業種別会計
アパレル業界

第4回:固定資産の減損

2019.04.10
EY新日本有限責任監査法人 消費財セクター
公認会計士 飯塚祐太/小林勇人/中村拓也/矢野雄紀

1. アパレル業界における固定資産の特徴

アパレル業界においては、川上から川下まで一般的に以下のような商流をたどります。

<図表1>

糸生地メーカー 
⇒ 染色業者・縫製業者 
 ⇒ アパレルメーカー 
  ⇒ 百貨店・ショッピングセンターなどの小売業者

※途中段階で卸売業者や商社が入る場合もある。

川上のメーカーにとっては、工場等の製造設備が主な固定資産となり、川下の小売業者にとっては、百貨店等の建物付属設備や什器備品、路面店の土地や建物が主な固定資産となります。また、近年ではECのシステム導入に伴う無形固定資産(ソフトウェア)も重要な資産となりつつあります。
また、本来の建物等の固定資産以外に資産除去債務もあります。特に、川下の小売業者においては、ショッピングセンターやファッションビル等への出店に当たり、建物等の賃借契約に、賃借契約の終了に際して原状回復義務が規定されているケースも多く、この原状回復義務は資産除去債務として固定資産が計上されます。
本稿では、これらの固定資産の中で、アパレル業界に特徴的な論点が存在する店舗等の販売施設や、資産除去債務に関連する資産の減損処理について解説します。

2. 固定資産の減損処理

減損処理とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めないと判断された場合に、回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理です。
減損処理は主に、資産のグルーピング、減損の兆候の判定、減損損失の認識の判定、減損損失の測定、のプロセスで実施されます。

(1) 資産のグルーピング

固定資産の減損に係る会計基準二6(1)において「減損損失を認識するかどうかの判定と減損損失の測定において行われる資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行う」とされています。
多店舗展開をしているアパレル小売業においては、通常、キャッシュ・フローを生み出す最小の単位は店舗であることが一般的で、資産のグルーピングは店舗単位で行うことが多いと考えられます。
しかし、必ずしも店舗単位のグルーピングに限られるわけではなく、例えば同一敷地内に複数の店舗を出店している場合など、それらの店舗が生み出すキャッシュ・イン・フローが相互補完的であり、一方の店舗を切り離したときに、他方の店舗から生じるキャッシュ・イン・フローに大きな影響を及ぼすことが考えられる場合には、それらの店舗を一体としてグルーピングをする方法も考えられます。また、管理会計上の区分や、投資の意思決定の区分が必ずしも店舗単位ではない場合には、企業の経営の実態が適切に反映されるようなグルーピングも考えられます。

(2) 減損の兆候の判定

固定資産の減損に係る会計基準二1において「資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象がある場合には、当該資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定を行う」とされており、減損の兆候として、次のような事象が例示されています。

  • 資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること
  • 資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること
  • 資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること
  • 資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したこと

① 資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みである場合

店舗等の資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナス、あるいはマイナスとなる見込みである場合は、減損の兆候を認識することとなります。
留意点として、営業活動から生ずる損益は、営業上の取引に関連して生ずる損益であり、これには、本社費等の間接的に生ずる費用が含まれます。従って、減損の兆候の判定上、本社費等の間接的に生ずる費用は、合理的な方法により、各資産又は資産グループに配賦した上でマイナスの判定が実施されるものと考えられます。
また、ここでいう「継続して」とは、おおむね過去2期を指すものとされています(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針12項(2))。

なお、開店当初において、季節的変動や出店経費の影響等の理由により、あらかじめ合理的な赤字幅が見込まれ、かつ当初の計画から著しく下方に乖離していない場合は、減損の兆候に該当しないと考えられます(同適用指針12項(4))。なお、このようなケースにおいては、あらかじめ合理的な事業計画(当該計画の中で投資額以上のキャッシュ・フローを生み出すことが実行可能なもの)が策定されている必要があります。

② 資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みである場合

店舗の退店、ブランドの撤退、店舗の転貸等により、資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じた、又は、生ずる見込みである場合は、減損の兆候となります。 なお、このような変化は実際に生じた場合のみならず、取締役会等において決定された段階や、決定権限が委譲されている権限者の承認の時点で、回収可能価額を著しく低下させる変化が生ずる見込みである場合も、減損の兆候に該当するとされています(同適用指針第82項)。

③ 資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みである場合

経営環境の著しい悪化は個々の企業によって大きく異なるため、一概に例示することは難しいものの、法律的環境の著しい変化、自然災害、不祥事によるブランド価値の毀損、近隣の環境の著しい変化等が考えられます。資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化、あるいは、悪化する見込みである場合には、減損の兆候となります。

④ 資産又は資産グループの市場価格が著しく下落した場合

自社で土地を保有する場合は、所有する土地の市場価格が著しく下落したことは、減損の兆候となると考えられます。

(3) 減損損失の認識の判定、減損損失の測定

固定資産の減損に係る会計基準二2(1)において「減損の兆候がある資産又は資産グループについての減損損失を認識するかどうかの判定は、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識する」とされています。
また、固定資産の減損に係る会計基準二3において「減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とする」とされています。
減損損失の認識の判定、及び減損損失の測定において、見積もられる将来キャッシュ・フローは、企業の固有の事情を反映した、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づきます。
取締役会等の承認を得た中長期計画に基づき、各資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローを見積もることが考えられますが、多店舗展開しているアパレル小売企業の場合、実務上は、各資産又は資産グループ単位で中長期計画が存在しない場合もあり ます。その場合は、過去の一定期間における実際のキャッシュ・フローの平均値に、これまでの趨勢を踏まえた一定又は逓減する成長率の仮定をおいて見積もる方法が考えられます(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針36項(2))。

3. 資産除去債務及び差入預託保証金等に関する減損処理

(1) 原状回復義務による資産除去債務について

多店舗展開しているアパレル小売企業において、建物等の賃借契約により原状回復義務が規定されており、内部造作等の除去費用が資産除去債務として計上されている場合があります。この場合、当該賃借契約に関連する敷金が資産計上されているときは、当該計上額に関連する部分について、当該資産除去債務の負債計上及び、これに対応する除去費用の資産計上に代えて、当該敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積もり、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法によることができるとされています(資産除去債務に関する会計基準の適用指針9項)。この方法を採用している場合、敷金のうち、回収が最終的に見込めないと認められる金額は、非金融資産に該当すると考えられ、そのうち未償却金額は減損会計の適用範囲に含まれるものと考えられます。

(2) 建設協力金等の差入預託保証金について

店舗の出店の際に、建設協力金等の差入預託保証金を差し入れるケースがあります。 その場合、原則として、差入預託保証金を回収可能額である時価で資産計上し、支払額と時価との差額を長期前払家賃として計上しますが、その長期前払家賃は非金融資産に該当すると考えられ、そのうち未償却金額は減損会計の適用範囲に含まれるものと考えられます。

4. 関連する内部統制

アパレル小売企業における減損会計においては、減損のグルーピングの単位数が多数になるケースが多く、減損対象の固定資産、営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フロー、さらに本社費等の間接費の集計、配分作業等で誤りが生じやすいため、複数の担当者によるチェックや、それらの合計値と貸借対照表、損益計算書等の整合性を確認する内部統制を整備することが考えられます。
また、各資金生成単位の将来キャッシュ・フローを算定する際には、経営企画部門や店舗管理部門等から事業計画を入手することが考えられますが、事業計画が過度に積極的なものであったり、目標値であったりする場合もあるので、経理部門において会計上の見積りの基礎として、ふさわしい仮定か確認する統制が必要だと考えられます。

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