新日本有限責任監査法人
業種別会計
自動車産業

第3回:メーカー・ディーラーの事業・会計処理の特徴

2010.07.07
新日本有限責任監査法人 自動車産業研究会
公認会計士 藤田英之/小栗一徳/松本雄一

1.はじめに

第3回は、自動車産業のうち自動車組立(メーカー)および自動車販売(ディーラー)における事業、会計処理等の特徴について解説します。

なお、意見にわたる部分は研究会の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.自動車組立(メーカー)事業の特徴

自動車組立(メーカー)事業の主な特徴として、次の点を挙げることができます。

(1)幅広い海外展開

メーカーは、幅広く海外展開を進め海外に子会社・関連会社を多数持ち、海外拠点で製造を行い海外市場にて販売するケースが多く見受けられます。日本の自動車産業は、世界でも最高水準の品質管理や多品種少量生産を要求される市場で高い評価を受け、ヨーロッパ市場を除き一般的に競争優位性は高いため、メーカーが輸出や海外事業に依存する割合も高くなっています。

(2)リコール制度等

自動車のリコール制度は、対象台数が大量だとマスコミで報じられるため、一般に広く知られていると思います。リコール制度のほかにもこれと同様に、車両に関する個別の不具合案件についてメーカーが自主的に無償で修理を実施する改善対策やサービスキャンペーンがあります。

※リコール制度

事故を未然に防止し、自動車ユーザー等を保護することを目的とするもので、自動車が道路運送車両の保安基準に適合しなくなるおそれがある状態、又は適合していない状態で、原因が設計又は製作の過程にある場合に、その旨を国土交通省に届け出て自動車を回収し無料で修理する制度

※改善対策

自動車が道路運送車両の保安基準に不適合状態ではないが、安全上又は公害防止上放置できなくなるおそれがある場合に、その旨を国土交通省に届け出て自動車を無料で修理する制度

※サービスキャンペーン

リコールや改善対策に該当しないもので、商品性改善のためメーカーが自主的に行う無償修理・改修で国土交通省の通達に基づくもの

(3)研究開発

定期的なフルモデルチェンジ等に対応するため、研究開発が活発で投資額も一般に多額となります。研究開発の区分としては、基礎研究、フルモデルチェンジ、マイナーチェンジ、部分的な改善研究などが一般的です。自動車産業のすそ野は広く、製品に高い技術力が要求されることから、他社と共同で研究開発を実施する場合や外部に研究開発を委託する場合、逆に研究開発を受託する場合も少なくありません。

(4)棚卸資産

メーカーの棚卸資産は、総じて標準原価計算にて原価計算が行われ、決算時に原価差額が調整され金額が決定します。

棚卸資産の内訳をみると原材料の比率が非常に高く80%~90%におよびます。この比率の高さは、自動車は数万点におよぶ部品点数から組み立てられ、ほとんどをサプライヤーから調達していることによると考えられます。

メーカーが計上する棚卸資産の内容は一般的に次のとおりとなります。

  1. 製品:完成した車両、販売用部品
  2. 仕掛品:組立途上の車両
  3. 原材料:素材(鋼板等)、購入部品
  4. 貯蔵品:補助材料、設備補修の予備品等

(5)金融子会社

自動車は消費者からすれば高額品のため、販売に当たってはリースやクレジットなどの利用が不可欠な面があり、メーカーはグループの中に金融子会社を有している場合があります。この場合の「事業の種類別セグメント」は、「自動車産業(2輪・4輪)」と「金融」に区分されることが一般的です。

(6)係争事件

メーカーは様々な特許を有しているため特許侵害も発生しやすく、知的財産に関するリスクは高いといえます。また、北米を中心に自動車による障害・死亡事故に関連するPL訴訟が提起され、その件数は多数かつ賠償金の請求も比較的多額といわれます。