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税効果会計(平成27年度更新)

第2回:税効果会計の意義と計算構造

2016.05.13
新日本有限責任監査法人 公認会計士 浦田 千賀子
新日本有限責任監査法人 公認会計士 村田 貴広

1. 税効果会計の意義・対象

税効果会計とは、企業会計上の収益又は費用と、課税所得計算上の益金又は損金の認識時点が異なることから、会計上の資産・負債と課税所得計算上の資産・負債の額に相違がある場合に、法人税その他所得を課税標準とする税金を適切に期間配分することにより、法人税等(法人税、住民税、所得を課税標準とする事業税及び地方法人特別税)を控除する前の税引前当期純利益と税金費用を合理的に対応させることを目的とする会計手法です。

税効果会計の対象となる税金(法定実効税率の算定に含められるもの)は、利益に関連する金額を課税標準とする税金です。法人税(含む地方法人税)、住民税(市町村民税・道府県民税)、地方法人特別税や、事業税(所得割)が対象となります。したがって、たとえば、収入金額その他利益以外のものを課税標準とする事業税(外形標準課税)等は含められません。

2. 繰延税金の計算方法と会計処理

(1) 一時差異の把握

会計上の収益及び費用と、税務上の益金及び損金の認識時点が相違することから両者の間に差が生じます。この差のうち、将来解消されるものを一時差異と呼び、税効果会計の対象となります。一時差異には、将来減算一時差異と将来加算一時差異の2種類があります。また将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金は、繰越外国税額控除も含めて、一時差異に準ずるものとして扱われます。永久差異は交際費の損金不算入額、受取配当金の益金不算入額などをいい、会計上は費用及び収益となりますが税務上は永久に損金及び益金とはなりませんから税効果会計の対象とはなりません(図表1)。

<図表1>
図表1

将来減算一時差異とは、課税所得の計算上、差異が生じたときに加算され、将来解消するときに減算されるものです。税効果会計の適用において最も取り扱う機会が多いのが将来減算一時差異です。貸倒引当金の損金算入限度超過額、賞与引当金及び退職給付引当金の額、減価償却費の損金算入限度超過額、棚卸資産等に係る評価損などが該当し、回収が見込まれる期の実効税率を乗じて繰延税金資産を計上します。

将来加算一時差異とは、課税所得の計算上、差異が生じたときに減算され、将来解消するときに加算されるものです。剰余金の処分によって積み立てられた租税特別措置法上の諸準備金等が該当し、支払いが見込まれる期の実効税率を乗じて繰延税金負債を計上します。なお、実効税率は次のように算定します。


法定
実効税率
法人税率×(1+地方法人税+住民税率)+事業税率+事業税標準税率×地方法人特別税の税率
1+事業税率+事業税標準税率×地方法人特別税の税率

なお、税務上の繰越欠損金は一時差異ではありませんが、繰越欠損金のうち、将来の課税所得と相殺可能な部分は、一時差異と同様な税効果が生じるため、一時差異と同様に取り扱います。一時差異と税務上の繰越欠損金を総称して一時差異等といいます。

(2) 繰延税金資産(負債)の算定

別表5の利益積立金額で一時差異に該当する項目が計算対象です。ただし未払事業税も一時差異に該当するため計算に含めます。一時差異の合計金額に法定実効税率を乗じたものが繰延税金資産(負債)で、期首の繰延税金資産(負債)と期末の繰延税金資産(負債)との差額が損益計算書の法人税等調整額となります。

図表2では、期首から期末までの一時差異及び繰延税金を一覧する表としたもので、一時差異に法定実効税率を乗じたものが繰延税金であり、期首の繰延税金資産(負債)と期末の繰延税金資産(負債)との差額が損益計算書の法人税等調整額となることが理解できると思われます。

<図表2>

税金税効果

一時差異 期首 増加 減少 期末残高
賞与引当金 280,000 300,000 280,000 300,000
未払事業税 210,000 ▲ 95,000 210,000 ▲ 95,000
退職引当金 595,000 20,000 15,000 600,000
減価償却資産 200,000 200,000 0 400,000
貸倒引当金 150,000 30,000 20,000 160,000
合計 1,435,000 455,000 525,000 1,365,000

繰延税金 期首 増加 減少 期末残高
賞与引当金 84,000 90,000 84,000 90,000
未払事業税 63,000 ▲ 28,500 63,000 ▲ 28,500
退職引当金 178,500 6,000 4,500 180,000
減価償却資産 6,000 6,000 0 120,000
貸倒引当金 45,000 9,000 6,000 48,000
合計 430,500 136,500 157,500 409,500

※1:実効税率を30%として計算
※2:評価性引当額はないものとして計算
※3:期首合計 430,500-期末合計 409,500=21,000 が法人税等調整額の借方に計上されます。

(3) 表示方法の検討

貸借対照表における繰延税金資産及び繰延税金負債は、流動資産と流動負債、固定資産と固定負債を相殺して表示します。流動と固定の分類は貸借対照表に計上した資産又は負債との関連に基づく分類のほかに、税効果の実現する時期が1年以内であるか否かによる分類(1年基準)があります。つまり貸借対照表の資産・負債と関連性が認められる繰延税金資産・繰延税金負債は当該資産・負債の表示区分に従い、貸借対照表の資産・負債と関連性が認められない繰延税金資産・繰延税金負債は1年基準によって流動・固定の区分を行います。

図表3では、図表2における繰延税金の期末残高につき、流動固定分類を行っています。

<図表3>

流動・固定分類

一時差異 期末残高 固定資産 流動資産
賞与引当金 300,000   300,000
未払事業税 ▲ 95,000   ▲ 95,000
退職引当金 600,000 600,000  
減価償却資産 400,000 400,000  
貸倒引当金 160,000   160,000
合計 1,365,000 1,000,000 365,000

繰延税金 期末残高 固定資産 流動資産
賞与引当金 90,000   90,000
未払事業税 ▲ 28,500   ▲ 28,500
退職引当金 180,000 180,000  
減価償却資産 120,000 120,000  
貸倒引当金 48,000   48,000
合計 409,500 300,000 109,500

※実効税率を30%として計算
※評価性引当額はないものとして計算


税効果会計(平成27年度更新)

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