。教員や職員の給与や手当(賞与)、所定福利費(法定福利費)、退職金(退職給与引当金繰入額)などの「人件費」と、教育や研究のための支出である「教育研究経費」、学校の管理運営のための支出である「管理経費」、固定資産の除売却や有価証券の売却や評価による除売却損益や評価損である「資産売却(処分)差額」、徴収不能引当金の繰入額である「徴収不能引当金繰入額」を集計して消費支出を計算します。消費支出には、固定資産の減価償却額や引当金の繰入額といった資金の支出を伴わない経費の計上も求められています。

上記の通り、消費支出の内容は、企業会計の売上原価や販管費等とほぼ同様と考えられます。

2. 帰属収入の各科目

次に主な収入項目の具体的内容について説明します。

(1)学生生徒等納付金

授業料、入学金、実験実習料、施設設備資金など学生生徒から徴収する収入です。

前述した通り、翌年度に入学する学生からの授業料や入学金を当年度中に収受した場合には、当年度においては「前受金」として処理し、翌年度に収入科目である「学生生徒納付金」に振り替える処理を行います。

学校の収入の柱となるものですが、学生数の定員については文部科学省への設置申請により定められており、その人数規模に応じた金額になります。昨今の少子化は特にこの科目に影響すると考えられます。

(2)手数料

当該会計年度に実施する入学試験の検定料等の収入が計上されます。受験者数の増減により、収入金額が影響を受けます。

(3)寄付金

企業や個人からの寄付金です。原則として現金主義に基づき入金時に計上します。

(4)補助金

学校の教育や研究に関する経費、固定資産の購入の助成のために、国または地方公共団体から支給される補助金です。納付決定に基づき対象期間に合わせて発生主義で計上します。国及び地方公共団体が定めるルールに従って金額が決定されます。

(5)資産運用収入

預金や貸付金の利息、有価証券の配当金等の金融資産から得られる収入、および教室等を外部に賃貸することによる収入が計上されます。発生主義で計上されます。

(6)事業収入

食堂、売店、寄宿舎等教育に付随する活動から得られる収入や病院や農場、研究所などの附属機関で得られる収入、国や企業など外部からの委託を受けた研究契約に基づく収入、学校の行う収益事業からの収入が計上されます。原則として発生主義に基づく計上が行われます。

上記の収入項目の中で消費収支計算書を読み解く上で注意すべき点は、寄付金は原則として現金主義で計上される点です。寄付の目的である研究活動や設備の増強といった学校の活動は寄付金の入金後にスタートすることが多いため、経費等の支出の発生年度が寄付金の収入計上年度よりも遅れる結果となることがあります。