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税効果会計

第5回:平成23年税制改正における税率変更等の影響

2012.04.23
新日本有限責任監査法人 公認会計士 友行貴久

1. 改正の概要

平成23年税制改正のうち、税効果会計に特に影響を与える改正として、以下のものが挙げられます。これらは、平成23年12月2日に公布され、平成24年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。また、これらの改正をうけて、「税効果会計に関するQ&A」(日本公認会計士協会 会計制度委員会)も平成24年2月14日に改正されています。

(1)法人税率の引き下げと3年間の復興特別法人税の創設

法人税率が従来の30%から25.5%へと引き下げられました。また、平成24年4月1日から平成27年3月31日内に最初に開始する事業年度開始の日から同日以後3年を経過する日までの期間内の日の属する事業年度において、法人税額(基準法人税額)の10%を税額とする復興特別法人税が新たに創設されました。

(2)欠損金の繰越控除制度の見直し

繰越期間の延長
現行の欠損金繰越期間は7年ですが、平成20年4月1日以後終了の事業年度に発生した欠損金は、繰越期間が9年になります。

欠損金の控除限度額
事業年度の所得から控除できる欠損金の限度額は、平成24年4月1日以後開始する事業年度より、繰越控除前の所得の80%となります。この改正は中小法人等には適用されませんが、大法人の100%子法人である中小法人には適用されます。

2. 税制改正による会計上の影響

(1)法定実効税率の変更

法人税率が引き下げられたこと、および3年間の復興特別法人税の創設により、各年度の法定実効税率は図表1のように算定されます(東京都、資本金1億円超、3月決算会社を前提とします)。

図表1
  平成24年3月期 平成25年3月期
~平成27年3月期
平成28年3月期
以降
法定実効税率 40.69% 38.01% 35.64%
法人税率 30% 25.5% 25.5%
復興特別法人税率 10% 
住民税率 20.7% 20.7% 20.7%
事業税率(所得割) 3.26% 3.26% 3.26%
事業税標準税率×
地方特別法人税率
2.9%×148% 2.9%×148% 2.9%×148%

法定実効税率は、復興特別法人税を含めた以下の式で算定します。

法定
実効税率
法人税率×{1× (1+復興特別法人税率)+住民税率}+事業税率+
事業税標準税率×地方法人特別税の税率
1+事業税率+事業税標準税率×地方法人特別税の税率

改正税法の公布日は平成23年12月2日です。改正税法が決算日までに交付されている場合は、改正後の税率を適用することとされています(個別税効果実務指針18項)。改正により、実効税率が年度によって異なることとなりましたので、一時差異および税務上の繰越欠損金の回収または支払のスケジューリングにもとづき、回収または支払が見込まれる事業年度の税率を用いて繰延税金資産および繰延税金負債を計算します。

監査委員会報告第66号における①分類の会社(第2回参照)においても、一時差異解消のスケジューリングを実施して、回収または支払の見込まれる年度の実効税率で繰延税金資産および繰延税金負債を計算します(「税効果会計に関するQ&A」Q14)。

スケジューリングが不能な一時差異については、復興特別法人税が課税される期間に解消するとは見込めないことから、復興特別法人税が課税されない年度の税率(図表1の平成28年3月期以降の税率)を用いて繰延税金資産および繰延税金負債を計算します。また、その他有価証券評価差額金のうちスケジューリングが不能なものについて、評価差益と評価差損の純額について繰延税金資産および繰延税金負債を計上している場合も、同様の考え方により復興特別法人税が課税されない年度の税率を用います(「税効果会計に関するQ&A」Q14)。

(2)既に計上された繰延税金資産および繰延税金負債の再計算

既に当期首までに計上されていた繰延税金資産および繰延税金負債についても同様に、回収又は支払が見込まれる年度の、改正後の税率により再計算し、繰延税金資産および繰延税金負債の金額を修正します。この修正差額は損益計算書の法人税等調整額に計上します。ただし、その他有価証券評価差額金など、直接に純資産の部に計上される項目にかかる繰延税金資産および繰延税金負債の修正差額は、評価差額に直接に加減(連結上はその他包括利益に表示)します。

(3)欠損金の繰越控除制度の見直しによる影響

欠損金の繰越期間が9年に延長されること、および所得から控除できる欠損金の限度額が繰越控除前の所得の80%となることは、図表2のように税務上の繰越欠損金の回収のスケジューリングに影響を与えます。

図表2
改正前
  X1期 X2期
欠損金控除前所得 1,000 1,000
欠損金前期繰越残高 900
当期回収可能額 900
欠損金次期繰越残高

改正後
  X1期 X2期
欠損金控除前所得 1,000 1,000
欠損金前期繰越残高 900 100
当期回収可能額 800
(=1,000×80%)
100
欠損金次期繰越残高 100

改正後の規定にもとづいて税務上の繰越欠損金の回収スケジュールを見直し、一時差異と同様に回収又は支払が見込まれる年度の改正後の税率により繰延税金資産を計算します。

3. 税制改正に伴う注記に関する留意事項

(1)税率変更の影響額の注記

税率の変更により繰延税金資産および繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨および影響額(繰延税金資産および繰延税金負債の金額の修正額)を注記する必要があります(財務諸表等規則8条の12③、連結財務諸表規則15条の5③)。この影響額は、期末における一時差異及び税務上の繰越欠損金の残高について、改正前の税率で計算した金額と、新税率で計算した金額との差額として算出します(「税効果会計に関するQ&A」Q14)。

期末時点の一時差異等について影響額を算出するため、改正税法公布日を含む四半期(3月決算会社の場合は、第3四半期末(平成23年12月31日))において算出・注記した影響額と、事業年度末において算出する影響額とは、当然には一致しないことになります。

また、会社法計算書類については、会社計算規則には税率変更に関する注記の規定はありませんが、会社の財産・損益の状況を正確に把握するために必要な事項として、追加情報としての注記を記載することが考えられます(会社計算規則98条I⑮、116条)。

(2)税率差異の注記

税率差異の注記(法定実効税率と損益計算書における法人税等の負担率との差異の内訳の注記)における法定実効税率は、当年度の税率を指します(財務諸表等規則8条の12②、連結財務諸表規則15条の5②)。すなわち、繰延税金資産および繰延税金負債の計上に用いた、将来年度の税率ではなく、当年度の法人税等の計算に適用される税率を指します。


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